土地・不動産 2026-09-09
不動産取得税と登録免許税 ― 不動産を手に入れたときにかかる二つの税金
不動産を買った、もらった、相続した。そのとき「取得したこと」にかかる税金が二つあります。都道府県税の不動産取得税と、登記のときに納める国税の登録免許税。相続なら不動産取得税は非課税、登録免許税は0.4%。贈与と売買では両方かかり、税率も高い。取得の原因別の税率、住宅の軽減、100万円以下の土地の相続登記の免税など、2026年9月時点の仕組みを整理します。
この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → [買う前に確認すること] → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利
「税金はゼロだって聞いたんです」。相談室で、70代の母親の隣に座った娘さんが、そう切り出しました。実家の名義を、母が元気なうちに娘に移しておきたい。知り合いから「相続時精算課税を使えば2,500万円まで贈与税はかからない」と聞いた。だから今のうちに贈与で済ませたい、という話でした。私は一つだけ聞き返しました。「それは、どの税金の話ですか」。娘さんは少し黙って、「贈与税、じゃないんですか」と言いました。この記事は、その日に私が紙に描いた図を、そのまま文章にしたものです。
不動産を手に入れると、持っている間の固定資産税とは別に、「取得したとき」にかかる税金が二つあります。不動産取得税と登録免許税です。贈与税や相続税とは別の税金で、この二つは、相続・贈与・売買のどれで取得したかによって、かかるかどうかも税率も違います。「親から生前にもらうのと、相続で受け取るのと、どちらが得か」という問いの答えは、贈与税の話だけでは出ません。この二つを足して、初めて比べられます。
不動産取得税は、不動産を取得した人に都道府県が課す税金です。税率は本則4%で、土地と住宅については3%に軽減されています(この軽減は期限付きで、延長を繰り返しています。2026年9月時点では2027年3月31日までの取得が対象です)。課税標準は固定資産税評価額で、宅地は評価額の2分の1で計算する特例も同じ期限で続いています。取得から数か月後に、都道府県から納税通知書が届きます。この「数か月後」が曲者で、贈与の登記を終えて安心した頃に、忘れた頃に届きます。
ここで最も重要なのは、相続による取得は非課税だということです。相続で親の不動産を受け取っても、不動産取得税はかかりません。かかるのは、売買、贈与、交換、新築などです。生前贈与で実家をもらうと、贈与税に加えて不動産取得税がかかる。相続なら、相続税が基礎控除内で非課税になることが多いうえに、取得税はどのみちゼロ。贈与の記事で書いた「相続時精算課税を使っても不動産取得税は別」という点は、ここに理由があります。娘さんが聞いていた「2,500万円まで非課税」は贈与税の話で、間違いではありません。ただ、それは三つある税金のうちの一つでした。
住宅には軽減があります。新築住宅は課税標準から1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円)を控除。中古住宅は、新耐震基準(1982年1月1日以降の新築が目安)を満たせば、新築された年に応じて100万円から1,200万円を控除。住宅用の土地についても、一定の要件で税額から控除があります。これらは自分で都道府県税事務所に申告して受けるものなので、通知書が届いたら、軽減が適用されているかを確認してください。申告しないと、軽減なしの金額で通知が来ることがあります。
登録免許税は、登記をするときに国に納める税金で、収入印紙で申請書に貼るか、オンラインで納付します。こちらは取得の原因で税率が大きく違います。相続による所有権移転は固定資産税評価額の0.4%。贈与と売買は本則2%で、土地の売買は1.5%に軽減されています(こちらも期限付きの軽減で、延長を繰り返してきました。申請時点の税率は法務局の案内で確認してください)。建物の売買は、自分が住む住宅で要件を満たせば0.3%(長期優良住宅などはさらに低く)に軽減されます。住宅ローンの抵当権設定は債権額の0.4%で、住宅の軽減で0.1%です。相続の0.4%と贈与の2%。同じ名義変更なのに、5倍の差があります。
不動産を取得した人が法務局に登記を申請するとき、その場で登録免許税を国に納める。数か月後に都道府県から納税通知書が届き、不動産取得税を納める。相続なら不動産取得税はかからない。
