離婚・家族 2026-09-12

離婚調停と裁判離婚の流れ ― 話し合いで決まらないときに、家庭裁判所で何が起きるか

協議で離婚がまとまらないとき、いきなり裁判はできません。まず家庭裁判所の調停(調停前置)。調停委員を介して話し合い、合意すれば調停調書で離婚が成立します。まとまらなければ、裁判離婚で、法律上の離婚原因(不貞、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、回復の見込みのない精神病、婚姻を継続し難い重大な事由)が要ります。申立ての方法、費用、期間、当日の流れ、弁護士を頼む目安を整理します。

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この記事の位置: [別居前・離婚を考え始めたら] → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → 離婚が成立したら → 離婚後の生活 → 状況別(当てはまる方だけ)

「夫が離婚に応じません。話し合いは三年しました」。40代の女性が、そう言って来ました。子はいない。別居して二年。夫は「離婚する理由がない」の一点張りで、話し合いは同じところを回っている。彼女が聞いたのは「裁判をすれば離婚できますか」でした。順番が一つ抜けています、と答えました。裁判の前に、調停です。そして調停は、彼女が思っているより、彼女の味方でした。

協議離婚の記事で、離婚の9割近くが協議離婚だと書きました。残りの1割強が、この記事の調停と裁判です。相手が離婚に応じない、親権や財産で折り合わない、相手と直接話せない。そのとき、家庭裁判所で何が起きるかを、順に書きます。

最初は調停です。日本では、離婚の裁判を起こす前に、まず調停をしなければならない決まり(調停前置主義)があります。申立ては、相手方の住所地の家庭裁判所(または夫婦が合意した家庭裁判所)に、「夫婦関係調整調停(離婚)」の申立書を出します。費用は収入印紙1,200円と郵便切手数千円で、弁護士なしでも申し立てられます。申立てから第1回の期日まで、1〜2か月です。

調停の当日は、こう進みます。夫婦は別々の待合室で待ち、調停委員(男女二人が普通)が、それぞれを交互に調停室に呼んで話を聞きます。相手と顔を合わせずに進むのが調停の特徴で、DVなどがある場合は、来庁の時間や出入口を分ける配慮もされます。一回の期日は2時間程度で、月に一回くらいのペースで数回続きます。調停委員は、双方の言い分を聞き、法律と実務の目安(養育費なら算定表、財産分与なら2分の1)を示しながら、合意点を探ります。合意すれば「調停調書」が作られ、その時点で離婚が成立します(届出は報告的なもので、10日以内に市区町村へ)。調停調書は判決と同じ効力があり、養育費の不払いにはそのまま差押えができます。

協議・調停・裁判の比較
協議離婚調停離婚裁判離婚
場所夫婦の話し合い家庭裁判所(調停委員が仲介)家庭裁判所(判決)
離婚原因不要不要(合意で成立)法定の離婚原因が必要
費用無料(書面作成を頼めば数万円)印紙1,200円+切手。弁護士は任意印紙1万3,000円〜+弁護士費用
期間数か月半年〜1年1〜2年
成立の書面離婚協議書・公正証書調停調書(判決と同じ効力)判決・和解調書

調停で決めることは、離婚そのものに加えて、親権、養育費、面会交流、財産分与、年金分割、慰謝料の全部です。協議離婚で決める五つと同じで、調停は、それを第三者を挟んで決める場です。婚姻費用は別の調停として同時に申し立て、先に決めます。

調停がまとまらない(不成立)場合、次は裁判です。ただし、裁判で離婚が認められるには、民法が定める離婚原因が要ります。一、配偶者の不貞行為。二、悪意の遺棄(生活費を渡さない、正当な理由なく同居しない)。三、3年以上の生死不明。四、回復の見込みのない強度の精神病。五、その他婚姻を継続し難い重大な事由(長期の別居、DV、モラハラ、性格の不一致で修復不能な状態など)。協議や調停では理由は要りませんが、裁判では、この五つのどれかを証拠で示す必要があります。「性格が合わない」だけでは、別居期間などの事情がなければ認められにくい、というのが実務です。

