土地・不動産 2026-10-26
マンションの修繕積立金が上がるという知らせが来たら ― 均等積立と段階増額、国交省の目安で自分の部屋の額を確かめる、総会で決まるまでの順番
築12年のマンションで、修繕積立金を月9,800円から18,200円に上げる案と、14,000円から段階的に上げる案の二つが総会にかけられることになった。国交省のガイドラインの目安(専有面積あたりの月額)で自分の部屋の額を計算する方法、段階増額の「初期0.6倍以上・最終1.1倍以内」の確かめ方、30年で払う額がどちらも655万2,000円になる理由、総会までに見る書類を書きます。
この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → [持っている間:税金と登記] → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利
「管理組合から、修繕積立金を上げる案が二つ届きました。今の月9,800円が、来年の4月から1万8,200円になる案と、1万4,000円から5年ごとに上げていく案です。どちらがいいのか、そもそも上げる必要があるのかも分からなくて」。相談に来たのは、築12年のマンションに住む60代の男性でした。10階建て、60戸、延べ床面積は約6,000㎡。部屋の専有面積は70㎡で、駐車場は平置きです。机の上には、理事会からのお知らせと、見直した長期修繕計画の写しがありました。
修繕積立金は、外壁の塗り直しや屋上の防水、給水管の取り替えなど、何年かに一度の大きな工事に備えて、毎月積み立てるお金です。どの工事をいつ、いくらでするかは、管理組合の「長期修繕計画」に書いてあります。工事の費用は物価や人件費で変わるので、国交省のガイドラインは、計画を5年程度ごとに見直し、それに合わせて積立金を決め直すよう求めています。この家のマンションも、1回目の大規模修繕を前に計画を見直したところ、今の積立金では足りないと分かった、というのが理事会の説明でした。
積立の仕方には、大きく二つあります。一つは「均等積立方式」で、計画の期間に必要な総額を、最初から同じ額で積み立てます。もう一つは「段階増額積立方式」で、最初は安くして、何年かごとに値上げしていきます。段階増額では、計画どおりに値上げしようとしたときに区分所有者の話し合いがまとまらず、積立金が足りなくなる例があると、ガイドラインも注意しています。ガイドラインは、将来にわたって安定させるには均等積立方式が望ましい、としています。
では、自分の部屋の額は高いのか、安いのか。ガイドラインには、全国の長期修繕計画の事例から出した目安が、専有面積1㎡あたりの月額で載っています。地上20階未満で延べ床面積5,000㎡以上1万㎡未満のマンションなら、平均は252円、事例の3分の2が収まる幅は170円から320円です(機械式駐車場があれば、その分を足します)。これに自分の部屋の専有面積を掛けると、目安の月額になります。
この家の部屋は70㎡なので、平均は252円×70㎡で1万7,640円、幅は170円×70㎡の1万1,900円から、320円×70㎡の2万2,400円までです。今の9,800円は、幅の下の端よりも2,100円低い額でした。値上げ後の1万8,200円(1㎡あたり260円)は、平均とほぼ同じ水準です。目安はあくまで多くの事例の分布で、建物の形や設備で必要な額は変わりますが、「今が安すぎた」ことは、この計算で見えてきます。
次に、段階増額の案を確かめます。2024年6月に最終改訂されたガイドラインは、段階増額にするなら、均等積立にした場合の月額を基準にして、最初の額は基準の0.6倍以上、最後の額は1.1倍以内にする、という考え方を示しました。最初を安くしすぎると、あとの値上げ幅が大きくなり、話し合いがまとまらなくなるからです。この家の基準額は1万8,200円なので、最初は1万920円以上、最後は2万20円以内が目安です。案2は、最初の5年が1万4,000円、次の5年が1万7,000円、11年目からは1万9,550円で、どちらの条件にも収まっていました。
二つの案を30年で比べると、払う総額は同じです。案1は1万8,200円×360か月で655万2,000円。案2は、1万4,000円×60か月の84万円、1万7,000円×60か月の102万円、1万9,550円×240か月の469万2,000円を足して、655万2,000円。違うのは、いつ払うかだけです。最初の10年は、案1が218万4,000円、案2が186万円で、案2のほうが32万4,000円少ない。そのかわり11年目からの20年は、案2のほうが32万4,000円多くなります。
案1 均等 18,200円:1〜5年 18,200円/月、6〜10年 18,200円/月、11〜15年 18,200円/月、16〜20年 18,200円/月、21〜25年 18,200円/月、26〜30年 18,200円/月/案2 段階 14,000→19,550円:1〜5年 14,000円/月、6〜10年 17,000円/月、11〜15年 19,550円/月、16〜20年 19,550円/月、21〜25年 19,550円/月、26〜30年 19,550円/月/目安の上限 22,400円:1〜5年 22,400円/月、6〜10年 22,400円/月、11〜15年 22,400円/月、16〜20年 22,400円/月、21〜25年 22,400円/月、26〜30年 22,400円/月/目安の下限 11,900円:1〜5年 11,900円/月、6〜10年 11,900円/月、11〜15年 11,900円/月、16〜20年 11,900円/月、21〜25年 11,900円/月、26〜30年 11,900円/月
