探偵・調査 2026-10-22

「個人情報が流出した可能性があります」というお知らせが届いたら ― 本物かを確かめる、漏れた中身で手を打つ、「消してあげます」に乗らない

通販サイトから届いた「個人情報流出のお詫び」のメール。それ自体が詐欺ではないかと疑って、リンクを押せずにいた人の相談から書きます。2022年4月から一定の漏えいは本人への通知が義務になり、こうした知らせは増えました。知らせが本物かを公式サイトで確かめる方法、漏れた情報(住所・メール・生年月日・パスワード・カード番号)ごとの打つ手、開示や利用停止の請求、漏えいのあとに来る「消してあげます」という話への注意を、探偵業24年目の立場から書きます。

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「『個人情報流出のお詫び』というメールが来たんですが、これ自体が詐欺じゃないかと思って、リンクを押せずにいます」。60代の男性が、スマートフォンの画面を見せてくれました。数年前に一度だけ使った通販サイトからで、氏名・住所・電話番号・メールアドレスが、不正アクセスで外に出た可能性がある、という内容でした。男性の疑い方は、半分正しい対応です。お詫びのメールをまねた詐欺のメールも出回るからです。

こうした知らせは、珍しいものではなくなりました。2026年10月16日には、公益財団法人マンション管理センターと株式会社日建学院が、事前確認講習のシステムに第三者の不正アクセスがあり、受講者3,597名の個人情報(マンション管理士の登録番号、氏名、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスなど。クレジットカードと銀行口座の情報は含まれない)が流出した可能性がある、と公表しました。対象の人には個別にメールで知らせ、不審なメールは開かずに削除するよう呼びかけています。

まず、なぜお知らせが届くのかです。2022年4月から、個人情報保護法で、一定の漏えいが起きた会社は、国の個人情報保護委員会への報告と、本人への通知が義務になりました。対象は、病歴などの「要配慮個人情報」が含まれるとき、カード番号のようにお金の被害につながるおそれがあるとき、不正アクセスのように不正な目的によるおそれがあるとき、そして本人が1,000人を超えるときです。委員会への報告は、知ってからおおむね3〜5日以内の速報と、30日以内(不正な目的によるものは60日以内)の確報の二段階です。本人への通知も速やかに行うことになっていて、連絡がつかない人には、公表と問い合わせ窓口で代えることがあります。

漏えいした会社は、委員会に報告し、本人に通知する。漏れた情報は名簿になって、別の連絡として届くことがある
漏えいした会社は、委員会に報告し、本人に通知する。漏れた情報は名簿になって、別の連絡として届くことがある左に漏えいした会社。会社から上の個人情報保護委員会へ「報告」の矢印(速報はおおむね3〜5日、確報は30日、不正の目的なら60日)。会社から右の本人へ「通知」の矢印。会社から本人へ点線の矢印で、漏れた情報が名簿になり、不審な電話やメールとして届くことがある。通知が届いたら、公式サイトで本物か確かめ、漏れた中身で手を打つ。不正アクセス不正アクセス 漏えいした会社 個人情報保護委員会 報告報告 本人 通知(メール・郵便)通知(メール・郵便) 名簿化 → 不審な電話・メール名簿化 → 不審な電話・メール 届いたら:公式サイトで本物か確かめる → 漏れた中身で手を打つ届いたら:公式サイトで本物か確かめる → 漏れた中身で手を打つ 「消してあげます」という電話には乗らない「消してあげます」という電話には乗らない

左に漏えいした会社。会社から上の個人情報保護委員会へ「報告」の矢印(速報はおおむね3〜5日、確報は30日、不正の目的なら60日)。会社から右の本人へ「通知」の矢印。会社から本人へ点線の矢印で、漏れた情報が名簿になり、不審な電話やメールとして届くことがある。通知が届いたら、公式サイトで本物か確かめ、漏れた中身で手を打つ。

2026年10月時点。報告の期限は、速報がおおむね3〜5日以内、確報が30日以内(不正の目的によるおそれがあるものは60日以内)です。

届いた知らせが本物かは、その知らせの中のリンクや電話番号を使わずに確かめます。自分でその会社の公式サイトを開き、お知らせ欄に同じ発表があるかを見る。問い合わせるときも、公式サイトに載っている番号にかけます。冒頭の男性のサイトでは、トップページに同じ日付のお詫びが載っていて、メールの内容と一致しました。

