学び・資格 2026-10-04

教育訓練給付金で資格講座を受ける ― 申し込む前と修了した後、二つの期限

資格の通信講座や通学講座の受講料は、厚生労働大臣の指定講座なら、雇用保険の教育訓練給付金で20〜80%が戻ります。一般・特定一般・専門実践の三種類の給付率と上限、受けられる人の条件(雇用保険の加入期間)、受講前と修了後の期限、受験料が対象にならない理由を、8万8,000円の宅建講座の例で整理します。

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「宅建の通信講座を申し込もうと思うんです。8万8,000円。高いですかね」。38歳の会社員の男性から、こう聞かれました。私は値段の話の前に、二つだけ確かめました。その講座は教育訓練給付の指定講座か。今の会社で雇用保険に入って何年か。男性は、どちらも知りませんでした。調べると、講座は指定講座で、雇用保険は今の会社で2年。申し込む前の10分で、8万8,000円のうち1万7,600円が戻る見込みが立ちました。

教育訓練給付金は、雇用保険の制度です。働いている人や、離職して1年以内の人が、厚生労働大臣の指定する講座を受けて修了すると、払った受講費用の一部がハローワークから支給されます。資格の勉強に使えるお金なのに知られておらず、しかも受講前と修了後の二つの場面に期限があり、どちらかを逃すと受け取れません。この記事では、種類と金額、受けられる人の条件、期限の順に整理します。数字は2026年10月時点のハローワークの案内によります。

給付には三つの種類があり、講座ごとにどれに指定されているかが決まっています。一つ目は一般教育訓練で、受講費用の20%、上限10万円が修了後に支給されます。二つ目は特定一般教育訓練で、40%、上限20万円。さらに講座が目標とする資格を取り、修了の翌日から1年以内に雇用保険の被保険者として雇われた場合(働きながら受講して資格を取った場合を含みます)は、50%、上限25万円まで上乗せされます。三つ目は専門実践教育訓練で、受講中から6か月ごとに50%(年間上限40万円)、資格を取って就職すれば70%(年間上限56万円)、さらに修了後の賃金が受講前より5%以上上がれば80%(年間上限64万円)です。専門実践は最大3年、上限192万円まで受けられます。

受けられる人の条件は、雇用保険に入っていた期間です。受講を始める日に、雇用保険に入っていた期間が3年以上あること。離職している人は、離職の翌日から受講開始日まで1年以内であることも要ります。ただし、これまで一度も教育訓練給付を受けたことのない人は、一般と特定一般なら1年以上、専門実践なら2年以上で足ります。反対に、受講開始日の前日から3年以内に給付を受けたことがある人は受けられません。一つ目の資格の講座に続けて二つ目の講座を、という使い方には、間を空ける必要があります。

講座が指定されているかは、厚生労働省の教育訓練給付制度の検索システムで、講座名や資格名から調べられます。同じ宅建士の講座でも、指定がある講座とない講座があり、指定の種類も講座ごとに違います。自分が条件を満たすか分からないときは、受講を始める前に、住所地のハローワークに「教育訓練給付金支給要件照会票」を出すと、受講開始日時点での受給資格の有無を確かめてもらえます。窓口に行くほか、郵送や電子申請でも出せます。

もう一つ、講座の側の確認です。講座の指定は、毎年4月1日からの分と10月1日からの分があり、指定には期間があります。以前の案内で「給付対象」と書かれていた講座が、今も同じ種類の指定を受けているとは限りません。申込みの画面に給付対象と書いてあっても、受講を始める日にその講座が指定を受けているかを、検索システムの指定番号と期間で確かめてください。同じ学校の同じ資格の講座でも、通学とオンライン、コースの長さによって、指定が別々になっていることがあります。

期限は二つあります。一つ目は、特定一般と専門実践だけにある、受講前の期限です。この二つは、訓練対応のキャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードを交付してもらい、受講開始日の2週間前までにハローワークで受給資格確認の手続きをする必要があります。講座に申し込んでから気づくと、開講日に間に合わないことがあります。一般教育訓練には、この事前の手続きはありません。

