学び・資格 2026-09-09

独学か、通信講座か ― 試験形式と過去問の公開状況で決める

資格の勉強を独学でやるか、通信講座や予備校を使うか。答えは資格ごとに違い、決め手は「試験形式」と「過去問が公開されているか」です。択一のみで過去問が公開されている試験は独学で完結しやすく、論述や実技がある試験は添削や指導の価値が高い。費用の相場、独学で詰まるポイント、講座を使うなら何に使うか、三つの資格を独学で取った立場で整理します。

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この記事の位置: [資格を選ぶ・勉強の形を決める] → 勉強法の土台 → 宅建士 → 行政書士 → 海事代理士

「行政書士の講座、18万円なんですが、申し込んだほうがいいですか」。宅建士に独学で受かったばかりの人からの相談でした。私は、その人の宅建士の勉強の記録を見せてもらいました。過去問を確信度で回した周回の記録が、五周分。「あなたは、択一は独学でいける。記述だけ、添削を買えばいい」。記述の添削だけの単科講座は、2万8,000円でした。この記事は、18万円と2万8,000円の差の話です。

資格の選び方の記事で四つの軸を書きました。資格を決めたあとの次の問いが、「独学でいけるか、講座を使うか」です。私は宅建士、行政書士、海事代理士を独学で取りましたが、「独学がいい」と言いたいわけではありません。独学で足りる試験と、講座の価値が高い試験があり、その線は資格ごとにかなりはっきりしています。

線を引く軸は二つです。一つ目は試験形式。択一だけの試験は、過去問を解いて解説を読めば、正解の理由まで自分で確かめられます。過去問ループの記事で書いた確信度の周回が、そのまま勉強の全体になります。記述式がある試験は、自分の答案が正しいかを自分で判定しにくく、論述や設計製図がある試験は、まず無理です。ここに添削の価値があります。二つ目は、過去問と解説が公開されているか。宅建士、行政書士、海事代理士、FP、情報処理技術者などは、過去問が公式に公開され、市販の解説書も充実しています。逆に、過去問が非公開の試験や、市販教材が乏しい試験は、講座が持っている問題と情報に価値があります。

この二軸で分けると、こうなります。択一のみで過去問が公開されている試験は、独学で完結しやすい。宅建士、海事代理士の筆記、ITパスポート、基本情報、衛生管理者、危険物。択一が中心で短い記述がある試験は、独学を基本にして、記述だけ添削や模試で補う。行政書士、応用情報。論述や製図、実技がある試験は、講座や実技の練習環境が要る。中小企業診断士の2次、建築士の製図、施工管理技士の経験記述、電気工事士の技能。この区分は、過去問ループの国家資格50種の表の「試験形式」の欄と対応しています。

費用の相場を書いておきます。独学は、テキストと過去問集で数千円から2万円程度。通信講座は、資格と講座で幅が大きく、宅建士で3〜8万円、行政書士で5〜20万円、司法書士や社労士で10〜30万円程度。通学の予備校は、その1.5〜2倍が目安です。講座の費用は「合格までの時間を買う」対価で、独学で1年かかるところを半年にできるなら、その半年の価値と比べて決めます。働きながら年に一回の試験に挑む人にとって、一年の差は大きい。

試験形式と過去問の公開状況で分ける
区分例進め方
択一のみ・過去問公開宅建士、海事代理士(筆記)、ITパスポート、基本情報、衛生管理者、危険物独学で完結しやすい。過去問を確信度で周回
択一中心+短い記述行政書士、応用情報、FP2級独学を基本に、記述の添削・模試で補う
論述・製図・経験記述中小企業診断士(2次)、建築士(製図)、施工管理技士(二次)添削・講座の価値が高い
実技電気工事士、消防設備士、美容師学科は独学、実技は練習環境が要る

