作品の仕組み 2026-09-08

教科書準拠の英単語教材はなぜ続くのか ― WORD WORLDの設計

中学英語の全1,486語を、教科書の順に、物語と36曲で。WORD WORLDが「出る順」ではなく「教科書の順」を選んだ理由、曲の順番が文法の順番になっている仕組み、千字文の方式を借りた「千単文」、4社の教科書に対応させる考え方。設計の裏側を書きます。

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試作の第1曲を、中学一年の甥に聴かせました。四月の終わり、教科書はUNIT 2まで。歌詞は、be動詞と現在形だけで書いてあります。甥は、一回聴いて、二回目で口ずさみ、三回目で「これ、全部分かる」と言いました。その一週間前に、市販の単語帳の最初のページを見せたときは、「過去形って何」で止まっていました。同じ甥、同じ週。違いは、語と文法の順番だけです。この記事は、その順番を決めるまでの話です。

WORD WORLD(歌単・うたたん)は、中学英語の教科書に出てくる全1,486語を、物語と楽曲で一周する教材です。学年ごとに1枚、3枚組36曲。東京書籍のNEW HORIZON(2025年度版)に完全準拠し、主要4社の教科書に対応しています。ここでは、この教材がなぜこの形になったか、設計の判断を順に書きます。

最初の判断は「出る順をやめる」でした。市販の単語帳の多くは、入試や試験での出現頻度順に語を並べます。効率的に見えますが、構造的な欠陥があります。頻度順に並べると、例文の難易度が学習の進度とばらばらになり、中学1年の最初のページで過去形や未来形の例文を読まされる。読めない例文は覚えられず、覚えられないから続かない。単語帳が三日で止まる理由の多くは、意志ではなくこの構造にあります。

そこで、教科書の順に並べ直しました。Disc 1(中1)は教科書のpp.6-128を12曲で走破します。使う語彙は、その曲の時点までに教科書に出た語だけ。文法も同じで、未習の形は使いません。第1曲はbe動詞と現在形だけで書かれ、三人称単数の-sは第5曲まで、was/wereは第10曲まで登場しません。授業でそこまで習っていれば、その曲は必ず読めて、必ず歌えます。「読めるから、続く」が、この教材の中心にある考え方です。

「出る順」と「教科書の順」の違い
出る順の単語帳WORD WORLD(教科書の順)
語の並び試験での出現頻度順教科書に出てくる順
例文の文法進度と無関係(中1で過去形が出る)その時点までに習った文法だけ
語彙の範囲教科書外の語も含む教科書3冊の実数1,486語のみ
続く仕組み意志に頼る習ったところまでで必ず読める・歌える

曲の順番は、そのまま文法の順番でもあります。12曲=12の文法単元。曲ごとに一つの文法を主役にして、その文法が自然に何度も出てくる歌詞にします。歌詞は物語で、主人公カイ、しゃべる鳥のMr.バード、ブログを書き続ける少女ミナが、名前を持たない演者から言葉を取り戻す旅をします。単語を覚えるために物語を付けたのではなく、次の曲を聴きたくなる流れの中に単語を置く、という順番で作りました。全体の背骨になる固定サビは「Words are power. Words are light.」です。

語数の1,486は、盛った数字ではありません。NEW HORIZONの3冊に実際に掲載されている語を数えた実数です。学年ごとには中1が594語、中2が485語、中3が419語で、学年をまたいで重なる語を除いた合計が1,486語になります。使うから載せる、使わないから載せない。教材の語数は多いほど良さそうに見えますが、教科書にない語を足すと「習ったところまでで読める」が崩れるので、足していません。

