作品の仕組み 2026-09-28
養育費・婚姻費用かんたん計算の仕組み ― 算定表の元の式を、そのまま画面に出す
双方の年収と子どもの年齢区分を入れると、養育費か婚姻費用の月額の目安を出す計算機。家庭裁判所で使われる標準算定方式(2019年改定)の式、つまり基礎収入の割合と生活費指数62・85を、そのままコードにしています。帯ではなく円単位で出す理由、負の結果や4人以上の子の扱い、支払終了までの総額の数え方、入力を送らない作りを書きます。
この記事の位置: AIが作り、コードが検分する → 送らない(端末の中で完結する) → [数字と実寸] → 教材の設計
公開前に、自分で最初に入れた数字は、支払う側が給与500万円、受け取る側が給与200万円、子ども1人(0〜14歳)でした。計算機が返したのは月4万7,516円。裁判所の算定表で同じ条件の欄を引くと、「4〜6万円」の帯に入ります。帯の中に収まっていることを確かめてから、私は画面の下に、この4万7,516円がどういう式で出たかを全部出すことにしました。「4〜6万円」と言われるより、「なぜ4万7,516円か」が見えたほうが、話し合いの出発点になると考えたからです。この記事は、その式の話です。
養育費・婚姻費用かんたん計算は、双方の年収、給与か自営業か、子どもの人数と年齢区分を入れると、養育費か婚姻費用の月額の目安を出す道具です。中身は、家庭裁判所で使われている「標準算定方式」の式です。2019年12月に、裁判官による研究報告として改定版が公表されていて、算定表は、この式の結果を2万円刻みの帯にして一覧にしたものです。計算機は帯に丸めず、式を円単位で計算します。式そのものは研究報告に載っていて、誰でも同じ計算ができます。計算機がしているのは、その式を毎回、間違えずに、同じ順番でたどることだけです。
一つ目の段階は、基礎収入です。年収のうち、家族の生活に回せる部分を取り出します。税金や社会保険料、仕事のためにかかるお金、住居費などを差し引いた残り、という考え方で、年収に割合を掛けて出します。給与の割合は年収が低いほど高く、75万円までなら54%、500万円なら42%、2,000万円なら38%。自営業は61%から48%です。この割合を、研究報告の表のとおりに段階でコードに持たせています。計算できる上限が給与2,000万円、自営業1,567万円なのは、表がそこまでしかないからです。入力する年収も、給与と自営業で意味が違います。給与なら源泉徴収票の「支払金額」(税や保険料を引く前の額)、自営業なら確定申告書の所得に、実際には支出していない控除などを足し戻した「算定用の所得」。入力欄の下に、この違いを一行で書いています。
二つ目は、生活費指数です。親を100としたとき、0〜14歳の子は62、15歳以上の子は85。養育費は、支払う側が子どもと一緒に暮らしていたら子どもに回していたはずの額、という考え方をします。支払う側の基礎収入をA、受け取る側をB、子どもの指数の合計をCとすると、子どもの生活費はA×C÷(100+C)で、それを双方の基礎収入の割合A÷(A+B)で分けた分が、支払う側の負担です。婚姻費用は配偶者の生活費も含むので式が変わり、(A+B)×(100+C)÷(200+C)−B。受け取る側の世帯に割り当てられる額から、受け取る側の基礎収入を引いた残りです。
支払う側の年収500万円に42%を掛けて基礎収入A210万円、受け取る側の年収200万円に43%を掛けて基礎収入B86万円。子どもの生活費指数Cは62。A×C÷(100+C)で子どもの生活費を出し、A÷(A+B)の割合を掛けて年57万195円、12で割って月4万7,516円になる。
割合と指数は2019年改定の標準算定方式によります。算定表では「4〜6万円」の帯に入る額です。
冒頭の例で式をたどります。Aは500万円×42%で210万円、Bは200万円×43%で86万円、Cは62。210万×62÷162で子どもの生活費は約80万4,000円、これに210÷296を掛けて年57万195円、12で割って月4万7,516円。同じ二人で婚姻費用にすると月8万852円、子どもがいなければ月5万1,667円です。画面の下には、A、B、Cと式を毎回そのまま表示しています。数字が合わないと思ったら、電卓で同じ式をたどれるようにするためです。