独学で詰まるポイントを、自分の経験から三つ挙げます。一つ、最初の一周が終わらない。テキストを最初から読み始めて、途中で止まる。対策は、テキストを読まずに過去問から入ること。過去問の解説をテキスト代わりに読み、分からないところだけテキストに戻る。二つ、自分の理解が正しいか分からない。択一なら過去問の正誤で確かめられますが、「なぜそうなるか」の理解が浅いまま正解している場合がある。対策は、確信度を記録して、「自信なし×正解」を放置しないこと。三つ、ペースが崩れる。締切がない勉強は、仕事が忙しい月に止まる。対策は、模試を申し込んで締切を作ること。模試は独学者にとって、講座の一番安い代用品です。

費用の目安(2026年9月時点の相場感)
方法費用向く人
独学(テキスト+過去問集)数千円〜2万円択一のみの試験、自分で締切を作れる人
模試だけ数千円〜1万円/回独学者の締切と実力確認
単科講座(記述添削・直前対策)1〜5万円程度独学の弱点をピンポイントで補う
通信講座宅建士3〜8万円、行政書士5〜20万円、司法書士・社労士10〜30万円時間を買いたい人、論述のある試験
通学の予備校通信の1.5〜2倍強制力と対面の指導が要る人

講座を使うなら、何に使うかを決めてから選ぶ。「全部教えてもらう」講座は高く、時間もかかります。記述の添削だけ、模試だけ、直前の総まとめだけ、といった単科の講座は、独学の弱点をピンポイントで補えて安い。行政書士の記述対策の記事で書いた記述式は、独学で型を作ったうえで、添削を数回受けるのが、費用と効果のバランスが良い使い方です。

その人の翌年を、数字で書きます。択一は独学。過去問ループで行政法と民法を回し、四月から十月までで六周。大○の率は、一周目41%、三周目62%、六周目78%。記述は、単科の添削講座で、六月から十月まで、月に三問、合計15問を提出して添削を受けた。添削で指摘されたのは、最初の三問がすべて「相手方が抜けている」「制度の名前が条文の用語になっていない」。四問目から型が入り、十問目以降は指摘がほぼなくなった。本試験は、択一と多肢で168点、記述で32点、基礎知識36点、合計236点で合格。費用は、テキストと過去問集で約1万5,000円、添削講座2万8,000円、模試二回で1万円、合計約5万3,000円。18万円の講座との差は約12万7,000円。

逆に、講座を勧めた人もいます。同じ年に、中小企業診断士を目指す人が来ました。1次は択一七科目で過去問が公開されている。独学でいける。ただ、2次は論述四事例で、模範解答が公式には公開されず、採点基準も非公開。自分の答案が何点かを、自分では判定できない。この人には、2次の講座(約12万円)を最初から勧めました。1次は独学で通り、2次は講座の答案練習を一年続けて、二年目に合格。「論述や製図がある試験は、まず無理」と本文に書いたのは、この2次のような試験のことです。

一つ、独学で詰まった例も書いておきます。宅建士を独学で始めた人が、テキストを最初から読んで、民法の途中で止まった。三か月で一周目が終わらない。相談に来たので、テキストを閉じて、過去問の解説から入る、に変えてもらいました。分からない肢だけテキストに戻る。二か月で一周が終わり、そこからは周回に入れた。本試験は37点で合格。テキストを読むのは勉強の準備であって、勉強ではない。最初の一周が終わらない人は、テキストから入っている人です。

最後に、独学と講座は対立するものではありません。私の勉強法は、過去問を確信度で回す、という一点で、それは講座を使う人にも同じように効きます。講座は、教材と締切と添削を提供する。過去問を回すのは、どちらにしても自分です。独学か講座かより、「過去問を、正誤と確信度で、何周回したか」が合否を分ける。三つの試験を通して、それは変わりませんでした。

18万円の講座を申し込むかと聞いた人は、2万8,000円の添削と、五周分の記録で、236点を取りました。「独学か講座かより、過去問を正誤と確信度で何周回したか」と本文の最後に書きました。その人は、宅建士のときに五周回していて、それが、講座を買わなくていい理由でした。記録は、次の試験の勉強法を決める材料にもなります。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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