探偵・調査 2026-10-14

不貞相手の名前と住所が分からないとき ― 弁護士会照会と住民票が先、探偵は「住んでいるか」の確認

不貞相手に慰謝料を請求するには、相手の氏名と住所が要ります。電話番号しか分からないなら、弁護士に依頼して弁護士会照会で携帯電話会社に契約者を照会し、住民票で今の住所まで追うのが先です。探偵ができるのは、見て確かめること、つまりその住所に本当に住んでいるかの確認です。時効の「知った時」の考え方、探偵がしてはいけない調べ方、最初から尾行で探す見積(税込347,600円)と居住確認だけの見積(税込105,600円)の違いを、2002年から探偵業を営んできた立場で書きます。

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この記事の位置: 依頼する前に知っておくこと → 所在を調べる → [証拠を集める]

「夫は相手の女性と別れると言っています。でも、相手の名前は下の名前しか教えてくれません。慰謝料を請求したいのに、どこの誰か分からないんです」。40代の女性の相談でした。手元にあるのは、夫が謝ったときに見せたスマートフォンの画面を写した写真で、相手の電話番号と、LINEの表示名が写っていました。私は2002年から探偵業を営んでいて、今年で24年目です。この相談で探偵の出番が来たのは、最後の一日だけでした。

不貞相手に慰謝料を請求するには、相手の氏名と住所が要ります。請求の手紙(内容証明郵便)を送るにも、調停や裁判を起こすにも、宛先がなければ始まりません。裁判の訴状にも、相手を特定する氏名と住所を書きます。慰謝料の相場や証拠については、不貞の慰謝料の記事に書きました。この記事は、その手前の「誰に請求するか」の話です。

時効の話を先にします。不法行為の損害賠償は、「損害と加害者を知った時から3年」で時効になります(民法724条1号)。この「加害者を知った時」について、最高裁昭和48年11月16日判決は、相手に請求することが事実上できる程度に知った時、としています。名前も住所も分からないうちは、まだ3年の時計が動き出していないと考える余地があります。ただし、不貞の時から20年たてば、知らなくても請求できなくなります(同条2号)。手がかりがあったのに長く放っておいた場合の扱いは事情しだいなので、時期が気になるなら早めに弁護士に確かめてください。

特定の方法は、手がかりの種類で決まります。一つ目、電話番号が分かるなら、弁護士に依頼して「弁護士会照会」を使う方法があります。弁護士法23条の2にもとづいて、弁護士が所属する弁護士会を通じ、会社や役所に必要な事項の報告を求める制度で、携帯電話会社に契約者の氏名と住所を照会するのが典型です。答えるかどうかは照会先の判断で、回答が得られないこともあります。依頼者本人や探偵は、この制度を使えません。

二つ目、住所の候補が分かったら、住民票で確かめます。弁護士は、受けた事件のために住民票の写しを請求できます(職務上請求)。本人が、自分の権利を行使するために第三者として請求する道もあります(住民基本台帳法12条の3。権利があることを示す資料が要り、断られることもあります。手順は、養育費を払わない元夫の住所が分からないときの記事に書きました)。携帯電話を契約したときの住所が古ければ、そこから転出先を除票(転出した人の住民票)で追います。

三つ目が探偵です。探偵ができるのは、見て確かめることです。夫と相手が会う日と場所が分かっていれば、その日に相手の帰宅先を確かめる。住民票の住所が分かっていれば、本当にそこで暮らしているかを確かめる(居住確認)。探偵は、住民票を取ることも、弁護士会照会を使うこともできません。探偵業法6条は、この法律があってもほかの法律で禁じられていることができるわけではない、としています。郵便受けの郵便物を抜いて見る、相手になりすまして会社や役所に問い合わせる、といった方法は、探偵にも依頼者にも許されません。

電話番号から住所まで。探偵の出番は最後の「住んでいるか」
電話番号から住所まで。探偵の出番は最後の「住んでいるか」左から順に、相手の電話番号、弁護士が弁護士会照会で携帯電話会社に照会して契約者の氏名と契約時の住所を得る、住民票(除票)で転出先を追って今の住所が分かる、最後に探偵が住民票の住所に本当に住んでいるかを見て確かめる(居住確認)。そのあと弁護士から請求の手紙を送る。探偵は住民票の請求や弁護士会照会はできない。 電話番号 弁護士 弁護士会照会 氏名・旧住所 住民票(除票) 今の住所 ここまでは弁護士の仕事(探偵は住民票も照会も使えない)ここまでは弁護士の仕事(探偵は住民票も照会も使えない) 探偵 居住確認4時間 請求の手紙

