離婚・家族 2026-10-04

離婚後、子どもの扶養控除はどちらが取るか ― 養育費を払う側も取れる場合と、ひとり親控除が一緒に外れる理由

離婚して子と別に暮らしていても、養育費を払っている親は子を扶養控除の対象にできる場合があります。ただし同じ子の控除はどちらか一方だけで、別居親が取ると、同居親は扶養控除に加えてひとり親控除も外れます。国税庁の質疑応答事例の考え方、控除額と所得の上限(2026年分の変更を含む)、17歳の長男の家で比べた税額を整理します。

目次を見る →

この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → 離婚が成立したら → [離婚後の生活] → 状況別(当てはまる方だけ)

「元夫から『養育費を払っているから、長男は俺の扶養に入れる』と言われました。そうしたら、私は何か損をしますか」。離婚して2年の40代の女性からの相談です。長男は17歳の高校2年生で、女性と暮らしています。元夫は会社員で、毎月5万円の養育費を払っている。答えは「損をします。しかも、扶養控除の分だけではありません」でした。ひとり親控除も一緒に外れるからです。

まず、扶養控除の仕組みです。所得税の扶養控除は、生計を一にする16歳以上の親族がいる人の所得から、一定額を差し引く制度です。2026年10月時点の国税庁の案内では、16歳から18歳と23歳から69歳は38万円、19歳から22歳の特定扶養親族は63万円です(年齢はその年の12月31日で判定)。16歳未満の子には、所得税の扶養控除はありません。子の側の所得にも上限があり、2025年分は合計所得金額58万円以下(給与だけなら年収123万円以下)、2026年分からは62万円以下に変わります。高校生や大学生のアルバイト収入がこの上限を超えると、親はどちらも扶養控除を受けられません。

離婚して別々に暮らしていても、養育費を払っている親が、子を扶養控除の対象にできる場合があります。国税庁の質疑応答事例では、離婚に伴う養育費の支払いが、扶養義務の履行として、成人に達するまでなど一定の年齢に限って行われている場合は、払っている期間について、原則として子と「生計を一にしている」ものとして扱ってよい、とされています。「生計を一にする」は同じ家に住むことに限らず、常に生活費が送られている関係も含む、という考え方です。反対に、慰謝料や財産分与の総額に養育費が混ざっていて、養育費の額を区分できない場合は、この扱いは難しいとされています。養育費の支払いが途切れている年も、「常に生活費が送られている」という前提が崩れるので、同じように考えることはできません。

ただし、同じ子を、元夫と元妻の両方が扶養控除の対象にすることはできません。同じ質疑応答事例は、子が両方の控除対象扶養親族に当たる場合でも、控除はどちらか一方にだけ認められる、としています。会社員なら、年末調整のときに勤務先に出す「扶養控除等申告書」に子を書いた側が対象になるのが通常で、二人とも書くと、あとでどちらかが修正して差額の税金を納めることになります。誰が取るかは、法律が一方に決めているのではなく、要件を満たす二人のうち、どちらが申告するかの問題です。

ここで、同居している親にとって大きいのがひとり親控除です。婚姻していない人で、生計を一にする子がいて、合計所得金額が500万円以下なら、所得から35万円が差し引かれます。この「子」には条件があり、その子が他の人の扶養親族になっていないことが要ります。つまり、元夫が長男を扶養控除の対象にすると、女性は長男の扶養控除(38万円)を受けられないだけでなく、長男を理由にしたひとり親控除(35万円)も受けられなくなります。子が一人の家庭では、二つの控除が一緒に外れます。

同じ子の扶養控除は、どちらか一方だけ ― 元夫が取ると、元妻はひとり親控除も外れる
同じ子の扶養控除は、どちらか一方だけ ― 元夫が取ると、元妻はひとり親控除も外れる元夫は長男に養育費を月5万円払い、長男は元妻と暮らしている。元夫が長男を扶養にすると、元夫の所得から38万円が引かれ、元妻は扶養控除38万円もひとり親控除35万円も受けられない。元妻が扶養にすると、元妻の所得から73万円が引かれる。 元夫 養育費 月5万円 長男(17歳) 元妻 長男と同居 養育費養育費 同居同居 元夫が扶養にすると元夫が扶養にすると 元夫:所得から38万円を引く元夫:所得から38万円を引く 元妻:扶養控除もひとり親控除も外れる元妻:扶養控除もひとり親控除も外れる 元妻が扶養にすると元妻が扶養にすると 元妻:38万円+35万円=73万円を引く元妻:38万円+35万円=73万円を引く 元夫:控除なし元夫:控除なし 二人とも申告すると、あとでどちらかが修正して差額を納める二人とも申告すると、あとでどちらかが修正して差額を納める

