土地・不動産 2026-10-09
確定測量と現況測量 ― 売る前に要るのはどちらか。隣地の立会い、官民境界、費用の内訳
現況測量は「いまある杭と塀を測る」、確定測量は「隣地の所有者と道路管理者が立ち会って境界を合意し、境界確認書と座標付きの地積測量図を作る」もの。実測面積で売る・境界を明示して引き渡すなら確定測量が要ります。昭和の地積測量図では足りない理由、地籍調査の有無、公簿と実測のずれ、66万円の見積の内訳と3か月半の内訳を、相続した実家を売った家の例で書きます。
この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → [境界・隣地・道] → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利
相続した実家を売ることになった男性が、不動産会社の見積を持って来ました。「確定測量が要ると言われて、66万円。測量なんて昔やってあるはずなのに」。法務局で取った地積測量図は昭和52年のもので、辺の長さは書いてあるが座標はなく、境界標の記載もない。この記事は、「昔の測量」と「確定測量」の何が違うか、そして66万円の中身の話です。私は測量士補ですが、登記のための測量は土地家屋調査士の仕事なので、ここでは依頼する側の目で書きます。
測量には、目的の違う二つがあります。現況測量は、いま現地にある杭や塀や建物の位置を測って、土地のおおよその形と面積を図にするものです。隣の人の立会いはなく、「ここが境界です」という法的な確認もしません。建物を建てる前の計画、固定資産税の面積の確認、売る前に大まかな面積を知りたいとき、に使います。確定測量(境界確定測量)は、隣接するすべての土地の所有者と、道路なら道路の管理者(市や県)に現地で立ち会ってもらい、境界の位置を一本ずつ確認して、境界確認書を取り交わし、境界標が無い所には設置し、その結果を地積測量図にまとめるものです。売買で「実測面積で取引する」「境界を明示して引き渡す」と約束したときは、この確定測量が要ります。
| 現況測量 | 確定測量(境界確定測量) | |
|---|---|---|
| やること | 現地の杭・塀・建物を測って形と面積を図にする | 隣地所有者と道路管理者が立ち会い、境界を一本ずつ確認して合意する |
| 隣の立会い | なし | 全隣接地+道路管理者(官民境界) |
| できる書類 | 現況測量図 | 境界確認書、座標付きの地積測量図、地積更正登記の添付図面 |
| 向く場面 | 建築計画、面積の目安、固定資産税の確認 | 実測精算の売買、境界明示の引渡し、分筆、地積更正 |
| この家の見積 | 150,000円(税別) | 600,000円(税別)、合計660,000円(税込) |
違いを一言でいうと、現況測量は「測る」、確定測量は「隣と合意する」です。費用と時間の差も、ほとんどが合意の部分から来ます。隣地が4筆あれば4人(相続で共有なら共有者全員)に連絡して日程を合わせ、現地で説明し、確認書に署名押印をもらう。道路との境界(官民境界)は、役所に申請して職員が現地に来て確認する手続きがあり、申請から確認まで1〜3か月かかる自治体が多い。隣地の所有者が遠方に住んでいる、亡くなって相続登記がされていない、立会いを拒む、となると、ここで止まります。拒まれて動かないときの出口が筆界特定制度で、筆界特定の記事に書きました。
実家の土地(公簿198平方メートル、実測205.4平方メートル)を、左右の隣地A・B、上の隣地C・D、下の市道が囲む。隣地との境界①〜④は所有者の立会いと境界確認書、市道との境界⑤は道路管理者(市)への申請と確認が要る。
法務局にある地積測量図の年代で、やり直しが要るかの当たりがつきます。地積測量図は分筆や地積更正の登記のときに出す図面で、2005年の規則改正以降のものは、国の基準点に基づく座標値と境界標の種類を書くことになっています(不動産登記規則77条)。座標があれば、杭が無くなっても同じ位置を現地に復元できます。昭和の図面は、辺の長さだけで座標がなく、境界標の記載もないことが多い。この家の昭和52年の図面がそれで、「測ってはあるが、どこを測ったかを今の現地と結びつけられない」図面でした。
もう一つ、地籍調査が済んでいる地域かどうかです。地籍調査は市町村が一筆ごとに境界と面積を調べ直す国の事業で、終わった地域では法務局の地図(不動産登記法14条の地図)が座標付きで備わっています。この地域なら、確定測量でも隣地立会いの負担が軽くなり、場合によっては不要になります。進んでいるかは、国土交通省の地籍調査Webサイトで市町村ごとに見られます。都市部ほど遅れているのが実情で、この家の市は未実施でした。