左から順に、相手の電話番号、弁護士が弁護士会照会で携帯電話会社に照会して契約者の氏名と契約時の住所を得る、住民票(除票)で転出先を追って今の住所が分かる、最後に探偵が住民票の住所に本当に住んでいるかを見て確かめる(居住確認)。そのあと弁護士から請求の手紙を送る。探偵は住民票の請求や弁護士会照会はできない。

探偵業者には、もう一つ大事な決まりがあります。調査の結果が犯罪や違法な差別などに使われると知ったときは、調査をしてはいけません(探偵業法9条1項)。相手の住所を知って押しかける、職場や家族に言いふらす、という目的が見えれば、まともな業者は断ります。契約の前には、依頼者が「違法な目的に使わない」という書面を出します(7条)。住所が分かったあとにすることは、弁護士を通じた請求の手紙か、調停の申立てです。相手の家に行って直接話す、勤め先に電話をする、といったことは、名誉毀損やつきまといという別のもめごとを生むので、しないでください。

この家では、こう進みました。女性は弁護士に依頼し、弁護士が電話番号をもとに、携帯電話会社へ弁護士会照会をしました。約一か月で、契約者の氏名と、契約したときの住所の回答がありました。弁護士がその住所で住民票の写しを請求すると、出てきたのは除票で、相手は二年前に隣の市へ転出していました。転出先の住民票で、今の住所が分かりました。

ここで探偵の出番です。住民票の住所が、相手の本当の住まいかどうか。実家に住民票を置いたまま、別の部屋で暮らしている人もいます。請求の手紙が届かない、届いても家族が受け取る、ということを避けるため、私の会社で居住確認をしました。調査員2名で、平日の夕方から夜まで4時間。相手が住民票の住所の集合住宅に帰り、その部屋の明かりがつくまでを確かめて、写真付きの簡単な報告書にしました。

費用を比べます。最初の相談で女性が思い描いていたのは、「探偵が尾行して、名前も住所も全部調べる」ことでした。その形で見積もると、夫と相手が会う日が決まっていないので、調査員2名・1日5時間を3日、という組み方になります。表の左の列がそれで、税込347,600円です。実際にかかった探偵の費用は右の列、居住確認4時間で税込105,600円でした。このほかに弁護士の費用と、弁護士会の照会の手数料、住民票の手数料がかかりますが、弁護士との契約や地域によって違うので、表には入れていません。

探偵の費用の比較(架空の見積、1時間あたり1名8,000円)
項目最初から尾行で探す(2名・5時間・3日)居住確認だけ(2名・4時間・1日)
調査料240,000円64,000円
車両費(1日12,000円)36,000円12,000円
報告書の作成40,000円20,000円(簡易)
小計316,000円96,000円
消費税(10パーセント)31,600円9,600円
合計(税込)347,600円105,600円

弁護士からの請求の手紙が相手に届き、二か月の話し合いで、相手が80万円を払う、女性の夫に負担を求めない(求償しない)、夫と連絡を取らない、という内容の合意書ができました。女性は離婚しない道を選んでいたので、求償しない約束が入ったことに意味がありました。理由は不貞の慰謝料の記事に書いています。

勤め先しか分からない、という相談もあります。裁判の書類は、住所が分からないときなどは勤め先に送る方法も法律にあります(民事訴訟法103条2項)。けれど、職場に知られることの重さは、相手だけでなく、請求する側の気持ちにも返ってきます。勤め先が分かっているなら、それを手がかりに弁護士が住所を調べる方法を先に考えるのが、この家のような「離婚しない」選択をした人には合っています。逆に、相手の住所が分かっても既婚と知らなかったと言われることがあるので、夫が既婚だと相手に話していた記録(メッセージなど)は、特定の作業と並行して残しておいてください。

下の名前と電話番号しかない、という相談は少なくありません。名前と住所は、まず弁護士の照会と住民票で。探偵は、その住所に本当に住んでいるかを見て確かめる、最後の一日に使う。この順番なら、探偵の費用は三分の一ほどで済み、違法な調べ方に手を出さずに済みます。女性は合意書を受け取った日に、「相手の顔を見ないで済んだのがよかった」と言いました。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-14

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-14 確認)。

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