作品の仕組み 2026-09-27
KOTODAMAの仕組み ― 習った課までの言葉だけで歌い、文法が増えるたびに物語の世界を広げる
KOTODAMA(言霊)は、日本語の教科書『みんなの日本語』の課の順に作った、日本語を学ぶ人のためのアルバムです。各曲は対応する課までの語彙だけで書き、動詞・て形・普通形といった文法が「解禁」されるたびに、アキとツムギの物語の世界が広がります。漢字は使わず、一つの音符に一つのかな。語彙の照合の方法、例外の扱い、千単文で1,570語を唱える仕組み、AIと人の分担までを書きます。
この記事の位置: AIが作り、コードが検分する → 送らない(端末の中で完結する) → 数字と実寸 → [教材の設計]
KOTODAMAのTrack 06「ねこが います」は、雨の午後、部屋の中の物の位置を歌う曲です。最後の一行は「(あめが やみます…は、まだ ならいません。)」。雨がやむ場面で終わりたかったのですが、この曲は第10〜11課までの言葉で書くと決めていて、「やみます」はその範囲にありません。そこで、歌の中の人物に「まだ習っていない」と言わせて、猫が机の上にいる、という習った言葉だけの一行で終えました。KOTODAMAの仕組みは、この一行にほぼ全部入っています。
KOTODAMA(言霊)は、日本語を学ぶ人のためのアルバムです。教科書『みんなの日本語』の初級I(第1〜25課)をDisc 1、初級II(第26〜50課)をDisc 2にあて、それぞれ12曲と、課の語彙を唱える「千単文」2本でできています。アメリカから来た少年アキに、少女ツムギが言葉を一つずつ教える物語で、Disc 1は2026年9月14日から「教科書レコード」の名前で音楽配信を始めました。
Disc 2では、アキが留学生として本物の日本に戻り、ツムギを探します。見つからないまま季節が進み、Track 11で、彼女は自分が話す言葉のすべての中にいる、と気づく。二枚を通して、言葉を教わる側だったアキが、最後には言葉を渡す側に回る、という一本の物語にしています。
一つ目の決まりは、各曲を、対応する課までの語彙だけで書くことです。Track 06なら第11課まで、Track 10なら第19課まで。書いた歌詞は、課ごとの語彙リスト(第2版に準拠)と一語ずつ照らし合わせ、範囲の外の言葉があれば書き直します。各曲のページには、その曲で初めて出る言葉を色分けした「ANCHOR WORDS」の一覧を置いています。学ぶ人が、今の自分に分かる言葉だけで一曲を聞き通せることが、この決まりの目的です。
例外は二種類だけにしています。一つは、全曲に共通して使う「物語の言葉」四つ、ことば・ちから・ひかり・ことだま。サビで毎回繰り返す言葉で、物語の芯なので、課の範囲の外でも使うと決めました。もう一つは、どうしても要る言葉の先取りで、Track 11の「うまれます」(第22課)のように、先取りであることを一覧に明記します。例外を黙って混ぜないことが、照合の意味を保つ条件です。
二つ目の決まりは、文法の「解禁」です。Track 01と02は動詞を使いません。「はじめまして」「これは なんですか」の世界には、まだ動作がありません。Track 03で「ます」の形が解禁され、起きる・行く・帰るが言えるようになる。Track 07で「ほしい」、Track 08で「て形」、Track 09で「ない形」、Track 10で辞書形と「た形」、Track 11で普通形、Track 12で「たら」。文法が一つ増えるたびに、白い世界に物が現れ、時間が動き、二人の会話がくだけていきます。Disc 2では、受身・使役・尊敬語・謙譲語が同じように解禁され、最後の曲でアキは新しく来た学習者に、謙譲語で「はじめまして」を言います。
左から右へ上がる階段。Track 01〜02は動詞なしの白い世界、Track 03で「ます」の形、Track 07で「ほしい」、Track 08で「て形」、Track 09で「ない形」、Track 10で辞書形・た形、Track 11で普通形、Track 12で「たら」が解禁される。文法が増えるたびに、アキとツムギの世界が広がる。
各曲は、対応する課までの語彙だけで書いています。例外は物語の言葉4語と、明記した先取りだけです。
