探偵・調査 2026-10-11
家族が行方不明になったら ― 行方不明者届の出し方、警察が「探す」範囲、探偵の所在調査に頼む前に
家族が帰ってこないとき、最初にするのは警察への行方不明者届です。届けられる人、届ける警察署、持って行く写真や情報は規則で決まっています。警察が積極的に探すのは、事件・事故・自殺のおそれがある「特異行方不明者」で、それ以外は日常の警察活動の中での発見と照会が中心です。見つかっても、本人の意思で居場所が伝えられないことがあります。探偵の所在調査の決まりと費用の例、長く見つからないときの相続の手続きまで、2002年から探偵業を営んできた立場で書きます。
この記事の位置: 依頼する前に知っておくこと → [所在を調べる] → 証拠を集める
「息子が仕事を辞めて、置き手紙を残していなくなりました。警察は事件じゃないと探してくれないと聞きました。探偵さんに頼むしかないんでしょうか」。60代の母親と、付き添いの娘さんの相談でした。息子さんは30代、一人暮らし。手紙には「しばらく一人で考えたい。探さないでほしい」とありました。私は2002年から探偵業を営んでいて、今年で24年目です。この記事は、この母親に最初に伝えた順番、つまり警察に届けること、警察ができること、探偵ができることを、順に書いたものです。
最初にするのは、警察への「行方不明者届」です。昔は「捜索願」と呼ばれていました。手続きは、国家公安委員会が定めた「行方不明者発見活動に関する規則」に書いてあります。届け先は、いなくなった時に本人が住んでいた場所を管轄する警察署です(6条1項)。遠くに住んでいるなどの事情があれば、いなくなった場所や、届ける人の住所の警察署でも受け付けてもらえます(6条2項)。届けられる人も決まっていて、親権者や後見人、配偶者(事実婚を含む)その他の親族、本人を世話している人、福祉事務所の職員、それに同居人や雇い主など、本人と生活の上で深い関係のある人です。友人というだけでは、届出人になれないことがあります。
警察署では、本人の氏名・住所・年齢・身体の特徴、いなくなった日時と場所と状況、思い当たる原因を聞かれ、写真などの資料を求められます(7条)。持って行くものを書いておきます。顔がはっきり写った最近の写真(できれば全身の写真も)、いなくなった日の服装、携帯電話の番号、車やバイクのナンバー、持病と飲んでいる薬、置き手紙があればその実物か写し。「いつもと違ったこと」は、小さなことでも伝えます。
ここからが、相談者が一番誤解しているところです。規則は、行方不明者を二つに分けています。一つは「特異行方不明者」で、犯罪に巻き込まれているおそれ、水の事故や交通事故のおそれ、遺書があるなど自殺のおそれ、病人・高齢者・子どもで自分の身を守れないおそれ、などがある人です(2条2項)。警察署長は、この人たちについては情報を集め、探索や捜査をし、立ち回りそうな先の警察署に手配をします(20条・21条。手配の有効期間は3か月で、更新できます)。もう一つが、それ以外の行方不明者です。こちらは、パトロールや交通の取締り、職務質問など、ふだんの警察活動の中で見つけることに気を配る(12条)、警察庁の記録への照会で照らし合わせる(13条)、という形になります。届けて1か月たっても見つからなければ、受理票の写しが鑑識に回り、身元の分からない遺体の記録とも照らし合わされます(15条)。「探してくれない」のではなく、「全国の警察の網に登録される」と考えると近いと思います。交通違反で止められた人が、照会で行方不明者だと分かって見つかる、というのはこの仕組みです。
家族が警察署に行方不明者届を出すと、警察は本人を二つに分ける。事件・事故・自殺のおそれなどがある特異行方不明者は、探索や捜査を行い、他の警察署に3か月の手配をする。それ以外の行方不明者は、パトロールや交通取締りなど日常の警察活動の中での発見と、警察庁の記録への照会が中心で、1か月で受理票の写しが鑑識に回る。見つかったら届出人に知らせるが、本人の意思によっては知らせないことがあり、届出人からDVやストーカー行為を受けていた人については本人の同意がなければ知らせない。
だから、届けるときに大事なのは、特異行方不明者に当たる事情があれば、それを正確に伝えることです。薬を持たずに出た、手紙に死をほのめかす言葉がある、借金の取り立てに追われていた。逆に、大げさに言うことは勧めません。判断は警察がします(11条)。
見つかったときの扱いも知っておいてください。警察は届出人に、見つかったことや状況を知らせます。ただし、本人の意思などを考えて、知らせない、または知らせる内容を絞ることができます(26条1項)。さらに、届出人からストーカー行為やDV(配偶者などからの暴力)を受けていた人については、本人が同意しない限り、届出人には知らせません(26条2項)。大人が自分の意思で家を出た場合、「無事でした」とだけ伝えられて、居場所は教えてもらえないことがあります。これは、逃げている人を守るための決まりです。
