土地・不動産 2026-10-19
建物図面と各階平面図の読み方 ― 床面積は壁の中心線で測る。登記の96平米と課税明細書の112平米が合わなかった家
法務局には、建物を登記したときの「建物図面」(敷地の中のどこに建っているか)と「各階平面図」(階ごとの形と床面積の計算式)が保管されていて、誰でも写しを取れます。縮尺、床面積の測り方(一戸建ては壁の中心線、マンションは壁の内側)、広告の面積と登記の面積がずれる理由、そして登記と固定資産税の床面積が合わないときに疑う未登記の増築。父の家を売る前に16.56平米の差を見つけた男性の数字で読み方を書きます。
この記事の位置: [まず読む:値段と書類の読み方] → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利
「登記簿の床面積と、固定資産税の明細書の床面積が、16平米も違うんです」。父から相続した家を売ろうとしている40代の男性が、二枚の紙を並べました。登記事項証明書の床面積は、1階52.17平米、2階43.89平米、合計96.06平米。固定資産税の課税明細書の家屋の欄は、112.62平米でした。不動産会社から「登記と実際が合っていないと、買う人の住宅ローンの審査で止まることがある」と言われ、理由を知りたいという相談でした。私は男性に、法務局でその家の建物図面と各階平面図を取ってもらいました。
建物図面と各階平面図は、建物を初めて登記するとき(表題登記)や、増築などで登記を直すとき(表題部の変更登記)に、申請と一緒に法務局へ出す図面です。法務局に保管されていて、地番と家屋番号が分かれば、誰でも写しを請求できます(手数料は1通数百円)。家を建てたときの設計図とは別の、登記のための図面です。古い建物では、図面が法務局に無いこともあります。
図面が無いときは、土地家屋調査士が現地で測り直して作ることになります。また、物置や車庫を母屋と一緒に登記している家では、図面に「附属建物」として符号(①、②など)が付いて描かれます。登記事項証明書の表題部の附属建物の欄と、図面の符号を突き合わせると、どの小屋が登記されているかが分かります。
建物図面は、敷地の中で建物がどこに建っているかを示す図です。縮尺は原則500分の1で、方位、敷地の地番と形、隣の土地の地番が書かれます(不動産登記規則82条)。敷地の中に建物の1階の形が描かれ、境界から建物までの距離が書き込まれていることが多いので、建物がどれだけ境界に寄っているかも分かります。境界の図面の読み方は、公図と地積測量図の記事に書いています。
各階平面図は、階ごとの形と床面積を示す図です。縮尺は原則250分の1で、各階の形、周りの長さ、床面積と、その計算の式(求積)が書かれます(83条)。この家の1階は「8.19×6.37=52.1703」、2階は「7.28×6.03=43.8984」でした。登記の床面積は平米の小数点以下2桁までで、それより下は切り捨てるので(115条)、1階52.17平米、2階43.89平米になります。
大事なのは、どこからどこまでを測るかです。一戸建てなどは、壁の厚みの真ん中の線(壁芯)で囲まれた面積で登記します。マンションの部屋(区分建物)は、壁の内側の線(内法)で囲まれた面積です(115条)。マンションの広告やパンフレットの面積は壁芯で書かれていることが多いので、登記の面積は広告より小さくなります。住宅ローン控除の床面積の条件(原則50平米以上)は、登記事項証明書の床面積で判断されるため、広告で50平米台の部屋が、登記では50平米を切っていることがあります。夫婦で家を買うときの名義と控除の話は、不動産の名義と住宅ローン控除の記事にあります。
私が見た例では、広告の専有面積が51.20平米の部屋が、登記では47.85平米でした。差の3.35平米は、壁の厚みの半分が部屋の周り一周ぶん抜けた分です。マンションを買う前に控除を当てにしているなら、広告ではなく、登記事項証明書か、新築なら売主に登記の予定面積を確かめます。
男性の家に戻ります。各階平面図に描かれていたのは、1988年に建てたときの形でした。図面のコピーとメジャーを持って家を外から一周し、外壁の長さを図面の数字と比べていくと、北側だけが図面より出っ張っていました。図面に無い部屋が一つあったのです。父が1999年に建て増した和室で、大きさは3.64メートル×4.55メートル。16.562平米で、切り捨てて16.56平米です。登記の96.06平米に足すと112.62平米。明細書の数字とぴったり合いました。市町村は家屋を現地で調べて課税するので、建て増した部屋にも固定資産税がかかっていて、登記だけが1988年のままだったのです。
