作品の仕組み 2026-09-26

ふたりオリクジの仕組み ― 上の句はあなた、下の句はあの人。縁は名前と日付で決め、歌は止めない

ふたりの名前を入れると、上の句にひとり目、下の句にふたり目の名前の音が隠れた短歌と、「縁」の名前が返ってくる「ふたりオリクジ」。名前を句の頭に割り振る規則、名前の順番を入れ替えても同じ縁になる抽選、九つの縁の出る割合、AIの歌をコードが検分する条件。オリクジでは「整わなければ返さない」にした判断を、この作品では逆にした理由を書きます。

目次を見る →

この記事の位置: [AIが作り、コードが検分する] → 送らない(端末の中で完結する) → 数字と実寸 → 教材の設計

ふたりオリクジを作っていて、最後まで決められなかったのは、歌が整わなかったときに何を返すか、でした。先に作ったオリクジでは、AIの歌が検分に三回落ちたら、その回は歌を返さずにやり直しを促します。ふたりオリクジでは、それを逆にしました。どんなときも一首返す。コードのその箇所には、「引けないおみくじは論外」とコメントを書いています。この記事は、その判断に至るまでの仕組みの話です。

ふたりオリクジは、ふたりの名前を入れると、上の句(初句・二句・三句)の頭にひとり目の名前の音、下の句(四句・五句)の頭にふたり目の名前の音を置いた短歌を一首返す、みくじ形式の作品です。上の句と下の句を別の人が詠み継ぐ連歌の形を借りて、ふたりで一首になるようにしました。歌と一緒に、「良縁」「腐れ縁」などの縁の名前と、ふたりに向けた短い一言が出ます。恋人に限らず、親友、家族、推しと自分、誰の組み合わせでも使えます。

最初の工程は、名前を句の頭に割り振ることです。入力は、いまのところひらがなとカタカナだけです。漢字の名前は読みが一つに決まらず、読み違えた音で歌を詠むと、その人の名前ではなくなるからです。カタカナはひらがなに直し、小さい「ゃ・ゅ・ょ」などと「ん・っ・ー」は、前の音にくっつけて一つのかたまりにします。ひとり目は最初の三つのかたまり、ふたり目は最初の二つのかたまりまでを使い、句の頭に置くのは、かたまりの最初の一字です。「さくら」と「ゆうと」なら、上の句は「さ・く・ら」、下の句は「ゆ・う」。「ゆうと」の「と」は入りません。入力欄に「各2〜3音がきれい」と書いてあるのは、この割り振りのためです。名前が一音なら、残りの句は頭を決めずに詠みます。

上の句はひとり目、下の句はふたり目 ―「さくら」と「ゆうと」の割り振り
上の句はひとり目、下の句はふたり目 ―「さくら」と「ゆうと」の割り振り左にひとり目「さくら」、右にふたり目「ゆうと」。五つの句のうち、初句・二句・三句の頭に「さ・く・ら」、四句・五句の頭に「ゆ・う」を置く。音数は五・七・五・七・七。ふたり目は最初の二音までなので「と」は入らない。 ひとり目 さくら ふたり目 ゆうと ささ くく らら ゆゆ うう 5音5音 7音7音 5音5音 7音7音 7音7音 上の句=ひとり目上の句=ひとり目 下の句=ふたり目下の句=ふたり目 ふたり目は最初の二音まで。「ゆうと」の「と」は入らないふたり目は最初の二音まで。「ゆうと」の「と」は入らない

左にひとり目「さくら」、右にふたり目「ゆうと」。五つの句のうち、初句・二句・三句の頭に「さ・く・ら」、四句・五句の頭に「ゆ・う」を置く。音数は五・七・五・七・七。ふたり目は最初の二音までなので「と」は入らない。

小さい「ゃ・ゅ・ょ」と「ん・っ・ー」は前の音とひとかたまりにして数え、句の頭にはかたまりの最初の一字を置きます。

入力の制限も、同じ理由で決めています。名前の欄はそれぞれ6文字まで、英字の名前はいまは受け付けません。英字の名前を句の頭に置くには、カタカナに直す読みを決めなければならず、その読みを作品の側で決めてしまうと、本人の呼ばれ方と違う音で歌を詠むことになるからです。漢字も英字も、読みを本人に確かめる仕組みを足せるまでは、ひらがなとカタカナで入れてもらう形にしています。

二つ目の工程が、縁の抽選です。これは歌を頼む前に、利用者の端末の中で済ませます。日本時間の日付と、ふたりの名前を決まった順に並べ替えてつないだ文字列から一つの数を作り、その数を種にした乱数で一回だけ引きます。同じ日に同じふたりなら、何度押しても同じ縁が出ます。名前をどちらの欄に入れても、並べ替えてからつなぐので、縁は変わりません。「あなたから見た縁」と「あの人から見た縁」が違ったら、ふたりの縁と呼べないからです。日付が変われば、新しく引き直しになります。