裁判の流れは、家庭裁判所に訴状を出し、月に一回程度の期日で主張と証拠を出し合い、本人尋問を経て、判決。期間は1〜2年が普通で、途中で和解(裁判上の和解)で終わることも多い。費用は、訴額に応じた印紙(離婚だけなら1万3,000円、財産分与や慰謝料を加えれば増える)と、弁護士費用です。裁判は、弁護士なしで進めることは現実的でなく、着手金30〜50万円と成功報酬(得た経済的利益の10〜20%程度)が目安です。弁護士費用は2004年に日本弁護士連合会の報酬基準が廃止されて各事務所の自由になっていますが、廃止前の旧基準を今も目安にしている事務所が多く、この幅はそこから来ています。依頼前に見積もりを書面でもらってください。

裁判で離婚が認められる五つの原因(民法770条)
原因例
不貞行為配偶者以外との肉体関係
悪意の遺棄生活費を渡さない、正当な理由のない別居
3年以上の生死不明—
回復の見込みのない強度の精神病(近年は慎重に判断される)
婚姻を継続し難い重大な事由長期の別居、DV、モラハラ、修復不能な関係の破綻

弁護士を頼む目安を書きます。調停は、自分で申し立てて進める人も多く、調停委員が中立に進めてくれます。ただ、相手に弁護士が付いた、親権や財産の額が大きい、DVがあって相手と同じ建物にいるのも辛い、という場合は、調停の段階から弁護士を頼んだほうが、結果も負担も違います。裁判は、弁護士が前提です。行政書士は、調停の申立書の作成も、調停や裁判の代理もできません。相続の相談先の選び方の記事で書いた線と同じで、「争いがあれば弁護士」です。

現場の経過です。相手方の住所地の家庭裁判所に、夫婦関係調整調停を申し立てました。印紙1,200円と切手、申立書と戸籍謄本と事情説明書。弁護士は付けず、私は申立ての書類の整え方を助言しただけです。第1回期日は申立てから六週間後。調停委員は男女二人で、彼女が30分、夫が30分、これを二回。夫は「離婚したくない」と繰り返し、調停委員は夫に「別居が二年続いていて、奥さんの意思が固い。このまま続けても、裁判になれば別居期間が重く見られる」と、見通しを伝えました。調停委員の役目は、双方に法律の目安を示すことで、この一言が、夫の態度を少しずつ変えました。

調停は五回、七か月かかりました。三回目で夫は「離婚してもいい」と言い始め、四回目と五回目は財産分与の話。預貯金と夫の退職金の婚姻期間分を2分の1で分け、彼女が約480万円を受け取る内容で合意し、調停調書ができました。その日に離婚が成立し、10日以内に市区町村へ報告の届を出しました。裁判は起こしていません。

裁判に進んだ例も書いておきます。別の相談で、夫が調停に一度も出席せず、不成立になった件です。妻は弁護士に依頼し、訴状を出し、月一回の期日で主張と証拠を出し合い、本人尋問を経て、提訴から一年四か月で「婚姻を継続し難い重大な事由」(別居四年、修復の見込みなし)を理由に離婚を認める判決が出ました。弁護士費用は着手金40万円と報酬金約50万円、印紙は財産分与を含めて2万円台。調停から数えると二年半。この件で認められた財産分与の額は、調停委員が最初に示した目安と、ほとんど変わりませんでした。

最後に、期間の感覚を。協議離婚は、決めるべきことを決めれば数か月。調停は半年から1年。裁判は1〜2年。争えば争うほど長く、費用も増え、子への影響も大きい。調停の場で調停委員が示す目安(算定表、2分の1)は、裁判になっても大きくは変わりません。その目安を先に知って、協議の段階でまとめられるなら、それが一番早く、安い。この棚にある記事は、そのためのものです。

最初の日、彼女は裁判を考えていました。終わったのは調停で、七か月でした。調停委員が示す目安(算定表、2分の1、別居期間の重み)は、裁判になっても大きくは変わりません。だから、その目安を早く聞ける調停は、争いたい人の場ではなく、争いを短くしたい人の場です。この記事の最後に「その目安を先に知って、協議の段階でまとめられるなら、それが一番早く、安い」と書いたのは、彼女の七か月と、別の人の二年半を、並べて見たからです。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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