探偵の所在調査にも、同じ考え方の線があります。探偵業者は、契約の前に依頼者から「調査の結果を犯罪や違法な差別などに使わない」という書面を受け取ります(探偵業法7条)。そして、違法な目的に使われると知ったときは、調査をしてはいけません(9条)。私の会社では、家族関係と、いなくなった理由として思い当たることを、最初に詳しく聞きます。DVから逃げた人を、加害者のために探すことはできないからです。探偵の決まりそのものは、探偵業法の記事に書きました。調査の方法は、聞き込み、張り込み、本人の交友関係や、本人が公開しているSNSの手がかりをたどることです。探偵には、役所で他人の住民票を取る権限はありません。親や子であれば、本人が住民票を移していれば、戸籍の附票で新しい住所が分かることがあります(取り方は所在の記事に書きました)。
費用は、見積の内訳で読みます。架空の例です。調査員2名、1日6時間を2日間。調査料は1時間あたり1名8,000円で、8,000円×2名×6時間×2日で192,000円。車両費が1日12,000円×2日で24,000円。報告書の作成が30,000円。小計246,000円、消費税(10パーセント)24,600円、合計270,600円(税込)です。「発見できたら成功報酬」という料金の形もありますが、その場合は「発見」が何を指すのか(居場所の確認か、本人と会えることか)を、契約前の書面(8条。料金の概算と支払いの時期、解除、資料の処分が書かれます)で確かめてください。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 調査料 | 8,000円×2名×6時間×2日 | 192,000円 |
| 車両費 | 12,000円×2日 | 24,000円 |
| 報告書の作成 | 一式 | 30,000円 |
| 小計 | 246,000円 | |
| 消費税(10パーセント) | 24,600円 | |
| 合計(税込) | 270,600円 |
何年も見つからないときは、家族の手続きの問題になります。いなくなった人が相続人の一人なら、遺産分割を進めるために、家庭裁判所に不在者財産管理人を選んでもらいます(民法25条)。詳しくは行方不明の相続人の記事に書きました。生きているか死んでいるか分からない状態が7年続けば、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てられ、認められると法律上は亡くなったものとして扱われます(30条)。
この家の場合です。母親はその日のうちに、息子さんの住所を管轄する警察署に行方不明者届を出しました。写真、置き手紙の写し、車のナンバーを持って行き、手紙に死をほのめかす言葉はないこと、持病はないことを、そのまま伝えました。特異行方不明者には当たらないという扱いでした。そのうえで、私の会社に所在調査を頼みました。調査の前に、娘さんと一緒に手がかりを並べました。辞めた日、最後に連絡が取れた日、息子さんが公開しているSNSに、いなくなった後に一枚だけ載った写真。写真に写っていた駅の看板から、町が絞れました。調査は見積どおりの2日間で、270,600円(税込)。2日目の夕方、勤め始めたらしい店から帰る姿を確認しました。報告書を受け取った母親は、すぐに会いに行くのではなく、手紙を書くことにしました。そして、見つかったことを警察署に連絡しました。届けたままにしておくと、警察の記録に残り続けるからです。三か月後、息子さんから母親に電話があったそうです。
家族がいなくなったら、まず警察署へ行き、写真と情報をそろえて届ける。警察が何をするかを知ったうえで、足りない部分を探偵に頼むかどうか決める。そして、見つけることと、会うことは別のことだと覚えておく。この記事の図は、届けてから見つかるまでの流れを一枚にしたものです。迷ったら、まず届けを出してください。届けを出すのに、早すぎることはありません。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-12
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-12 確認)。
- e-Gov法令検索「行方不明者発見活動に関する規則」 ― 2条(行方不明者と特異行方不明者の定義)、6条(届出を受理する警察署と、届出ができる人)、7条(届出のときに聞かれることと写真などの資料)、12条・13条(日常の警察活動での発見と照会)、15条(1か月で受理票の写しを鑑識へ)、20条・21条(特異行方不明者の探索と手配)、26条(発見時の届出人への通知と、通知しない場合)
- e-Gov法令検索「探偵業の業務の適正化に関する法律」 ― 7条(調査結果を違法な目的に使わない旨の書面)、8条(契約前の重要事項説明。料金の概算額と支払時期、解除、資料の処分)、9条(違法な目的に使われると知ったら調査しない)
- e-Gov法令検索「民法」 ― 25条(不在者の財産の管理)、30条(失踪の宣告。生死が7年間明らかでないとき)