土地・不動産 2026-10-24
賃貸の更新で払うお金 ― 更新料・更新事務手数料・火災保険・保証会社。払うのは契約書に書いてあるもの、書類にサインしなくても契約は続く「法定更新」
2年ごとの更新で、管理会社から15万円を超える請求書が届いた。更新料、更新事務手数料、火災保険、保証会社の更新保証料は、それぞれ根拠になる契約が違います。更新料が契約書に書いてあれば原則として払うことになる最高裁の判断(2011年)、書いていない費用の確かめ方、更新の書類を出さなくても同じ条件で契約が続く法定更新、家賃8万円の部屋で実際に払った額を書きます。
この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → [貸す・借りる・特殊な権利]
「2年ごとの更新の書類が、管理会社から届きました。更新料が家賃の1か月分、更新事務手数料、火災保険、保証会社の更新料。全部で15万円を超えます。全部払わないといけないんですか」。相談してきたのは、家賃8万円のワンルームに住む30代の会社員の女性でした。封筒には、更新の合意書と、支払いの明細と、振込の期限が入っていました。私は、まず入居したときの賃貸借契約書を出してもらいました。払うかどうかの答えは、ほとんどが、その契約書の中にあるからです。
最初に、更新の仕組みです。期間2年の普通の賃貸借(普通借家)で期間が終わるとき、貸主と借主が新しい条件に合意して書類を交わすのが「合意更新」です。もう一つ、借地借家法26条には「法定更新」があります。期間が終わる1年前から6か月前までに、貸主から「更新しない」「条件を変えないと更新しない」という通知がなければ、同じ条件で更新したものとみなされます。更新後は、期間の定めのない契約になります。しかも、貸主が更新を断るには正当な理由(正当事由)が要ります(28条)。つまり、更新の書類にサインしなくても、それだけで出ていく必要はありません(定期借家契約は別で、更新がありません)。
日付に置き換えると、たとえば2026年11月末で2年の期間が終わる契約なら、貸主が通知できるのは2025年11月末から2026年5月末までの間です。この間に何の通知もなく、更新の書類だけが10月に届いたのなら、書類を出さなくても、12月からは同じ条件のまま、期間の定めのない契約として続きます。書類は、新しい期間を2年と決め直すためのもので、住み続けるための許可ではないのです。
左から右への時間の線。契約の始まりから2年後が期間満了。満了の1年前から6か月前までの間が、貸主が更新しない、または条件を変えないと更新しないと通知できる期間。この間に通知がなければ、書類にサインしなくても、同じ条件で更新したものとみなされ、期間の定めのない契約になる。合意更新は、貸主と借主が書類を交わして更新する道。どちらの道でも、借主は住み続けられる。
借地借家法26条・28条・30条による(2026年10月時点)。定期借家契約には更新がありません。
次に更新料です。更新料を払う義務は、法律には書かれていません。払う根拠は、契約書の特約です。更新料の条項が消費者契約法10条で無効になるかが争われた裁判で、最高裁は2011年7月15日、契約書にはっきり具体的に書かれた更新料の条項は、家賃の額や更新の期間に比べて高すぎるなどの特別な事情がない限り、無効にはならない、と判断しました。契約書に「更新料は新家賃の1か月分」などと書いてあれば、原則として払うことになります。逆に、どこにも書いていなければ、払う根拠がありません。
法定更新になったときに更新料を払うかは、契約書の書き方で分かれます。「合意更新のとき」と読める書き方か、「法定更新の場合も含む」と書いてあるか。書いていない場合は争いになることもあるので、書類を出さずに済ませるより、まず書き方を確かめて、管理会社に書面で尋ねるのが穏当です。
反対に、契約書にはっきり書いてある更新料を払わずにいると、契約違反として争いになり、場合によっては契約の解除を求められることもあります。最高裁が無効とする余地を残したのは、更新料が家賃や更新の期間に比べて高すぎるような例外の場合です。家賃1か月分ほどの更新料が2年ごとに書いてある、という一般的な契約で、払わない理由にするのは難しいと考えてください。
更新事務手数料は、管理会社や仲介会社が、更新の書類を作る手間に対して求める手数料です。更新料とは別のもので、これも、賃貸借契約書や重要事項説明書に定めがあるかで判断します。貸主との契約に書いていない手数料を、借主が払う根拠は乏しいのです。もう一つ違うのは税金で、住宅の更新料は家賃と同じく消費税がかかりませんが、事務手数料は手間への対価なので消費税がかかります。
