土地・不動産 2026-09-09

不動産の名義と住宅ローン控除 ― 夫婦で買う家の持分、ペアローン、贈与税の落とし穴

家を買うとき、名義を誰にするかで、住宅ローン控除と贈与税が変わります。持分は「出したお金の割合」に合わせるのが原則で、ずれると贈与税の対象になります。控除は年末ローン残高の0.7%を最長13年、持分と借入に応じて夫婦それぞれが受けられ、ペアローン・連帯債務・連帯保証で受け方が違います。相続した家には控除がないこと、離婚時の名義の問題、親の資金援助の非課税枠を整理します。

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この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → [買う前に確認すること] → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利

引き渡しの一か月後に、妻の母から電話が来ました。「娘に出した1,000万円、贈与税がかかるって聞いたんだけど」。夫婦で買った4,000万円の家。夫が自己資金500万円とローン2,500万円、妻が自己資金1,000万円で、その1,000万円は妻の母が出したもの。名義は、不動産会社に勧められるまま「夫の単独名義」。妻の1,000万円は夫への贈与、母の1,000万円は娘への贈与。二段階で、贈与税の対象になっていました。この記事は、その電話から、名義を直すまでの話です。

家を買うとき、多くの人は価格と金利を見て、名義は「なんとなく夫」にします。しかし名義(持分)は、住宅ローン控除の額と、贈与税がかかるかどうかを決めます。相続の相談で「夫名義の家だが、頭金は妻の親が出した」という話が出て、そこで初めて問題に気づく家もあります。買うときに決めておくべきことを書きます。

原則は、「持分は出したお金の割合に合わせる」です。4,000万円の家を、夫が自己資金500万円とローン2,500万円、妻が自己資金1,000万円で買ったなら、夫3,000万円、妻1,000万円で、持分は夫4分の3、妻4分の1。これを「夫の単独名義」にすると、妻が出した1,000万円分は妻から夫への贈与と扱われ、贈与の記事で書いた贈与税(基礎控除110万円を引いた890万円に課税)の対象になります。逆に、夫が全額出して夫婦2分の1ずつの名義にしても、同じことが起きます。名義は気持ちではなく、お金の出所で決めます。

4,000万円の家の持分の例(夫:自己資金500+ローン2,500、妻:自己資金1,000)
資金夫 自己資金 500万円 / 夫 ローン 2,500万円 / 妻 自己資金 1,000万円

持分は夫3/4・妻1/4。夫の単独名義にすると妻の1,000万円は贈与扱いになる。

住宅ローン控除は、自分が住む家をローンで取得した人が、年末のローン残高の0.7%を、所得税(引ききれなければ住民税の一部)から差し引ける制度です。期間は新築で13年(中古は10年)、対象になる残高の上限は、住宅の性能で決まり、2024年以降は省エネ基準を満たさない新築住宅は原則として対象外になりました。長期優良住宅の記事で書いた認定住宅は上限が高く設定されています。2026年9月時点で、この制度は2025年末までの入居を対象に組まれていて、延長や見直しは税制改正で決まるので、購入時点の要件を確認してください。

夫婦で借りる形には三つあり、控除の受け方が違います。ペアローンは、夫と妻がそれぞれ別のローンを組み、互いに連帯保証人になる形。それぞれが自分のローン残高について控除を受けられます。連帯債務は、一本のローンを二人が共同で借りる形で、それぞれの負担割合に応じて控除を受けられます(フラット35の夫婦連帯債務など)。連帯保証は、一人が借りて、もう一人が保証人になるだけの形で、控除を受けられるのは借りた本人だけです。「妻の収入も合算して借りたが、名義も控除も夫だけ」という連帯保証の形は、妻が返済に協力しても控除の恩恵がなく、妻が実際に返済すれば贈与の問題にもなり得ます。二人で返すなら、ペアローンか連帯債務で、持分も分ける。これが原則です。

夫婦で借りる三つの形と住宅ローン控除
形借り方控除を受けられる人持分
ペアローンそれぞれが別のローンを組み、互いに連帯保証夫と妻それぞれ(自分の残高分)それぞれの負担額で分ける
連帯債務一本のローンを二人で借りる夫と妻それぞれ(負担割合分)負担割合で分ける
連帯保証一人が借り、もう一人は保証人借りた本人だけ借りた本人(保証人が返済すると贈与の問題)

