土地・不動産 2026-10-15

登記されていない家 ― 固定資産税は来るのに登記簿が無い。相続や売却の前にする表題登記と保存登記の順番

現金で建てた家や古い離れは、登記されないまま何十年も使われていることがあります。固定資産税は登記と関係なくかかるので、税金を払っていても登記があるとは限りません。課税明細書の家屋番号の欄で見分け、表題登記(代理は土地家屋調査士、登録免許税0円)→所有権保存登記(評価額の0.4%)の順に入れます。相続なら取得した相続人の名前で直接登記できます。評価額220万円の家と1,500万円の土地で、登録免許税の合計6万8,800円を示します。

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「固定資産税は毎年払っているのに、法務局で登記簿を取ろうとしたら『その建物は登記されていません』と言われました」。亡くなった父の家を売ろうとしていた50代の女性からの相談です。土地の登記簿はあり、名義は父。ところが、その上に建っている木造2階建ての家は、どこにも登記がありませんでした。買主は住宅ローンを使う予定で、銀行からは「建物の登記がないと抵当権が付けられない」と言われていました。

登記されていない家は、珍しくありません。現金で建てた家、昔の離れや増築、親が建てて誰も手続きをしなかった家。住宅ローンを組むときは銀行が登記を求めるので登記されますが、借入がなければ、登記しないまま何十年も住めてしまいます。一方、固定資産税は、市区町村が建物を調べて課税台帳に載せるので、登記とは関係なくかかります。税金を払っていることは、登記があることの証明になりません。

見分け方は、固定資産税の課税明細書です。登記されている建物には家屋番号が載りますが、登記されていない建物は、家屋番号の欄が空いていたり「未登記」と書かれていたりします(表示は市区町村によって違います)。気になったら、法務局で土地の地番を伝えて、その上の建物の登記を探してもらいます。

法律の決まりも確かめておきます。不動産登記法47条1項は、新築した建物や、表題登記のない建物の所有権を取得した人は、取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならない、としています。怠ると10万円以下の過料の対象です(164条)。相続で未登記の家を引き継いだ人も、条文の上ではこの義務の対象になります。そして過料より現実に効いてくるのは、売る、貸す、担保に入れる場面で、結局は登記が要ることです。

登記には二つの段階があります。一段目が「表題登記」で、登記簿の表題部(建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積)を作ります。建物を測って建物図面と各階平面図を作る必要があり、この申請の代理は土地家屋調査士の仕事です。表題登記には登録免許税がかかりません。二段目が「所有権保存登記」で、登記簿の甲区に最初の所有者を記録します。こちらは本人でも申請でき、代理は司法書士の仕事です。登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です(国税庁の税額表で、建物の所有権の保存は1,000分の4)。

未登記の家は「表題登記」→「所有権保存登記」の順に入れる
未登記の家は「表題登記」→「所有権保存登記」の順に入れる課税明細書の家屋番号が空欄なら未登記の可能性がある。一段目の表題登記で表題部を作る(建物を測って図面を作る。代理は土地家屋調査士、登録免許税はかからない)。二段目の所有権保存登記で甲区に所有者を記録する(本人申請もでき、代理は司法書士、評価額の0.4%)。相続なら取得した相続人の名前で直接この順に入れられ、移転登記が要らない。この家は220万円×0.4%で8,800円。 課税明細書 家屋番号が空欄家屋番号が空欄 ① 表題登記① 表題登記 表題部を作る表題部を作る 建物を測る・図面建物を測る・図面 代理:土地家屋調査士代理:土地家屋調査士 登録免許税 0円登録免許税 0円 ② 所有権保存登記② 所有権保存登記 甲区に所有者を記録甲区に所有者を記録 本人申請もできる本人申請もできる 代理:司法書士代理:司法書士 評価額×0.4%評価額×0.4% 相続なら、取得した相続人の名前で直接①→②(移転登記が要らない)相続なら、取得した相続人の名前で直接①→②(移転登記が要らない) この家:220万円×0.4%=8,800円この家:220万円×0.4%=8,800円

課税明細書の家屋番号が空欄なら未登記の可能性がある。一段目の表題登記で表題部を作る(建物を測って図面を作る。代理は土地家屋調査士、登録免許税はかからない)。二段目の所有権保存登記で甲区に所有者を記録する(本人申請もでき、代理は司法書士、評価額の0.4%)。相続なら取得した相続人の名前で直接この順に入れられ、移転登記が要らない。この家は220万円×0.4%で8,800円。

