離婚・家族 2026-09-15
離婚調停の当日 ― 申立てから期日まで、持ち物、部屋で何を話すか。怖い場所ではありません
調停と聞くと法廷や尋問を想像しますが、実際は家庭裁判所の小さな会議室で、調停委員二人と交互に話す場です。相手と同じ部屋に入ることは基本的にありません。申立ての書類と費用、期日までの流れ、当日の持ち物と服装、部屋で聞かれること、1回目で決まらないのが普通であること。初めて行く人が知っておけば落ち着ける範囲を書きます。
この記事の位置: [別居前・離婚を考え始めたら] → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → 離婚が成立したら → 離婚後の生活 → 状況別(当てはまる方だけ)
第一回期日の三日前に、女性から電話が来ました。「やっぱり、行けそうにありません。夫と同じ建物にいるだけで、無理です」。私は、当日の流れを、部屋の名前と時間で説明しました。受付、申立人待合室、調停室、30分、待合室、30分、終わり。夫とは廊下でも会わない。女性は「それなら」と言い、当日、行きました。この記事は、その三日前の電話で話した、当日の流れです。
離婚調停と裁判離婚の流れの記事で制度の全体を書きました。この記事は、その中の「調停の当日」だけを取り出します。相談の場で、調停を申し立てるかどうかを迷う人の多くは、制度が分からないのではなく、当日の場面が想像できないから怖いのです。想像できれば、たいてい行けます。
申立ては、原則として相手の住所地の家庭裁判所です(合意があれば別の裁判所でも可)。必要なのは、夫婦関係調整調停(離婚)の申立書、夫婦の戸籍謄本、事情説明書、子がいれば子についての事情説明書、年金分割を求めるなら年金分割のための情報通知書。費用は収入印紙1,200円と、連絡用の郵便切手(裁判所ごとに数百円から千数百円)。申立書の書式は裁判所のサイトにあり、記入例もあります。弁護士なしで申し立てる人は珍しくありません。
申立てから1〜2か月で、第1回の期日が指定されます。裁判所から双方に呼出状が届き、相手には申立書の写しも送られます。ここで相手が驚いて連絡してくることがありますが、話は調停の場でする、と決めておけば足ります。期日は平日の日中で、1回あたり2時間ほど。1回目で全部が決まることはまずなく、月1回程度のペースで数回続くのが普通です。
当日の持ち物は、呼出状、本人確認書類、印鑑、申立書の控え、これまでの経緯や希望をまとめたメモ、財産や収入が分かる資料(源泉徴収票、通帳の写し、住宅ローンの残高)。メモは見ながら話して構いません。服装は自由で、仕事帰りの服で来る人がほとんどです。子は基本的に連れて来られない(待たせる場所がない)ので、預け先を確保しておきます。
裁判所に着いたら、受付で待合室を案内されます。申立人と相手方の待合室は別で、廊下ですれ違わないよう時間をずらす配慮もしてもらえます。DVがある場合は、申立時に「進行に関する照会回答書」で申し出ておくと、入退室の時間差や、同じ階に入らない措置を取ってもらえます。相手と顔を合わせずに終えることは可能です。
| 持ち物 | 用途 |
|---|---|
| 呼出状・本人確認書類・印鑑 | 受付と、調書への署名 |
| 申立書の控え | 自分が何を書いたか確認する |
| 経緯と希望のメモ | 見ながら話してよい |
| 収入・財産の資料(源泉徴収票、通帳の写し、ローン残高) | 養育費・財産分与の話に入ったとき |
| 子の預け先の確保 | 裁判所に子を待たせる場所は基本的にない |
調停室は、会議机と椅子があるだけの部屋です。調停委員は男女一人ずつの二人で、多くは弁護士や元教員などの民間人です。申立人が先に呼ばれ、30分ほど話し、次に相手方が呼ばれて30分、それを2回ずつ繰り返すのが1回の期日の標準です。聞かれるのは、離婚したい理由、子のこと(誰と暮らしているか、学校、これからの希望)、お金のこと(収入、財産、養育費や財産分与の希望)。上手に話す必要はありません。事実と希望を、メモを見ながら順に言えば伝わります。
調停委員は、味方でも敵でもなく、双方の話を聞いて折り合える点を探す人たちです。「それは通らないと思いますよ」と言われることもあります。それは相手の肩を持っているのではなく、裁判になった場合の見通しを伝えているので、聞いておいて損はありません。その場で答えを出す必要はなく、「持ち帰って考えます」で次回に回せます。
合意に至れば調停調書が作られ、これは判決と同じ効力があり、養育費の不払いには履行勧告や強制執行が使えます(養育費の不払いの記事)。合意に至らなければ不成立で終わり、離婚するには訴訟に進みます。不成立になっても、調停で整理された論点は訴訟で生きます。
当日の実際を、時間で書きます。10時、家庭裁判所の受付で呼出状を見せ、申立人待合室へ。夫は10時15分の来庁を指定されていて、別の待合室。10時20分、調停室に呼ばれる。調停委員は60代の男性と50代の女性の二人。最初に聞かれたのは「今日は、何を決めたいですか」。女性は、メモを見ながら、離婚の意思、子(6歳)の親権、養育費、財産分与の希望を順に話し、30分。11時、待合室に戻り、夫が調停室へ。11時30分、女性がもう一度調停室へ。調停委員から「ご主人は、離婚には応じるが、養育費の額に開きがある」と伝えられ、女性の希望月6万円に対して夫は月3万円。「算定表では、この収入だと4〜6万円の帯です」と調停委員。女性は「持ち帰って考えます」で、次回の期日を決めて、12時10分に終了。
持ち物で役に立ったものも書きます。源泉徴収票(夫の分は、別居前に撮影した写真をプリント)で、算定表の帯がその場で確認できた。通帳の写しで、財産分与の一覧の土台ができた。子の保育園の書類で、子の生活の安定を説明できた。持って行かなくて困ったのは、住宅ローンの残高証明で、次回までに用意することに。
二回目以降も書きます。第二回、養育費は月5万円で合意。財産分与は、夫名義の預金640万円と自宅(査定2,100万円、ローン残1,600万円、純資産500万円)で、自宅は夫が取得して住み続け、預金から妻に570万円。第三回、面会交流を月1回と決め、年金分割の按分0.5を確認。第四回、全部を読み合わせて調停成立。申立てから四か月半、期日は四回、女性は一度も夫と顔を合わせませんでした。
最後に一つ。調停は、負けたり裁かれたりする場ではありません。話し合いが自分たちだけでは進まなくなったときに、第三者に間に入ってもらう場です。書類を揃えて、メモを持って、時間どおりに行けば、それで一回目は終わります。難しくありません。
「同じ建物にいるだけで無理」と言った女性は、四回の期日で、一度も夫と会わずに、調停調書を持って帰りました。「想像できれば、たいてい行ける」と本文の最初に書きました。三日前の電話で話したのは、部屋の名前と時間だけです。それで、想像ができました。調停は、怖い場所ではなく、部屋の名前と時間が決まっている場所です。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-02 確認)。
- 裁判所「夫婦関係調整調停(離婚)」 ― 申立先は相手方の住所地の家庭裁判所または合意で定める家庭裁判所。費用は収入印紙1,200円と連絡用の郵便切手(裁判所ごとに異なる)。必要書類(申立書、夫婦の戸籍謄本、年金分割のための情報通知書など)