目安は国交省ガイドラインの地上20階未満・延床5,000㎡以上1万㎡未満の幅(170〜320円/㎡・月)に70㎡を掛けた額。今の月額は9,800円で、下限より2,100円低い。
相談の方は、60代の終わりと70代の初めに値上げが来る案2より、今のうちに上げて額が変わらない案1のほうが、年金暮らしになってからの家計の見通しが立てやすい、と考えました。逆に、子育て中で今の出費が重い家なら、案2を選ぶ理由もあります。どちらを選んでも、5年ごとの見直しで、また額が変わる可能性はあります。
| 期間 | 案1 均等積立 | 案2 段階増額 |
|---|---|---|
| 1〜5年目(60か月) | 18,200円×60=109万2,000円 | 14,000円×60=84万円 |
| 6〜10年目(60か月) | 18,200円×60=109万2,000円 | 17,000円×60=102万円 |
| 最初の10年の小計 | 218万4,000円 | 186万円 |
| 11〜30年目(240か月) | 18,200円×240=436万8,000円 | 19,550円×240=469万2,000円 |
| 30年の合計 | 655万2,000円 | 655万2,000円 |
値上げのほかに、工事のときに一時金を集める方法や、管理組合が融資を借りる方法もあります(住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」など)。ただ、一時金は一度に数十万円を払えない家が出やすく、借りれば利息がかかり、返すのは結局、毎月の積立金からです。どの方法でも、工事に必要なお金を区分所有者が負担することは変わりません。案を比べるときは、月々の額だけでなく、30年で誰がいくら払うのかを並べてみます。
管理費と修繕積立金は、名前が似ていても別のお金です。管理費は、清掃や管理会社への委託費、共用部分の電気代など、毎月の暮らしに使うお金。修繕積立金は、計画した大きな修繕のためのお金で、標準管理規約でも、管理費とは分けて経理することになっています。値上げの知らせでは、どちらが上がるのかを最初に確かめます。
値上げは、管理組合の総会で決まります。国交省の標準管理規約(多くのマンションが規約のひな形にしているもの)では、管理費や修繕積立金の額は総会で決めることになっていて、普通決議で決まります。自分のマンションの規約で、決め方を確かめておきます。総会に出られないときは、委任状か議決権行使書を出します。決まれば、反対した人も新しい額を払うことになります。
総会の前に見ておきたい書類は四つです。一つ目は長期修繕計画で、計画の期間が30年以上あるか、工事の単価がいつの見積か。二つ目は管理組合の決算書で、修繕積立金の今の残高と、滞納の額。三つ目は、大規模修繕の工事費の見積の根拠。四つ目は、借入や一時金の案が検討されたかどうかです。分からないところは、説明会で理事会か管理会社に聞きます。管理組合のお金の扱いについては、管理組合のお金の横領を防ぐ記事にも書きました。
売るときにも、この話は関わります。中古マンションを買う人は、重要事項調査報告書で修繕積立金の額と、値上げの予定、積立金の残高を見ます。中古マンションは管理を見て買う記事に書いたとおり、積立金が安すぎる物件は、買ったあとの値上げを心配されます。目安の幅に収まった積立金と、見直された長期修繕計画は、売るときの説明の材料にもなります。
この家の数字をまとめます。目安の幅は月1万1,900円から2万2,400円。今の9,800円は幅より下で、案1の1万8,200円は平均並み、案2は最初1万4,000円から最後1万9,550円で、ガイドラインの0.6倍・1.1倍の範囲内。30年の総額はどちらも655万2,000円。値上げの知らせが来たら、まず専有面積に目安の単価を掛けて、自分の部屋の位置を確かめてください。そこから先は、いつ払うのが自分の家計に合うか、の選択になります。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-26
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-26 確認)。
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(最終改訂 2024年6月7日) ― 専有面積あたり月額の目安:地上20階未満・延床5,000㎡以上10,000㎡未満は平均252円/㎡・月(事例の3分の2が収まる幅170〜320円)。段階増額積立方式は、均等積立方式の月額を基準額として初期額0.6倍以上・最終額1.1倍以内。5年程度ごとの長期修繕計画の見直し
- 国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン・修繕積立金ガイドライン ― ガイドラインの掲載ページ
- 国土交通省 マンション標準管理規約 ― 管理組合の規約のひな形。管理費等の額は総会で決める