表題登記の申請義務は取得から1か月以内(不動産登記法47条1項、2026年10月時点)。

表題登記で一番手間がかかるのは、「この家の所有者は誰か」を示す書類です。建築確認済証や検査済証、工事の請負契約書と引渡証明書、固定資産税の納税証明書などを組み合わせて出します。古い家で書類が残っていないときは、建てた経緯を書いた上申書と、課税台帳の記録で補います。どの組み合わせで足りるかは法務局によって運用が少し違うので、土地家屋調査士が事前に法務局と相談するのが普通です。

相続の場合は、順番に一つ工夫ができます。亡くなった父の名前で表題登記をしてから相続の登記をする方法と、遺産分割で家を取得した相続人の名前で直接、表題登記をする方法があります。後者なら、表題登記と保存登記が一回ずつで済み、相続による移転の登記が要りません。遺産分割協議書には、登記がないので家屋番号は書けません。「未登記」と書き、所在地・種類・構造・床面積を課税台帳の記載どおりに書いて、どの建物かを特定します。

増築した部分だけが未登記、という家もあります。登記簿の床面積が80平方メートルなのに、課税明細書は100平方メートル、という場合です。このときは表題登記ではなく、表題部の変更登記(床面積の変更)をします。これも変更から1か月以内の申請義務があります(51条)。売るときに買主側の確認で見つかることが多いので、明細書と登記簿の床面積は一度見比べてください。

敷地の中の建物を全部つかむには、市区町村で「名寄帳」(その人が市区町村内に持っている不動産の一覧)を取るのが確実な方法です。母屋は登記されていても、物置や車庫、離れだけが未登記、ということがあります。この家でも、名寄帳に母屋とは別に「木造平家建 物置 12平方メートル」が載っていました。物置は母屋の附属建物として、同じ表題登記の中に入れました。

登記の前に、固定資産税の宛名も直しておきます。未登記の家の固定資産税は、市区町村の課税台帳に載っている所有者に課税されます。所有者が亡くなったら、相続人の中で誰が新しい所有者かを市区町村に届けます。多くの市区町村には「未登記家屋の所有者変更の届出」の様式があり、遺産分割協議書の写しを付けて出します。この届出は登記の代わりにはなりませんが、届けないと、翌年も亡くなった人の宛名で納税通知書が届き、相続人の代表者が払い続けることになります。

反対に、壊す予定の未登記の家なら、登記をしてから壊す必要はありません。登記簿がない建物には、滅失登記(壊したことの登記)も要らないからです。その代わり、市区町村に「家屋滅失の届出」をして、翌年度から固定資産税がかからないようにします。家を壊すと、土地の固定資産税の軽減(住宅用地の特例)も外れて土地の税金が上がるので、壊す時期は売る予定と合わせて考えます。

この家の数字はこうでした。家の固定資産税評価額は220万円。遺産分割で家と土地は女性が取得し、女性の名前で直接、表題登記をしました。保存登記の登録免許税は220万円×0.4%で8,800円。土地は評価額1,500万円で、相続登記の登録免許税は1,500万円×0.4%で6万円。登録免許税の合計は6万8,800円です。これとは別に、土地家屋調査士と司法書士の報酬がかかります。報酬は建物の大きさや書類の残り具合で変わるので、二つの事務所から見積を取りました。

この家と土地の登録免許税(専門家の報酬は別)
登記課税の元税率登録免許税
建物の表題登記―かからない0円
建物の所有権保存登記評価額220万円0.4%8,800円
土地の相続登記評価額1,500万円0.4%6万円
合計6万8,800円

時間は、調査士が現地で建物を測ってから表題登記の完了まで約3週間、保存登記と土地の相続登記にさらに約2週間でした。売買の決済日は、最初の予定から1か月遅らせてもらいました。新築の住宅なら保存登記の登録免許税が0.15%に下がる軽減がありますが、これは新築から1年以内の家向けで、築40年の家には使えません。

女性は決済のあと、「父は、登記しなくても困らなかったんでしょうね」と言いました。その通りで、住み続ける間は困りません。困るのは、売る、貸す、相続する、の場面です。親の家の課税明細書に家屋番号が載っているか。それを見るだけで、手続きの順番が一つ分かります。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-15

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-15 確認)。

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