左は1階の各階平面図の形。横8.19メートル、縦6.37メートルで52.17平米。北側に、図面に無い建て増しの和室3.64メートル×4.55メートル、16.56平米が点線で付いている。登記の合計96.06平米に16.56平米を足すと、課税明細書の112.62平米になる。右は床面積の測り方。一戸建ては壁の厚みの真ん中の線(壁芯)、マンションは壁の内側の線(内法)で囲む。
床面積は1平米の100分の1未満を切り捨てます(不動産登記規則115条、2026年10月時点)。図の大きさは実際の比率に合わせていますが、縮尺は図面そのものとは違います。
建て増しで床面積が変わったときは、建物の表題部の変更登記をします。不動産登記法では、変わった日から1か月以内に申請することになっていて、怠ると10万円以下の過料の決まりもあります(51条、164条)。実際には、何十年もそのままの家が少なくありません。建物が亡くなった人の名義のままでも、相続人がこの変更登記を申請できます(30条)。測量と図面の作成、申請の代理は、土地家屋調査士の仕事です。表題部の登記が丸ごと無い家については、登記されていない家の記事に書いています。
お金の話です。男性は土地家屋調査士に見積を頼み、和室の測量、新しい各階平面図と建物図面の作成、変更登記の申請までで税込9万9,000円でした。建物の表示の登記には、登録免許税はかかりません。そのあと、自分で相続登記を申請しました。相続登記の登録免許税は、固定資産税の評価額の0.4%で、土地(評価額1,650万円)が6万6,000円、建物(同420万円)が1万6,800円。土地家屋調査士の費用と合わせて18万1,800円です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 表題部の変更登記(土地家屋調査士) | 測量・図面作成・申請 | 9万9,000円 |
| 表示の登記の登録免許税 | かからない | 0円 |
| 相続登記の登録免許税(土地) | 評価額1,650万円×0.4% | 6万6,000円 |
| 相続登記の登録免許税(建物) | 評価額420万円×0.4% | 1万6,800円 |
| 合計 | 18万1,800円 |
順番も大事です。相続登記を先にして、あとから表題部の変更をしても登記はできますが、売り出す前に両方を済ませておくと、買う人に渡す書類が一度でそろいます。男性は、表題部の変更に3週間、相続登記に3週間かかり、相談から6週間で売り出しにこぎつけました。買う人が住宅ローンを使うと、金融機関は建物に抵当権を設定するので、登記の床面積と実際の建物が合っているかを確かめることがふつうです。登記と実際が合っているので、重要事項説明で床面積の違いを説明する手間もありませんでした。
図面を取るときのこつも書いておきます。請求には地番と家屋番号が要ります。請求書では、図面の種類の欄で「建物図面・各階平面図」を選びます。家屋番号は登記事項証明書の表題部に書かれていて、多くの場合、地番と同じか、地番に枝番を付けた番号です。法務局の窓口のほか、郵送やオンラインでも請求できます。登記事項証明書の読み方は、別の記事に書いています。
「紙が2枚あるのに、どちらも本当だったんですね」。男性はそう言いました。登記は建てたときの形、課税明細書は今の形。数字が合わないときは、どちらかが間違っているのではなく、その間に何かが起きています。各階平面図の計算式は、その「何か」を探すいちばん確かな手がかりです。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-19
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-19 確認)。
- e-Gov法令検索「不動産登記規則」 ― 82条(建物図面:敷地と1階の位置・形状、方位、地番、縮尺は原則500分の1)、83条(各階平面図:各階の形状、周囲の長さ、床面積と求積方法、縮尺は原則250分の1)、115条(床面積は壁その他の区画の中心線、区分建物は内側線で囲まれた水平投影面積。1平米の100分の1未満は切り捨て)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」 ― 30条(相続人による表示に関する登記の申請)、51条(建物の表題部の変更の登記は、変更があった日から1か月以内に申請)、164条(申請を怠ったときは10万円以下の過料)
- 国税庁 タックスアンサー No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 ― 床面積は登記事項証明書に表示されている床面積で判断し、マンションは専有部分の床面積で判断する