離婚・家族 2026-09-15
離婚後の健康保険と年金の切替 ― 扶養から抜けた日から14日、国保・任意継続・第1号への手順
相手の健康保険の扶養に入っていた人は、離婚した日に資格を失います。翌日から自分で保険に入る必要があり、期限は14日以内。選択肢は、自分の勤務先の健康保険、国民健康保険、条件が合えば元の保険の任意継続。年金も第3号から第1号へ切り替え、払えなければ免除を申請できます。子の保険証、保険料の目安、離婚の証明書類まで、市区町村の窓口に行く前に知っておけば一度で済む手順を書きます。
この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → [離婚が成立したら] → 離婚後の生活 → 状況別(当てはまる方だけ)
離婚から三週間、子が夜中に熱を出して、女性は救急外来に行きました。保険証は、元夫の勤務先の健康保険の、扶養家族のもの。窓口で「この保険証は、資格を失っています」と言われ、その夜は全額自己負担で2万8,000円。離婚した日に、扶養の資格は消えていました。国保の加入は、14日以内。女性は、その14日を、氏の届と引っ越しで使い切っていました。この記事は、その夜の2万8,000円から始めます。
離婚後の手続きの記事で、氏・戸籍・保険・年金の順番を書きました。この記事は、その中で期限が短く、放置すると病院で困る「健康保険と年金」だけを取り出します。手順は多く見えますが、行く場所は市区町村の窓口一つです。
まず、自分がどの保険に入っているかを確認します。保険証(またはマイナ保険証の資格情報)を見て、相手の勤務先の健康保険組合や協会けんぽの「被扶養者」になっていれば、離婚した日にその資格を失います。相手が国民健康保険で、自分も同じ世帯の被保険者だった場合は、世帯が分かれるので自分の世帯で加入し直します。自分の勤務先の健康保険に自分名義で入っている人は、離婚しても変わりません(氏の変更の届出だけです)。
扶養から抜けた人の選択肢は三つです。一つ目、自分の勤務先の健康保険に入る(週の労働時間などの加入要件を満たす場合)。勤務先に離婚を伝えて手続きします。二つ目、国民健康保険に入る。市区町村の窓口で、離婚日の翌日から加入します。三つ目、元の健康保険の任意継続は、自分が「被保険者本人」だった場合の制度なので、被扶養者だった人は使えません。実際には、勤務先の保険か国保の二択です。
国保の加入手続きは、離婚の日から14日以内に、住所地の市区町村の窓口で行います。持ち物は、本人確認書類、マイナンバーが分かるもの、そして「相手の健康保険の資格を失った日が分かる書類」(資格喪失証明書。相手の勤務先か健康保険組合が発行します)。相手に頼みにくい場合は、離婚届受理証明書や戸籍謄本で離婚日を示して加入できることが多いので、窓口で相談してください。14日を過ぎても加入はできますが、保険料は資格喪失日にさかのぼって発生し、その間の医療費は一度全額払って後で請求する形になります。
子の保険も一緒に切り替えます。子が相手の扶養に入っていた場合、親権者になって同居する側の保険に移すのが普通です。自分が勤務先の健康保険なら子を扶養に入れる届出、国保なら子も一緒に加入します。相手の扶養に残したままにすることもできますが、保険証の管理を相手に頼ることになるので、実務では移す人が多いです。
年金は、第3号被保険者(会社員・公務員の配偶者で扶養されていた人)だった場合、離婚日の翌日から第1号被保険者になります。市区町村の窓口で「種別変更」の届出をし、期限は同じく14日以内。自分で国民年金保険料(2026年度は月1万7,920円)を納める立場になります。収入が少なくて払えない場合は、その場で免除・納付猶予の申請ができます。免除期間も年金の受給資格期間には入るので、未納のまま放置するより免除申請をしておく方が後で困りません。年金分割は別の手続きで、こちらは年金事務所です(年金分割の記事)。
保険料の目安を書いておきます。国保の保険料は前年の所得で決まるので、離婚した年は、まだ扶養に入っていた時期の低い所得で計算されて安いことが多く、翌年から働いた分の所得で上がります。収入が減った場合は減免の相談ができます。国民年金は定額で、免除を使えば全額・4分の3・半額・4分の1の段階があります。
翌日にやったことです。市役所の国保の窓口へ。持ち物は、本人確認書類、マイナンバーカード、そして、元夫の勤務先の資格喪失証明書。証明書は手元になく、元夫に頼みたくない。窓口で相談すると、離婚届受理証明書で離婚日を示して加入できる、と案内され、その場で加入。加入日は、離婚日の翌日にさかのぼる。三週間分の保険料は、さかのぼって発生。子二人も一緒に加入。同じ窓口で、国民年金の第3号から第1号への種別変更も。女性のパート収入は月10万円で、保険料月1万7,920円は重い。その場で、免除の申請。前年の所得が扶養内だったので、全額免除が認められました。
2万8,000円は、戻りました。国保に加入して、保険証(資格確認書)を持って病院の窓口に行き、療養費の支給申請。加入日が離婚日の翌日にさかのぼるので、救急外来の日も加入期間内。三割負担との差額、約1万9,600円が、六週間後に振り込まれました。「14日を過ぎても加入はできるが、その間の医療費は一度全額払って後で請求する」と本文に書いた形が、この夜の2万8,000円です。
| 手続き | どこで | 持ち物 |
|---|---|---|
| 国民健康保険への加入(自分と子) | 市区町村 | 本人確認書類、マイナンバー、資格喪失証明書か離婚日が分かる書類 |
| 勤務先の健康保険に加入・子を扶養に | 勤務先 | 勤務先の指示による |
| 年金の種別変更(第3号→第1号) | 市区町村 | 年金手帳か基礎年金番号、本人確認書類 |
| 保険料の免除・減免の申請 | 市区町村 | 所得が分かるもの(窓口で確認) |
保険料の目安も書きます。国保の保険料は前年の所得で決まり、女性の前年の所得は扶養内の約100万円なので、この市では、女性と子二人で月約9,000円。翌年、パートを増やして年収180万円になると、月約1万4,000円に。年金は、免除で当面ゼロ、免除期間も受給資格期間に入る。「未納のまま放置するより免除申請を」と本文に書いたのは、女性が最初、「払えないから、年金は放っておく」と言ったからです。放っておくと未納、申請すれば免除。同じ「払わない」で、将来の年金が違います。
手順を一枚にすると、離婚した日を確認し、14日以内に市区町村の窓口へ行き、国保加入(または勤務先で手続き)と年金の種別変更を同じ日に済ませ、子の分も一緒に届け出る。持ち物は本人確認書類、マイナンバー、離婚日が分かるもの。これで終わりです。窓口の人が案内してくれるので、書類を揃えて行けば一度で済みます。
救急外来の夜の2万8,000円は、国保への加入で、六週間後に1万9,600円が戻りました。14日を、氏の届と引っ越しで使い切ったための夜でした。「行く場所は市区町村の窓口一つ」と本文の最初に書きました。氏の届も、国保も、年金も、同じ建物の中です。離婚届を出したその日に、その建物の中で、この記事の表の三つを済ませてください。夜中の熱は、14日を待ちません。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-03
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-03 確認)。
- 日本年金機構「国民年金保険料」 ― 2026年度(令和8年度)の国民年金保険料は月1万7,920円