名前が似ていて時期がずれるので、「二重に取られた」と感じる人が多い二つの税金です。
相続登記には、二つの免税措置があります。一つ、評価額100万円以下の土地の相続登記は、登録免許税が免税です(2027年3月31日まで)。地方の山林や農地、私道の持分など、評価額の低い土地が多い相続で効きます。二つ、相続で取得した人が相続登記をしないまま亡くなった場合の、その人への相続登記(数次相続の途中の登記)も免税です。相続登記の義務化の記事で書いた「積み残しの相続登記」を進めるための措置で、申請書に免税の根拠条文を書く必要があるので、相続登記ナビの案内に沿って記載してください。
現場の話に戻ります。娘さんが持ってきた固定資産税の課税明細書には、実家の土地が1,200万円、建物が800万円と書いてありました。合わせて2,000万円。私は紙を横にして、左に「相続」、右に「贈与」と書き、それぞれの下に二つの税金を並べました。相続なら、登録免許税は2,000万円の0.4%で8万円。不動産取得税はゼロ。贈与なら、登録免許税は2%で40万円。不動産取得税は、土地が1,200万円の2分の1に3%で18万円、建物が800万円の3%で24万円、合わせて42万円。右の列の合計は82万円になりました。左の列は8万円。娘さんは「桁が違う」と言い、母親は「じゃあ、やめたほうがいいの」と聞きました。
| どうやって受け取ったか | 不動産取得税 | 登録免許税 | 二つの合計 |
|---|---|---|---|
| 相続 | 0円(相続は非課税) | 8万円(0.4%。100万円以下の土地は免税) | 8万円 |
| 贈与 | 42万円(土地18万円+建物24万円。土地3%×1/2、建物3%) | 40万円(2%) | 82万円 |
| 特定遺贈(相続人以外の人へ) | 42万円(贈与と同じ計算。包括遺贈ならかからない) | 40万円(2%) | 82万円 |
| 売買 | 42万円(中古住宅の控除が使えれば建物分がゼロになり18万円) | 34万円(土地1.5%=18万円+建物2%=16万円。自宅なら建物0.3%で20万円台) | 76万円(中古住宅の控除と自宅の建物0.3%を使えば約38万円) |
そこで私が聞いたのは、「なぜ今、名義を移したいのですか」でした。答えは、母が亡くなったあとに兄弟で揉めるのが怖いから、でした。それなら、贈与で今動かす必要はありません。母が「この家は娘に」と遺言に書いておけば、相続のときに娘が単独で相続登記をでき、税金は左の列の8万円で済みます。相続登記の義務化の期限(3年)も、遺言があれば迷わず進められます。生前贈与が向いているのは、贈与税・不動産取得税・登録免許税の三つを払ってでも、今、名義を移す理由がある場合です。たとえば、母がすでに判断能力に不安があって遺言が難しい、あるいは娘がその家を担保に借入れをしたい、といった事情です。この家族にはどちらもなく、答えは「遺言を書いて、相続で受け取る」でした。
| 相続 | 登録免許税 8万円 |
|---|---|
| 贈与 | 登録免許税 40万円 / 不動産取得税 約42万円 |
贈与の不動産取得税は土地(1,200万円×1/2×3%=18万円)+建物(800万円×3%=24万円)で試算。中古住宅の控除が使えれば建物分は下がる。贈与税は別途。
もう一つ、免税のほうの現場も書いておきます。別の相談で、祖父の名義のままになっていた山林と畑が15筆あり、評価額はどれも数万円から数十万円でした。祖父から父、父から相談者へと二代分の相続登記が必要な、いわゆる数次相続です。この場合、100万円以下の土地の免税と、途中の相続(祖父から父)の免税の両方が使え、15筆分の登録免許税が全部ゼロになりました。申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」「同条第2項により非課税」と書き分ける必要があり、そこだけは法務局の相談窓口で書き方を確かめました。免税措置は、知っていれば申請書の一行で済み、知らなければ数万円を払います。
不動産取得税の「数か月後」も、実際にあった話を一つ。贈与で息子に土地を移した人から、登記が終わって四か月後に電話がありました。「県から税金の通知が来た。登記のときに全部払ったはずだ」。登記のときに払ったのは登録免許税で、通知が来たのは不動産取得税です。名前が似ていて、時期がずれるので、二重に取られたと感じる人が多い。私は相談のたびに「登記の税金は登記のとき、取得の税金は忘れた頃」と言うようにしています。その人には、宅地の2分の1特例が通知に反映されているかを見てもらい、反映されていたので、そのまま納めてもらいました。