二つ目は、修了した後の期限です。一般と特定一般は、修了日の翌日から1か月以内にハローワークへ支給申請をします。過ぎると受け取れません。資格試験の講座は、修了日と試験日が離れていることが多く、「試験が終わってから申請しよう」と考えると期限を過ぎます。給付に資格の合格は要りません(特定一般の上乗せ分を除きます)。要るのは講座の修了で、修了の条件は講座ごとに決まっています。添削課題の提出回数などがそれに当たります。

期限は二つ ― 受講の2週間前(特定一般・専門実践)と、修了の翌日から1か月
期限は二つ ― 受講の2週間前(特定一般・専門実践)と、修了の翌日から1か月左から、申込み前に指定講座か確かめる、受講開始(特定一般と専門実践は2週間前までにキャリアコンサルティングと受給資格確認)、講座の修了日、修了の翌日から1か月以内にハローワークへ申請、の順。試験が終わってから申請しようとすると、修了から1か月を過ぎて受け取れない。① 申込み前① 申込み前 指定講座か・種類は指定講座か・種類は 検索システムで確認検索システムで確認 ② 受講開始② 受講開始 特定一般・専門実践は特定一般・専門実践は 2週間前までに手続き2週間前までに手続き ③ 修了日③ 修了日 合格ではなく合格ではなく 講座の修了が条件講座の修了が条件 ④ 1か月以内④ 1か月以内 ハローワークへハローワークへ 支給申請支給申請 一般教育訓練(20%)は②の事前手続きなし一般教育訓練(20%)は②の事前手続きなし 試験の前に申請 1万7,600円が振り込まれた ¥ 20% 試験の後に申請 修了から1か月を過ぎると受け取れない

左から、申込み前に指定講座か確かめる、受講開始(特定一般と専門実践は2週間前までにキャリアコンサルティングと受給資格確認)、講座の修了日、修了の翌日から1か月以内にハローワークへ申請、の順。試験が終わってから申請しようとすると、修了から1か月を過ぎて受け取れない。

数字は2026年10月時点のハローワークの案内によります。専門実践は受講中から6か月ごとに申請します。

お金の数え方も一つ。給付の元になるのは、受講者が教育訓練施設に払った教育訓練経費です。資格試験の受験料は、試験の実施団体に払うお金なので、講座の費用には入りません。計算した給付額が4,000円以下なら支給されない、という下限もあります。安い講座や、割引で費用が下がった講座では、この下限に注意が要ります。

この男性の場合です。講座は一般教育訓練の指定講座で、受講料は税込8万8,000円。雇用保険は今の会社で2年で、これまで給付を受けたことがないので、「1年以上」の条件を満たします。給付は20%で1万7,600円、実際の負担は7万400円です。宅建士試験の受験料8,200円は講座の外なので、給付の対象外です。仮に同じ値段で特定一般の指定講座だった場合は、40%で3万5,200円、資格を取ってそのまま働き続けていれば50%で4万4,000円になります。ただし、特定一般を選ぶなら受講開始の2週間前までの手続きが要り、申込みの時期が変わります。

8万8,000円(税込)の講座で、戻る額と自分の負担(この記事の例)
一般教育訓練(20%)給付 / 自分の負担
特定一般(40%)給付 / 自分の負担
特定一般・資格取得(50%)給付 / 自分の負担

宅建士試験の受験料8,200円は講座の費用ではないので、どの場合も給付の対象外です。この男性の講座は一般教育訓練の指定でした。

男性は4月に受講を始め、9月半ばに最後の添削課題を出して修了しました。私は修了日から1か月の申請期限を、試験日(10月の第3日曜日)より前の日付で手帳に書いてもらいました。申請は、支給申請書に講座の修了証明書や領収書などを付けてハローワークに出します(必要な書類は申請先の案内で確かめてください)。男性は試験の2週間前に申請を済ませ、1万7,600円は11月に振り込まれました。試験は、その年は2点足りませんでした。給付は合格を条件にしていないので、戻ってきたお金は変わりません。

資格の勉強は、時間もお金もかかります。教育訓練給付は、そのお金の一部を雇用保険が持つ仕組みで、使える人の多くは、使えることを知らないだけです。講座を選ぶときは、内容と値段に加えて「指定講座か、どの種類か」を見て、申し込む前に自分の条件を確かめ、修了したら試験より先に申請する。資格の選び方の記事で書いた四つの軸に、この一つを足してください。独学か講座かの判断は、独学と通信講座の比べ方の記事にまとめています。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-04

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-04 確認)。

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