管理会社から届く明細には、貸主に払うもの(更新料)、管理会社に払うもの(事務手数料)、保険会社や保証会社に払うものが、一枚にまとめて書かれていることが多いのです。誰に払うお金かを書き分けると、根拠になる契約もそれぞれ見えてきます。ちなみに更新料は、入居のときに一度払う礼金と同じく返ってこないお金で、退去のときに精算される敷金とは違います。
火災保険は、多くの契約で、加入が入居の条件になっています。借りている部屋を火事や水漏れで傷めたときに大家さんへ払う「借家人賠償責任」の補償が中心です。契約書が特定の保険を指定していなければ、同じ補償のある別の保険を自分で選べることもあります。保証会社の更新保証料は、大家さんとの契約ではなく、借主と保証会社との保証委託契約で決まります。入居のときに受け取った保証会社の契約書の「更新」の欄を見ます。額か、額の計算のしかたが、そこに書かれています。
この家の数字です。請求は、更新料8万円(消費税はかからない)、更新事務手数料4万4,000円(家賃の0.5か月分4万円に消費税10%)、火災保険2年分1万8,000円、保証会社の更新保証料1万円で、合計15万2,000円でした。契約書の特約には「更新料は家賃の1か月分」とありましたが、更新事務手数料の定めは、契約書にも重要事項説明書にもありませんでした。女性が、契約書のどこに定めがあるかを書面で尋ねると、管理会社は事務手数料の請求を取り下げました。払ったのは10万8,000円です。
| 項目 | 根拠 | 請求額 | 払った額 |
|---|---|---|---|
| 更新料(消費税はかからない) | 契約書の特約「家賃の1か月分」 | 80,000円 | 80,000円 |
| 更新事務手数料(税込) | 契約書・重要事項説明書に定めなし | 44,000円 | 0円(取り下げ) |
| 火災保険 2年分 | 契約で加入が条件 | 18,000円 | 18,000円 |
| 保証会社の更新保証料 | 保証委託契約 | 10,000円 | 10,000円 |
| 合計 | 152,000円 | 108,000円 |
もう一つ、この家で見つかったことがあります。更新の合意書の中に、「次回の更新から家賃を8万3,000円とする」という一行が入っていたのです。更新の書類は、条件を変える機会にもなります。サインする前に、家賃、期間、特約の中身が今の契約と同じかを、一行ずつ比べてください。家賃の値上げを求められたときの考え方は、大家から家賃の値上げを求められたときについて書いた記事にまとめています。女性は、家賃の一行を消した合意書を出し直すよう求め、今の家賃のまま更新しました。
請求に疑問があるときは、振込の期限の前に、書面(メールでもよい)で尋ねます。「払わない」と言う必要はなく、「契約書のどの条項に基づく請求か、教えてください」と聞けば十分です。根拠のある費用はそこで確かめられ、根拠のない費用はそこで止まります。尋ねたやり取りは、メールや手紙の写しを残しておきます。電話で済ませると、誰が何と言ったかが残りません。話がこじれたら、市区町村や都道府県の消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談できます。
更新の請求書が来たら、入居のときの契約書を出す。更新料は特約に書いてあるか、事務手数料はどこに定めがあるか、火災保険は指定か、保証会社の契約はどうなっているか。四つを別々に確かめると、合計の額だけを見ていたときには気づかない一行が見えてきます。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-24
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-24 確認)。
- e-Gov法令検索「借地借家法」 ― 26条(期間満了の1年前から6か月前までに通知がなければ、同じ条件で更新したものとみなす。期間は定めのないものになる)、28条(貸主の更新拒絶には正当の事由が要る)、30条(借主に不利な特約は無効)
- e-Gov法令検索「消費者契約法」 ― 10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)。更新料の条項が無効かどうかが争われた条文
- 国税庁 タックスアンサー No.6225「地代、家賃や権利金、敷金など」 ― 住宅の賃貸借の更新に伴う更新料などのうち返還しないものは、消費税が非課税