元夫は長男に養育費を月5万円払い、長男は元妻と暮らしている。元夫が長男を扶養にすると、元夫の所得から38万円が引かれ、元妻は扶養控除38万円もひとり親控除35万円も受けられない。元妻が扶養にすると、元妻の所得から73万円が引かれる。

控除額は2026年10月時点の国税庁の案内によります。養育費が一定の年齢までの扶養義務の履行として払われていることが前提です。

住民税にも、扶養控除とひとり親控除に当たる控除があり、勤務先に出した申告書の内容がもとになります。所得税で外れれば、住民税でも外れます。住民税の額は、保育料や各種の助成の判定に使われることがあるので、影響は税金だけで終わらないことがあります。

離婚した年の扱いも一つ。扶養親族に当たるかどうかも、ひとり親に当たるかどうかも、原則としてその年の12月31日の状況で判断します。12月に離婚届を出した人は、その年からひとり親控除の対象になりえます。反対に、別居していても年末にまだ離婚していなければ、ひとり親控除は受けられません。年末調整の書類は秋のうちに勤務先へ出すことが多いので、年末に離婚した場合は、勤務先に年末調整のやり直しを頼むか、翌年の確定申告で直すことになります。

実務では、離婚協議書に「長男の扶養控除は母が受ける」のように一行入れておくことを勧めています。税金の扱いそのものを契約で決められるわけではありませんが、どちらが申告するかの約束として、年末調整のたびの言い争いを防げます。決めずに離婚した場合は、毎年、勤務先に扶養控除等申告書を出す前に話し合うことになります。具体的な税額や、自分が要件に当たるかの判断は、税務署の相談窓口か税理士に確かめてください。この記事は、相談の前に当たりをつけるための整理です。

この家の数字で比べます。女性は会社員で、所得税の税率は5%。元夫も会社員で、税率は10%。長男は17歳でアルバイトはなく、所得の上限には当たりません。女性が長男を扶養にする場合、扶養控除38万円とひとり親控除35万円で、所得から73万円が差し引かれ、所得税は73万円×5%で3万6,500円少なくなります。元夫が扶養にする場合、元夫の所得から38万円が差し引かれ、所得税は38万円×10%で3万8,000円少なくなり、女性は二つの控除をどちらも失います(復興特別所得税と住民税は含めていません)。長男にアルバイトの収入ができた年は、所得の上限を超えていないかを、その年の12月31日の状況で確かめ直します。超えていれば、どちらの親も扶養控除を受けられず、長男はひとり親控除の「子」の条件からも外れます。

二つの差は、合わせて見ると1,500円で、元夫が取るほうがわずかに大きい。けれど、その1,500円のために、女性の側の3万6,500円が元夫の側へ移ります。長男が19歳になる年からは特定扶養親族になり、女性が受ければ(63万円+35万円)×5%で4万9,000円、元夫が受ければ63万円×10%で6万3,000円。差は広がり、女性が失う額も大きくなります。

この家で、所得税がいくら少なくなるか(元妻の税率5%、元夫の税率10%)
誰が長男を扶養にするか長男17歳の年長男19〜22歳の年
元妻(扶養控除+ひとり親控除)73万円×5%=3万6,500円98万円×5%=4万9,000円
元夫(扶養控除のみ)38万円×10%=3万8,000円63万円×10%=6万3,000円
元夫が取った場合に元妻が失う額3万6,500円4万9,000円

女性と元夫は、この数字を一枚の紙にして話しました。元夫は「払っている側が控除を取るのが当然だと思っていた」と言い、女性が長男を扶養にすることで合意しました。代わりに、長男が大学に進んだときの学費の分担を、別に話し合うことにしました。合意は、養育費の取り決めを書き直した書面に一行で入れました。扶養控除は「どちらが取れるか」ではなく「どちらが取るか」を二人で決めるもので、決めるときは、ひとり親控除まで含めた金額で比べてください。養育費の額の決め方は養育費と算定表の記事、決めたあとの変更は離婚後の養育費の変更の記事にあります。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-04

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-04 確認)。

あわせてどうぞ

解説記事一覧