三つ目は、表記と音です。歌詞に漢字は使わず、ひらがなとカタカナで書き、一つの音符に一つのかな(一拍)をあてます。初級の最初の段階では、かなは読めても漢字はまだ読めない人が多い。歌を聞きながら歌詞を目で追ったとき、音の数と文字の数が一致していれば、どこを歌っているかを見失いません。各曲のページでは、日本語の歌詞、ローマ字、英訳を三段に並べ、かなが読める人にはローマ字を隠して読むことを勧めています。
曲ごとに音楽の種類も変えています。Track 01はやわらかいJポップ、雨の午後のTrack 06はlo-fiのチルホップ、Disc 2のTrack 01は晴れやかなピアノポップ。課の文法に合う場面を先に決め、その場面に合う音を選ぶ順番です。同じ文型の繰り返しでも、場面と音が変われば、聞き飽きずに何度も聞けます。
各曲のページには、文型ごとの説明(GRAMMAR ANCHOR)と、教科書との対応表も置きました。対応表には、その課の会話の題名と、教科書の第2版と第3版それぞれのページ範囲を、目次から実際に数えて書いています。ほかの教科書(GENKIや「まるごと」)との対応は、照らし合わせが済むまで「照合後に記載」としていて、確かめていない対応は書きません。
千単文は、課の語彙を物語の一文と唱えで並べる曲です。Disc 1は第1〜10課の371語と第11〜25課の351語、Disc 2は第26〜37課の470語と第38〜50課の378語。合わせて1,570語を、課の順に、一語も抜かさずに唱えます。12曲の歌が「文法を場面で覚える」ためのものなら、千単文は「課の語彙を一度に通す」ためのもので、復習の最後に一本聞けば、その範囲の言葉を全部耳に通せる作りです。
| 曲 | 範囲 | 語数 |
|---|---|---|
| Disc 1 千単文 〜上〜 | 第1〜10課 | 371語 |
| Disc 1 千単文 〜下〜 | 第11〜25課 | 351語 |
| Disc 2 千単文Ⅱ 〜上〜 | 第26〜37課 | 470語 |
| Disc 2 千単文Ⅱ 〜下〜 | 第38〜50課 | 378語 |
| 合計 | 第1〜50課 | 1,570語 |
音源は、一曲ずつ出しています。Track 01は全編を聞け、Track 02から12は約80秒の試聴、千単文は一部の試聴です。音源が仕上がっていない曲も、歌詞と文法の説明は先に公開しています。Track 01は、英語・中国語・韓国語・ベトナム語など9言語の版も用意しました。ページの操作はどれもブラウザの中で完結し、学ぶ人の入力をサーバーに送ることはありません。
作り方の分担も書いておきます。物語、歌詞、文法の説明は、KuraLabが書いて直します。生成AIは、メロディと言い回しの下書きの補助に使っています。何を残し、どこを直し、何を出すかは人が決め、文法の説明はすべて教科書と照らし合わせます。語彙の範囲は、課ごとの語彙リストと一語ずつ突き合わせて確かめます。
教科書との線引きも決めています。KOTODAMAは、教科書の課の進み方に合わせた独自の歌と物語と説明で、教科書の本文を写したものではありません。教科書の名称と内容の権利は出版元にあり、KOTODAMAは出版元とは関係のない制作物であることを、全ページに書いています。英語版の兄弟作であるWORD WORLDも同じ考え方で作っていて、その設計はWORD WORLDの設計の記事に書きました。
習っていない言葉は、習うまで歌わない。決まりとしては窮屈ですが、学ぶ人にとっては、今の自分の言葉だけで一曲が成り立つ、ということでもあります。Track 06の雨は、やまないまま終わります。雨がやむのは、学ぶ人がその言葉を習ったあとです。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-27
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-27 確認)。
- スリーエーネットワーク(『みんなの日本語』出版元) ― KOTODAMAが課の進行を対応させている教科書の出版元。KOTODAMAは出版元とは無関係の独自制作
- 日本語能力試験 JLPT ― N5・N4のレベルの目安。KOTODAMAの各曲ページの「N5相当」などの対応の基準