探偵・調査 2026-10-25
不貞の証拠としてのLINE ― 画面の残し方、それだけでは足りない理由、やってはいけない集め方
配偶者のスマホに届いたLINEは、不貞の証拠の一つになります。ただ、慰謝料や離婚で問われるのは肉体関係があったかどうかで、「会いたい」「好き」だけでは足りないことが多い。画面は別のスマホで端末ごと撮り、相手の名前と日付が写るように前後を続けて残す。足りない部分は、行動の記録で補います。相手のIDとパスワードで別の端末からログインするのは、夫婦でも不正アクセス禁止法違反(3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)です。2002年から探偵業を営む立場で、残し方と、やってはいけない線を書きます。
この記事の位置: 依頼する前に知っておくこと → 所在を調べる → [証拠を集める]
「夫のスマホの画面に、『昨日は楽しかったね』という通知が出ていたんです。これを撮っておけば、証拠になりますか」。40代の女性からの相談です。私は2002年から探偵業を営んでいて、今年で24年目になります。LINEの画面が証拠になるか、という質問は、これまで何度も受けてきました。答えは「証拠の一つにはなる。けれど、それだけで足りるとは限らない」です。
まず、何を証明したいのかを確かめます。離婚の原因になる「不貞な行為」(民法770条1項1号)や、浮気相手への慰謝料で問われるのは、配偶者以外の人と肉体関係があったかどうかです。食事に行った、親しげなやりとりをしている、というだけでは、原則として不貞にはなりません。
LINEの文面は、その「肉体関係」をどこまで推し量れるかで、強さが変わります。「会いたい」「好き」は、親密な関係を示しますが、肉体関係までは推し量りにくい。一方、「昨日のホテル」「泊まってくれてありがとう」のように、一緒に泊まったことが分かる具体的な言葉があれば、ぐっと強くなります。日付と場所が分かる文面は、あとで行動の記録と突き合わせられるので、さらに役に立ちます。
残し方には、こつがあります。一つ目、スクリーンショットだけでなく、別のスマホやカメラで、画面を端末ごと撮ること。誰のスマホに表示されたものかが写り、編集を疑われにくくなります。二つ目、トーク相手の名前とアイコン、日付の見出しが写るように、前後の流れを続けて撮ること。一部分だけ切り取ると、「冗談だった」「前後の文脈が違う」と言われます。三つ目、撮った日時と、そのときの状況をメモに残すこと。四つ目、急ぐこと。メッセージは相手がいつでも消せます。
撮ったあとの保管にも気をつけてください。スマホで撮った写真は、設定によっては自動でクラウドに保存され、家族で共有しているアカウントだと相手の端末にも表示されることがあります。証拠の写真は、自分だけが使うフォルダや別の端末に移し、できれば印刷して、撮った日付を書き添えておくと安心です。相手に気づかれて話し合いが始まる前に、証拠が消えたり、こちらの動きが知られたりするのを防げます。
相手が気づいて、メッセージの送信を取り消したり、トークを消したりすることもあります。送信を取り消すと、画面には取り消したという表示が残ることがありますが、中身は戻りません。だからこそ、気づいた日に残すことが大事です。文面そのものだけでなく、やりとりの回数や時間帯(毎晩深夜に何十通も、など)も、親密さを示す材料になります。日付の見出しが写るように撮っておけば、その頻度もあとから数えられます。
ここからは、やってはいけない集め方です。よくある勘違いは「夫婦だから、相手のスマホを見ても許される」というものです。相手のIDとパスワードを使って、自分のパソコンや別のスマホからLINEやクラウドにログインする。これは不正アクセス禁止法が禁じる「不正アクセス行為」の典型で、夫婦でも例外はありません。違反すると3年以下の拘禁刑(刑務所に入る刑)または100万円以下の罰金です(11条、2026年10月時点)。
相手のスマホに、知らないうちに監視用のアプリを入れるのも、刑事事件になり得ます。置いてあるスマホのロックを勝手に解除してのぞく行為は、ネットを通じたログインではないので、この法律に直接は当たらないことが多い。それでも、プライバシーの侵害として逆に慰謝料を求められたり、証拠の集め方そのものが争いになったりします。民事の裁判では、集め方に問題がある証拠も使われることが多いのですが、ひどく反社会的な方法で集めたものは証拠として退けられることがあります。
