学び・資格 2026-10-01
期間の数え方 ― 「3か月以内」は何月何日までか。初日を数えない原則、月末の扱い、「起算して」の読み方
相続放棄の3か月、準確定申告の4か月、クーリング・オフの8日。法律の期間は、初日を数えない、暦の月で数える、応当日の前日で終わる、という民法の決まりで計算します。ただし「起算して」と書かれていれば初日から数える。資格試験でも実際の相続でも同じところで間違えるので、日付の表で練習します。
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「8月20日に父が亡くなったと知りました。相続放棄は3か月以内なので、11月19日までですよね」。行政書士試験の勉強をしている会社員の方が、自分の家の相続の相談に来て、そう言いました。民法の期間の計算は、試験で何度も解いたはずの範囲です。答えは11月20日。一日違いですが、期限の話では、その一日が全部を分けます。
期間の数え方の基本は、民法140条から143条の四つの条文に書いてあります。条文の読み方の記事で書いた「要件と効果」に分けると、覚えることは四つだけです。一つ目、日・週・月・年で期間を決めたときは、初日を数えない(140条)。8月20日に知ったなら、数え始めは翌日の8月21日です。ただし、期間が午前0時から始まるときは初日も数えます。「10月1日から1か月」と日付の始まりから決めた契約がその例です。
二つ目、期間は末日が終わったときに満了します(141条)。三つ目、週・月・年で決めた期間は、暦に従って数えます(143条1項)。1か月を30日と数えるのではなく、カレンダーの月で数えます。四つ目、月の途中から数え始めたときは、最後の月の「応当日」、つまり数え始めの日と同じ日付の前日に満了します(143条2項)。8月21日から数える3か月なら、11月21日の前日、11月20日です。最後の月に同じ日付がないとき、たとえば31日から数え始めて2月に行き着いたときは、その月の末日に満了します。暦の月で数えるので、同じ「3か月」でも日数は変わります。12月1日から数える3か月は2月末日までで、平年なら90日。6月1日から数える3か月は8月31日までで92日です。「3か月は90日」と置き換えて数えると、季節によって一日、二日ずれます。
これで冒頭の答えが出ます。8月20日に知った→初日を数えず8月21日から→3か月→11月21日の前日→11月20日。会社員の方は、初日を数えないことは覚えていたのに、応当日の「前日」をもう一度引いてしまい、19日にしていました。初日不算入と応当日の前日は、二重に引くものではなく、同じ一日を別の言い方で数えているだけです。
左から、8月20日(知った日・数えない)、8月21日(数え始め)、11月20日(満了の日・期限)、11月21日(応当日)の四つの日付が並ぶ。8月21日から11月20日までの線に「3か月」と書かれている。別の段に、クーリング・オフは「起算して8日」なので10月1日を1日目として10月8日まで、と書いてある。
期間が午前0時から始まるとき(日付の始まりから決めた期間)も、初日を数えます。
相続放棄の3か月で、もう一つ間違えやすいのは起点です。民法915条は「自己のために相続の開始があったことを知った時から」と書いていて、亡くなった日からではありません。疎遠だった親族が亡くなったことを、二か月後に手紙で知ったなら、数え始めはその翌日です。財産の調べがつかず3か月では決められないときは、期限の前に家庭裁判所へ申し立てて、期間を延ばしてもらう道もあります。
末日が日曜日や祝日のときはどうなるか。民法142条は、その日に取引をしない慣習がある場合に限って、翌日に満了するとしています。税金の期限はもっとはっきりしていて、国税通則法10条で、期限が日曜・祝日などに当たれば翌日に延びます。準確定申告の記事で書いた4か月の期限も、この決まりで延びることがあります。家庭裁判所に出す書類の期限は、手続きの種類によって扱いが違うので、末日が休みの日に当たるときは、ぎりぎりを狙わず、前の平日に出す計画にしてください。
例外として大切なのが、「起算して」という言い方です。宅地建物取引業法のクーリング・オフは、書面で告げられた日から「起算して8日」を経過するまでできます。起算するとは、その日を1日目として数えるという意味なので、初日を数えます。10月1日に告げられたら、10月1日が1日目で、10月8日までです。宅建士試験では、「告げられた日の翌日から8日」と書き換えた肢が誤りとして出ます。条文の「から」と「から起算して」は、一日ずれると覚えてください。