養育費 子1人 47,516円、養育費 子2人 73,890円、婚姻費用 子なし 51,667円、婚姻費用 子1人 80,852円
計算機の式で出した額です。子1人は0〜14歳、子2人は0〜14歳と15歳以上。婚姻費用は配偶者の生活費を含むので、同じ子の人数でも養育費より高くなります。
作るときに決めた例外の扱いが、三つあります。一つ、婚姻費用で受け取る側の収入のほうが多いと、式の結果が負になります。これは「指定した向きには払う額がない」という意味なので、0円と表示し、支払う側と受け取る側の設定を確かめるよう添えます。二つ、支払う側の年収が0円のときは、式どおりの機械的な結果を出したうえで、働ける力(稼働能力)のような個別の事情は入っていないと書きます。三つ、算定表は子ども3人までしか載っていないので、4人と5人は式で計算し、「算定表の掲載外」と明記します。15歳以上の区分は指数を変えるためのもので、支払いの終わる年齢を決めるものではない、という注意も画面に残しています。
養育費には、支払終了までの総額を出す欄も付けました。子どもの生年月を選ぶと、今月から、選んだ終了年齢(初期設定は20歳)の誕生月まで、月額を積み上げます。2022年4月生まれの子1人、月4万7,516円なら、2026年9月から2042年4月までの188か月で、893万3,008円。子どもが2人いるときは、月額を指数の比で子ども別に分けます。単純に四捨五入すると子ども別の合計が表示の月額と1円ずれることがあるので、端数の大きい順に1円ずつ配って、合計を月額にぴったり合わせています。上の子の支払いが終わった月から、残りの子の分だけに下がっていく流れも、期間ごとに並べます。
総額には、はっきりした限界があります。月額は今の数字で固定していて、子どもが15歳になったときの増額や、上の子が終わったあとの再計算はしません。実際の取り決めでは見直すことが多いので、総額は「今の条件が続いたら」の目安です。この前提は、総額の欄の一番上に書いています。
入力は送りません。年収や子どもの生年月は、ブラウザのタブの中だけに一時的に保存していて、タブを閉じれば消えます。サーバーには何も届きません。結果はPDFで保存できますが、これはブラウザの印刷機能で作るもので、紹介用のLINEとXのボタンが共有するのは計算機のURLだけです。離婚や別居の数字は、人に見られたくない数字の代表です。スマホ定規や暗記シートスクラッチと同じく、端末の中で完結させる作りにしました。作るときにいちばん気をつけたのは、紹介ボタンのURLに入力の値を載せないことです。URLに年収を入れれば、共有した相手に数字がそのまま渡ります。画面に「共有するのは計算機のURLのみ。入力内容・結果は含みません」と書いたのは、その約束を目に見える形にするためです。
式が同じでも、実際の額が式どおりになるとは限りません。私立学校の学費、支払う側が受け取る側の住む家のローンを払っている場合、自営業の所得をどう見るか。家庭裁判所は、こうした事情で式の結果を調整します。養育費と算定表の記事に、その調整の考え方を書いています。4万7,516円は答えではなく、二人が同じ数字を見て話し始めるための出発点です。帯ではなく式を出したのは、その出発点を、どちらか一方の言い値ではなく、同じ計算からにしたかったからです。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-28
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-28 確認)。
- 裁判所「平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」 ― 改定標準算定方式・算定表(令和元年版)の公表ページ
- 裁判所「養育費・婚姻費用算定表について(説明)」 ― 算定表の使い方と、表の幅の考え方