縁は九つあり、出る割合を重みで決めています。大吉縁6%、良縁20%、睦縁16%、沼縁12%、凸凹縁14%、波縁10%、腐れ縁12%、遠縁9%、そして運命縁が0.1%。九つの合計は99.1%で、残りの0.9%は、どの縁にも当たらなかったときの受け皿として良縁に落ちるようにしています。だから良縁は、実際には20.9%で出ます。運命縁は、千回に一回です。

九つの縁が出る割合
九つの縁が出る割合良縁20.9%睦縁16%凸凹縁14%沼縁12%腐れ縁12%波縁10%遠縁9%大吉縁6%運命縁0.1% 千分の一

良縁 20.9%、睦縁 16%、凸凹縁 14%、沼縁 12%、腐れ縁 12%、波縁 10%、遠縁 9%、大吉縁 6%、運命縁 0.1%(千分の一)

良縁の20.9%は、重み20%に、どの縁にも当たらなかったときの受け皿0.9%を足した値です。日本時間の日付とふたりの名前(決まった順に並べ替えたもの)から作った数で一回だけ引くので、同じ日・同じふたりなら、名前の順番を入れ替えても同じ縁になります。

縁の名前ごとに、歌の調子の指示を持っています。沼縁は「抜けられないほど好きが深い、いい意味で」、腐れ縁は「呆れながらも続く、笑える親しみで」、遠縁は「いまは遠いが、糸は切れていない」。縁の名前は抽選で決まりますが、どの縁も相手を否定する歌にはしない、という線を、名前ごとの指示で引いています。遠縁を引いたふたりに、離れていく歌を渡さないためです。

三つ目の工程が、AIによる生成です。サーバーには、句の頭の音と縁の名前、それに保存の鍵にするためのふたりの名前(かなに直したもの)を送り、生成AIに一首を頼みます。名前そのものは歌の依頼には入れず、AIに渡すのは頭の音だけです。頼む内容は、五・七・五・七・七の現代口語の短歌で、各句にかな読みを添えること、拗音は前の音と合わせて一音、「っ・ん・ー」はそれぞれ一音と数えること、「絆」「運命」「幸せ」のような抽象的な言葉を直接使わないこと、名前の意味には触れないこと。歌のあとに、ふたりに向けた25字以内の一言を付けます。

四つ目が、コードによる検分です。返ってきた案を、コードが三つの点で確かめます。句が五つあるか。かな読みの音数が五・七・五・七・七か。各句の頭が、割り振った名前の音で始まっているか。音数は、各句一音までの字余りを認めています。外れた案は、どこが外れたかを「第二句が八音」「第四句は『ゆ』で始めて」のように具体的な言葉にして、次の依頼に添えて詠み直させます。これを最大四回まで繰り返します。

歌を待つあいだ、画面には「ふたつの筒を寄せています」「縁を数えています」「上の句を詠んでいます」「下の句を継いでいます」「音を数えています」の五つの言葉を、1.5秒ごとに入れ替えて出しています。最後の「音を数えています」は飾りではなく、裏で検分が句の音を数えている時間そのものです。詠み直しが重なった回ほど、この言葉が長く回ります。

四回で整わなかったときが、冒頭の判断です。四回の案のうち、句の頭の音がすべて合っていて、音数のずれの合計がいちばん小さい案を出します。それも無ければ、あらかじめ用意した一首を出します。折句の骨組みである頭の音は外さず、音数は少しゆるめる、という優先順位です。オリクジは自分の運を引く作品で、整わない歌を出すより出さないほうがいい。ふたりオリクジは、結果をXで相手に贈る作品で、贈ろうとした人を手ぶらで帰すほうが悪い。作品の使われ方が、判断を分けました。

五つ目が、再現です。検分を通った一首は、日付、ふたりの名前、縁の名前を鍵にしてデータベースに保存し、同じ日に同じ鍵で引かれたら、保存した一首を返します。次善の案や用意した一首は保存しません。整わなかった回は、次に引いたとき、あらためて詠み直しになります。

画面では、各句の頭の字に色を付けて、上の句と下の句のどこにふたりの名前が隠れているかを目で追えるようにしています。句が漢字で始まっていて、頭の字と名前の音が文字として一致しないときは、その漢字にふりがなとして頭の音を振ります。歌の下には「上の句 さ・く・ら / 下の句 ゆ・う」と、割り振った音を並べます。共有のボタンは、ふたりの名前、縁、歌を入れたXの下書きを開くだけで、あの人を@で呼ぶかどうかは、送る人が決めます。

AIが詠み、コードが検分し、人が基準を決める。オリクジの仕組みの記事で書いたこの型は、ふたりオリクジでも同じです。違うのは、型のどこを譲らないかです。頭の音は譲らない。音数は一音まで譲る。そして、歌を止めることは譲らない。九つの縁のどれを引いても、ふたりの手元には一首が残ります。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-26

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

あわせてどうぞ

解説記事一覧