軽減の申告で金額が変わった例も書いておきます。1990年に建った中古の家を売買で買った人で、建物の評価額は800万円でした。何もしなければ建物の不動産取得税は800万円の3%で24万円。ところが、1989年4月から1997年3月までに新築された住宅は、課税標準から1,000万円を控除できます。800万円から1,000万円を引くとマイナスなので、建物分の取得税はゼロになりました。この控除は、買った人が県税事務所に「住宅の取得の申告」を出して初めて適用されます。不動産業者が案内してくれることもありますが、してくれないこともあるので、中古住宅を買ったら、新築年を確かめて、申告の要否を県税事務所に聞いてください。24万円が、書類一枚の差です。
計算の元になる数字を取り違える失敗も、何度も見てきました。固定資産税の課税明細書には、同じ土地について「価格(評価額)」と「課税標準額」が並んでいます。登録免許税の計算に使うのは「価格」のほうで、住宅用地の特例で6分の1や3分の1に下がった課税標準額ではありません。ある相談者は、土地の価格が1,200万円なのに、課税標準額の200万円で申請書を作っていました。そのまま出していれば、法務局から補正の連絡が来て、差額の印紙を貼り足すことになります。端数の処理も決まっていて、価格の1,000円未満を切り捨ててから税率を掛け、税額の100円未満を切り捨てます。価格が1,234万5,678円の土地なら、1,234万5,000円×0.4%で4万9,380円、納めるのは4万9,300円です。
どの年度の価格を使うかにも、分かれ目があります。1月1日から3月31日までに申請するなら前年度の価格、4月1日以降に申請するなら新しい年度の価格を使います。3月に評価証明書を取っておき、書類がそろったのが4月、という人は、新しい年度の証明書を取り直すことになりました。価格は3年ごとの評価替え(次は2027年度)で動くことがあるので、評価替えの年の春をまたぐときは、特に気をつけてください。
評価証明書に価格が載っていない土地もあります。家の前の私道の持分のように、公衆用道路として固定資産税が非課税になっている土地です。この場合、法務局の運用では、近くの宅地の1平方メートル当たりの価格を基に、その100分の30程度で計算する扱いが多く、近くの宅地の価格が分かる書類を添えるよう求められます。扱いは法務局によって違うことがあるので、申請の前に管轄の法務局に確かめてください。実家の相続登記で、家の土地は申請書に書いたのに私道の持分を書き忘れ、あとで私道だけもう一度申請した、という例も珍しくありません。
夫婦の間の贈与でも、二つの税金は変わりません。婚姻20年以上の夫婦が住まいを贈与するときは、贈与税の配偶者控除(2,000万円まで)で贈与税がかからないことがあります。それでも不動産取得税と登録免許税は通常どおりかかり、評価額2,000万円の家なら、上の計算と同じく82万円前後になります(中古住宅の控除が使えれば下がります)。「配偶者控除を使えば税金はゼロ」と聞いて来た夫婦に、冒頭の娘さんと同じ図を描いたことがあります。
まとめると、相続は「不動産取得税なし、登録免許税0.4%」、贈与は「不動産取得税あり、登録免許税2%」、売買は「不動産取得税あり(住宅と土地に軽減)、登録免許税は土地1.5%・建物2%(住宅は軽減)」。同じ2,000万円の実家でも、相続なら8万円で済み、贈与なら82万円に贈与税の検討が乗ります。生前贈与を考えるときは、贈与税だけでなく、この二つの税金を足して比べてください。
帰り際、娘さんが「贈与税がゼロと聞いて、税金がゼロだと思い込んでいました」と言いました。相談の場で一番多いのは、この「一つの税金の話を、税金全部の話だと思う」すれ違いです。税金は一つではなく三つ、と覚えておけば、それだけで82万円の差が見えます。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-02 確認)。
- 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」 ― 免税の要件と期限
- 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」 ― 登記の種類ごとの課税標準と税率