時間で決めた期間は、また別です。「24時間以内」のように時間で決めたときは、その時から数え始めます(民法139条)。午後3時から24時間なら、翌日の午後3時までです。日で決めた期間のように、初日を数えるかどうかを考える必要はありません。
行政書士試験では、行政法の期間で同じ計算が出ます。行政不服審査法の審査請求は、処分があったことを知った日の「翌日から起算して」3か月以内。翌日から起算するので、結果は初日を数えない民法の数え方と同じ日になります。行政事件訴訟法の取消訴訟は、処分があったことを知った日から6か月で、こちらは民法の原則どおり初日を数えません。書き方は違っても満了日が同じになる、という点まで確かめておくと、肢の書き換えに引っかかりにくくなります。
年齢の数え方も、同じ考え方の応用です。年齢は生まれた日から数えるという法律があり、ここでは初日を数えます。そのため、誕生日の前日が終わった時点で一つ年をとります。4月1日生まれの子が早生まれの学年に入るのは、3月31日が終わった時点で6歳になるからです。試験では、「満20歳に達する日」がいつかを問う形で出ることがあります。
条文の言い回しも、日付に直して覚えます。「8日以内」は8日目の終わりまで。「8日を経過したとき」は、8日目が終わった次の瞬間、つまり9日目に入ったとき。「満了する」は期間の最後の日が終わること。クーリング・オフの条文は「8日を経過したとき」は撤回できない、という書き方なので、10月1日に告げられたなら、10月9日に入った時点で撤回できなくなります。表に書いた「10月8日まで」と同じことを、裏から言っているだけです。
勉強の方法としては、日付を自分で数える練習が一番効きます。問題文の「から」「起算して」「経過したとき」「以内」に丸を付け、カレンダーに数え始めの日と満了の日を書き込む。「経過したとき」は、満了した日の翌日以降という意味です。下の表の五つの例を、答えを隠して自分で数えてみてください。過去問を一肢ずつ○×にする勉強法の記事に書いたやり方で、期間の問題だけを一束にしておくと、直前の見直しが速くなります。
| 場面 | 起点の日 | 数え始め | 満了日(期限) |
|---|---|---|---|
| 相続放棄(3か月) | 2026年8月20日に知った | 8月21日 | 11月20日(金) |
| 準確定申告(4か月) | 2026年4月10日に知った | 4月11日 | 8月10日(月) |
| 準確定申告(4か月)・応当日なし | 2026年10月30日に知った | 10月31日 | 2027年2月28日(日)→休日なので3月1日(月) |
| 月の初日から数える(3か月) | 2026年1月31日に知った | 2月1日 | 4月30日(木) |
| クーリング・オフ(起算して8日) | 2026年10月1日に告げられた | 10月1日(初日を数える) | 10月8日(木) |
会社員の方の相続は、11月20日を期限として手帳に書き、余裕を見て11月の初めに家庭裁判所へ申述書を出す計画にしました。相続放棄の書類の作成は司法書士か弁護士の業務なので、必要な戸籍をそろえたうえで司法書士に頼むことにしています。期限の計算を一日間違えるのは、勉強では1点ですが、実際の相続では取り返しがつかないことがあります。日付は、条文どおりに、紙の上で数えてください。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-01
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-01 確認)。
- e-Gov 法令検索「民法」 ― 139条(時間の期間)、140条(初日不算入)、141条(末日の終了で満了)、142条(末日が休日のとき)、143条(暦による計算・応当日の前日・月末)、915条(相続放棄の3か月)
- e-Gov 法令検索「国税通則法」 ― 10条: 国税の期間の計算と、期限が日曜・祝日などに当たるときは翌日
- e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法」 ― 37条の2: クーリング・オフは告げられた日から起算して8日