次に、何が漏れたかで打つ手が変わります。氏名・住所・電話番号なら、勧誘の電話やダイレクトメール、家族や役所を名乗る電話が増えるおそれがあります。メールアドレスなら、そのサービスや宅配業者を装ったメール(フィッシング)。生年月日は、本人確認の質問やパスワードに使っていれば変えておきます。ログインIDとパスワードが漏れたなら、同じパスワードを使っているほかのサービスも全部変えます。カード番号なら、カード会社に連絡して番号を変えてもらいます。

漏れた情報ごとの、起きやすいことと打つ手
漏れた情報起きやすいこと打つ手
氏名・住所・電話番号勧誘の電話やDM、家族や役所を名乗る電話名乗られても一度切り、公式の番号にかけ直す
メールアドレスそのサービスや宅配業者を装ったメールメールのリンクは押さず、公式サイトから入る
生年月日本人確認の質問に答えられてしまうパスワードや暗証番号に使っていれば変える
ログインID・パスワード同じパスワードのほかのサービスへの不正ログイン使い回している所を全部変える
カード番号不正な利用カード会社に連絡し、番号を変える

会社に対してできることも知っておきます。自分のどの情報を持っているかを示すよう求めること(開示請求)と、漏えいのように本人の権利が害されるおそれがあるときに、使うのをやめる・消すよう求めること(利用停止・消去の請求)です。もう使わないサービスなら、退会と同時に消去を求めておくと、次に漏れる元が一つ減ります。求めるときは、会社の問い合わせ窓口に、何を求めるかをメールや書面で伝えます。本人確認の書類を求められることがありますが、その送り先が公式サイトに載っている窓口かどうかを確かめてから送ります。

気をつけたいのは、漏えいのあとに来る「消してあげます」という話です。個人情報保護委員会は、委員会から委託を受けたなどと名乗り、個人情報の削除を持ちかける不審な電話について注意を呼びかけています。電話で突然「あなたの情報を消せます」と言ってくる相手には、名前や番号を聞いても答えず、いったん切って、公式サイトの番号に自分からかけ直します。一度外に出た情報を、お金を払えば全部回収できる、という話も、そのまま信じないでください。

探偵の仕事との関わりも書いておきます。私は2002年から探偵業を営んでいて、今年で24年目です。所在調査の相談で「名簿業者のデータで探せないか」と聞かれることがありますが、出どころの分からない名簿は使いません。個人情報保護法は、うそや不正な手段で個人情報を取ることを禁じていて、探偵業法も、調査で知った秘密を守ることや、調査の資料をきちんと扱うことを決めています。漏れた情報が名簿になって売られ、勧誘や詐欺に使われる流れがあるからこそ、調べる側も、入口の情報を選ぶ必要があります。

実際にお金の被害が出たときは、まず警察と、カード会社や銀行に連絡します。漏えいそのものについて会社に損害賠償を求めることも考えられますが、被害の中身で話が変わるので、弁護士に相談します。会社から届くお詫びの品などは、会社ごとの対応で、法律で決まったものではありません。

この人がしたことです。公式サイトでお詫びが本物だと確かめたうえで、そのサイトのパスワードを変え、同じパスワードを使っていた3つのサービスも変えました。サイトは退会し、持っている個人データを消すよう求めました。家族には、自分の名前を出してお金を求める電話が来たら、一度切って本人にかけ直すよう伝えました。かかった費用は0円、時間は1時間ほどでした。

家族への伝え方にも、ひと工夫が要ります。漏れた情報が住所と電話番号だと、本人ではなく家族に電話が来ることがあります。「息子さんの件で」「お父さまの登録のことで」と、漏れた名前や登録番号を持ち出して信用させるやり方です。相手が本物の情報を知っていても、それは本物の相手だという証拠にはなりません。家族の間で「お金や個人情報の話の電話は、一度切って、本人の番号にかけ直す」と決めておくと、知らない名前の電話に慌てずに済みます。

記録も残しておきます。届いたお知らせのメールや手紙、不審な電話の日時と番号、名乗った名前をメモしておくと、あとで警察や会社に相談するときに話が早く進みます。探偵の仕事でも、相談の最初に聞くのは、いつ・誰から・何を言われたか、です。記録は、被害が出てからでは集めにくいものです。お知らせのメールは、読み終えても消さずに残しておきます。

漏えいのお知らせは、「もう取り返しがつかない」という知らせではなく、「これから来るものに備えて」という知らせです。本物かを公式サイトで確かめる。何が漏れたかで手を打つ。消してあげるという話には乗らない。この三つで、知らせのあとに来る被害を防ぎやすくなります。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-22

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-22 確認)。

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