学年ごとの語数(NEW HORIZON 3冊の実数)
学年別中1 594語 / 中2 485語 / 中3 419語

学年別の合計は1,498語。学年をまたいで重なる語を除くと1,486語。

4社対応の考え方は単純です。学習指導要領が同じなら、教科書会社が違っても、同じ時期に同じ文法を学びます。三人称単数現在形なら、NEW HORIZONではUNIT 5、光村図書のHere We Go!ではUnit 6、開隆堂のSUNSHINEではPROGRAM 5、三省堂のNEW CROWNではLesson 5。どれも9月前後です。全36曲に、各社の対応単元を明記しました。NEW HORIZONとHere We Go!はページ数まで、SUNSHINEとNEW CROWNは単元で対応しています。自分の教科書のどこに当たる曲かが、曲ごとに分かります。

各ディスクには「千単文(せんたんぶん)」という曲を一つ足しています。中国の千字文は、重複しない千の漢字だけで一篇の詩を編んだものです。その方式を英語でやり、その学年の全語彙を一曲に通しました。曲を一つずつ読む日と、まとめて回す日では、同じ言葉でも残り方が違う。物語の曲と往復するための曲です。

公開の仕方にも判断があります。各曲のページには、英語の歌詞、日本語対訳、その曲の文法解説、教科書の対応、音源を置いています。制作中のメモや音楽生成用の指示は公開版に含めません。学ぶ人が読む内容と、聴くための操作だけを残しています。

2026年9月11日から、Disc 1(中1)の12曲は「教科書レコード」名義のアルバム『WORD WORLD 中学1年』として、主要な音楽配信サービスでも配信を始めました。サイトで歌詞と文法を読み、配信で繰り返し聴く。その二つが揃って、この教材は一周できます。

設計の途中の数字を書きます。最初に、NEW HORIZONの3冊を、ページ順に全部の語を書き出しました。中1が594語、中2が485語、中3が419語。重なりを除いて1,486語。この作業に、三週間。次に、各語が「初めて出るページ」を記録し、12曲の区切りをページで決めました。Disc 1なら、第1曲がpp.6-16、第2曲がpp.17-28、という具合に、教科書の進度で三月まで割る。曲ごとに使える語は、その曲の区切りまでに出た語の累積で、第1曲は約60語、第6曲で約300語、第12曲で594語全部。

歌詞を書くときの制約も、数字で書きます。第1曲の60語で、物語の導入と、固定サビ「Words are power. Words are light.」を成立させる。powerとlightは、教科書のpp.6-16に出ています。出ていなければ、サビは別の語で作っていました。第5曲まで三人称単数の-sが使えないので、主人公カイの行動は、第4曲までは「I」と「you」と「we」だけで進みます。Mr.バードが「He says」と言えるのは、第5曲から。物語の展開を、文法の解禁の順に合わせる。単語帳ではなく、教材と物語の両方の制約で、36曲を書きました。

公開後の反応も一つ。Disc 1を公開して二か月で、「歌詞に知らない単語が出てきた」という問い合わせが、一件だけありました。調べると、その語は教科書の脚注(読み物の欄外)にある語で、本文には出ていない。「教科書に出た語」の定義を、本文と脚注のどちらまで含めるかを決めていなかった。以後、脚注の語は使わない、と決めて、該当する一曲の歌詞を一語だけ差し替えました。1,486語の教材で、二か月で一件。それが、「習ったところまでで読める」の精度です。

教材は、作った側が「良い」と思っても、使う側が続かなければ意味がありません。WORD WORLDの設計は、続かない原因を「意志」ではなく「構造」に求め、構造のほうを直した結果です。教科書の順に、教科書の言葉だけで、歌にする。それだけのことを、1,486語ぶん、36曲ぶん、やりました。

甥の「これ、全部分かる」は、第1曲の60語で成立しています。60語で歌が作れるか、ではなく、60語しか使わない、と決めたから作れた歌です。「続かない原因を意志ではなく構造に求め、構造のほうを直した」と本文の最後に書きました。直した構造の中身は、語を数えた三週間と、文法の解禁の順に物語を合わせた36曲です。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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