探偵に頼んだら、スマホの中を調べてもらえるか、とも聞かれます。できません。探偵が法律に沿ってできるのは、尾行や張り込みで、いつ、誰と、どこに入り、何時に出てきたかを記録することです。LINEが「何があったか」の手がかりなら、探偵の報告書は「実際にどう動いたか」の記録。二つがそろうと、肉体関係を推し量る力が大きく変わります。
左にLINEの画面(会いたい、昨日のホテル、金曜いつものところ)、右に探偵の報告書(ホテルに入った時刻と出た時刻)。二つを合わせると肉体関係を推し量る力が強くなる。下には、やってはいけない集め方として、相手のIDとパスワードで別の端末からログインすること(不正アクセス禁止法違反)を示す。
画面は別のスマホで端末ごと、相手の名前と日付が写るように前後を続けて撮ります。
LINE以外に、自分で集められる記録もあります。家族カードの利用明細、共有している車のカーナビの履歴、交通系ICカードの履歴などです。どれも、家計を共にしている範囲で目にするものに限ります。もう一つ強いのは、本人が認めた言葉です。話し合いの場で認めたら、日付を入れた書面にしてもらうか、会話を録音しておきます。
自分が参加している会話を録音することは、相手に断らなくても、一般に違法とはされていません。夫婦の話し合いの場で、夫が「一度だけ会った」「もう別れた」と言ったなら、その言葉自体が、関係があったことを示す材料になります。反対に、自分がいない場所の会話を録音する機材を、相手の車や部屋に仕掛けるのは、別の問題を生みます。隠しマイクの探し方の記事にも書いたとおり、仕掛けた側が責任を問われることがあります。
この相談の女性の場合です。女性は三か月分のLINEの画面を、別のスマホで端末ごと12枚撮っていました。その中に「金曜、いつものところで」という文面が何度も出てきます。そこで、調査を金曜の夜に絞って3回依頼してもらいました。闇雲に二週間追いかけるより、日数も費用も抑えられます。契約の前には、調査の内容と料金を書いた書面を渡しました(探偵業法8条)。2回目の金曜に、夫と相手の女性がホテルに入り、翌朝に出てくるところを記録できました。LINEの画面12枚と報告書を持って、女性は弁護士に相談に行きました。
急ぐ理由はもう一つあります。浮気相手に慰謝料を求める権利は、不貞の事実と相手が誰かを知った時から3年で、時効によって消えます(民法724条)。LINEで相手の名前が分かった日が、時計が動き始める日になることがあります。証拠を集めながら、いつまでに動くかも決めておいてください。
LINEの画面は、入口です。それだけで決着をつけようとせず、日付と場所の手がかりとして使い、行動の記録で裏付ける。そして、相手のIDでログインするような集め方はしない。証拠を集める段階で法律を破ると、こちらが不利な立場に立つことになります。迷ったら、集める前に、弁護士か、探偵業の届出をしている調査業者に「この集め方で大丈夫か」と一度聞いてください。届出をしている業者かどうかは、事務所に掲示された届出証明書の番号で確かめられます。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-25
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-25 確認)。
- e-Gov法令検索「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」 ― 3条(不正アクセス行為の禁止)、11条(違反は3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。他人のIDとパスワードでのログインが典型
- e-Gov法令検索「民法」 ― 770条1項1号(離婚の原因としての「不貞な行為」)、724条(不法行為の損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から3年で時効)
- e-Gov法令検索「探偵業の業務の適正化に関する法律」 ― 8条(契約前と契約時の書面の交付)