測量をすると、登記簿の面積(公簿面積)と実測面積がずれていることがよくあります。昔の測量は精度が低く、登記簿の面積が実際より小さいことが多い。実測のほうが大きければ、売買では「実測精算」で差額を上乗せできますが、そのためには買主が納得する確定測量の図面が要ります。ずれを登記簿に反映するのが地積更正登記で、確定測量の図面を添えて申請します。登録免許税は土地1筆につき1,000円(2026年10月時点)。義務ではありませんが、売るなら買主の銀行がこれを求めることがあります。
確定測量が要らない売り方もあります。「公簿売買」といって、登記簿の面積で代金を決め、実測との差を精算しない契約です。買主が不動産会社で建て替え前提なら、買主側があとで測量するので公簿売買で済むことがある。マンションの一室は敷地が共有なので、そもそも測量の話は出ません。確定測量を求められるのは、個人の買主が住宅ローンを使って一戸建ての土地を買う場面が多く、銀行が境界確認書と地積測量図を求めるからです。
66万円の見積の内訳を書き写します。資料調査と現地の基本測量180,000円。隣接地の立会いと境界確認書の作成が1件30,000円で4件、120,000円。道路との官民境界の確認申請と立会い120,000円。境界標の設置が1本15,000円で5本、75,000円。地積測量図の作成60,000円。地積更正登記の申請45,000円。小計600,000円、消費税(10パーセント)60,000円、合計660,000円(税込)。このほかに登記の登録免許税1,000円と、法務局で図面や登記事項証明書を取る数千円がかかります。現況測量だけなら、この家の広さで150,000円(税別)の見積でした。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 資料調査・基本測量 | ― | 180,000円 |
| 隣接地の立会い・境界確認書 | 30,000円×4件 | 120,000円 |
| 官民境界の確認(市道) | 申請と立会い | 120,000円 |
| 境界標の設置 | 15,000円×5本 | 75,000円 |
| 地積測量図の作成 | ― | 60,000円 |
| 地積更正登記の申請 | ― | 45,000円 |
| 小計 | 600,000円 | |
| 消費税(10%) | 60,000円 | |
| 合計(税込) | 660,000円 |
この家の土地は、公簿面積198平方メートル。確定測量の結果、実測は205.4平方メートルで、7.4平方メートル大きかった。売買は1平方メートルあたり30万円の実測精算で、7.4平方メートル×30万円=222万円が売買代金に上乗せされました。測量費66万円を引いても、156万円が手元に残った計算です。もちろん逆に小さく出ることもあり、その場合は代金が減ります。それでも、面積が確定していない土地は、買主が値引きの理由にするか、買主の側で測量して同じ費用を差し引くかのどちらかになるので、売主が先にやるほうが条件の主導権を持てます。
時間の話を一つ。この家では、依頼から境界確認書が揃うまで3か月半かかりました。内訳は、隣地4件のうち1件が相続未登記で、所有者の子三人に連絡を取って立会いの同意をもらうのに1か月、官民境界の確認が申請から2か月。売却の媒介契約と同時に測量を頼んだので間に合いましたが、買主が決まってから頼むと、決済がその分遅れます。相続した土地を売る予定があるなら、相続登記と同じ時期に確定測量を始めるのが、順番としては楽です。
「昔やってある」測量は、辺の長さを測った記録ではあっても、隣と合意した記録ではありませんでした。男性は確定測量を頼み、7.4平方メートルぶんの代金と、境界を明示して引き渡せる安心を得ました。この記事の図は、その家の土地を囲む4筆の隣地と道路、立会いが要る境界線を描いたものです。見積を受け取ったら、「何件の立会いと、官民境界が入っているか」を確かめてください。測量の値段は、面積ではなく、隣の数で決まります。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-09
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-09 確認)。
- e-Gov法令検索「不動産登記規則」 ― 77条(地積測量図に記録する事項。基本三角点等に基づく筆界点の座標値、境界標の表示、測量の年月日など)
- 法務省「筆界特定制度」 ― 隣地が立会いに応じないときに、法務局が筆界を特定する制度
- 国土交通省「地籍調査Webサイト」 ― 地籍調査の仕組みと、市町村ごとの実施状況