親の資金援助についても書いておきます。父母や祖父母から住宅取得の資金をもらう場合、「住宅取得等資金の贈与の非課税」があり、省エネ等の住宅なら1,000万円、それ以外は500万円まで贈与税がかかりません(2026年12月までの贈与が対象とされていて、期限は延長を繰り返しています)。この非課税を使うには、贈与税の申告が必要で、もらったお金は家の取得に使い、その分の持分は子(もらった本人)の名義にします。親が出したお金で親の名義にするなら、それは親の持分で、贈与ではありませんが、その持分は将来、親の相続財産になります。

相続した家には、住宅ローン控除はありません。控除は「ローンで取得した」ことが要件で、相続はローンを組んで取得したものではないからです。相続した家をリフォームするためにローンを組んだ場合は、一定の要件で「増改築等」として控除の対象になることがあります。空き家の記事で書いた相続した実家に住む場合の話は、この点で新築や購入と違います。

離婚のときの名義の問題も一つ。夫名義でローンが残っている家に、離婚後に妻が住み続ける、というのはよくある形ですが、ローンの名義は金融機関の同意なしに変えられず、夫が返済を止めれば家は競売になります。財産分与で家の名義を妻に移しても、ローンは夫のまま。この不安定さを避けるには、妻が自分の名義でローンを借り換えるか、売却して精算するかです。買うときに「ペアローンにしておけばよかった」と離婚時に言う人は多いですが、ペアローンは離婚時に二本のローンの整理が要り、それはそれで大変です。名義は、買うときにも、別れるときにも、問題になります。

現場の整理です。まず、母から娘への1,000万円。これは「住宅取得等資金の贈与の非課税」の対象で、この家は省エネ基準を満たす新築なので1,000万円まで非課税。ただし、贈与税の申告が要り、翌年の3月15日まで。まだ間に合う。次に、娘から夫への1,000万円。これは非課税の対象外で、基礎控除110万円を引いた890万円に贈与税がかかり、税額は約207万円。ここが問題でした。

直し方は、名義を出したお金の割合に合わせることです。夫3,000万円、妻1,000万円で、持分は夫4分の3、妻4分の1。ただし、すでに夫の単独名義で登記が終わっているので、「錯誤」を原因とする所有権更正登記で、持分を直します。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、土地と建物で2,000円。司法書士の報酬が約4万円。金融機関の抵当権が付いているので、更正登記には銀行の承諾書が要り、これに三週間。更正登記が終わったのは、引き渡しから三か月後でした。贈与税の申告期限の前に名義が直ったので、娘から夫への贈与はなかったことになり、207万円は発生しませんでした。

住宅ローン控除も、この形で整理しました。ローンは夫の単独で2,500万円、妻は借りていない。控除は夫だけで、年末残高の0.7%、初年度で約17万円。妻の持分4分の1は自己資金で買った部分なので、控除の対象にはなりません。もし妻も働いていて、ペアローンで妻が500万円借りる形にしていれば、妻にも控除が付いた計算ですが、この夫婦は、妻が育児休業中で収入がなく、控除を使えないので、この形で正解でした。名義とローンの形は、贈与税と控除の両方を見て決める、と本文に書いた四つの手順は、この家では、買ったあとに、逆順でたどることになりました。

名義を決める手順をまとめます。一、自己資金とローンを、誰がいくら出すかの表を作る。二、その割合で持分を決める。三、ローンの形(単独、ペア、連帯債務、連帯保証)と持分が整合しているかを確かめる。四、親の資金があれば、非課税の申告と持分への反映をする。この四つを、売買契約の前に済ませておけば、贈与税の問題も、控除の取りこぼしも起きません。登記事項証明書の記事で書いた甲区の持分は、この表の結果です。

妻の母の電話は、207万円の贈与税が発生する三か月前に来ました。更正登記の2,000円と司法書士の4万円で、名義は出したお金の割合に直りました。「名義は気持ちではなく、お金の出所で決める」と本文に書きました。この家の不動産会社は「ご主人の名義で」と勧め、夫婦はそれに従った。お金の出所を表にしていれば、売買契約の前に、4分の1という数字が出ていたはずです。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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