離婚・家族 2026-10-15
離婚したら義理の親とはどうなるか ― 姻族関係は届け出なしで終わる。介護、お墓、孫との交流、援助してもらった頭金
離婚すると、夫や妻の親との親族関係(姻族関係)は、何の届も出さずに終わります(民法728条1項)。扶養や特別寄与料の対象からも外れ、お墓を引き継いでいた人は承継者を決め直します。一方、子どもと祖父母は血族のままで、2026年4月からは家庭裁判所が祖父母と孫の交流を定められるようになりました。義父から出してもらった頭金500万円を財産分与でどう扱うかを、家の価値3,000万円・ローン残1,800万円の例で計算します。
この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → [離婚が成立したら] → 離婚後の生活 → 状況別(当てはまる方だけ)
「離婚したら、義理の母の介護はもうしなくていいんですよね。届か何かを出すんですか」。40代の女性からの相談です。夫の母は80歳を過ぎ、同じ市内で一人暮らし。週に三回、女性が通って食事と通院を手伝っていました。離婚の話し合いは進んでいて、財産分与と養育費はおおむね決まっていましたが、夫の親との関係をどうするかは、誰も教えてくれなかったそうです。
答えから書きます。離婚すると、夫の親(法律の言葉で「姻族」)との親族関係は、何の届も出さずに終わります(民法728条1項)。離婚届が受理された日に、義理の母は法律上の親族ではなくなります。配偶者が亡くなった場合は違い、姻族関係を終わらせたければ「姻族関係終了届」を出す必要があります(同条2項)。死別では続き、離婚では終わる。ここが最初の分かれ目です。
夫の母と妻の間の姻族関係は、離婚によって届け出なしで終わる。夫の母と子(孫)の間は血族で、離婚しても続く。扶養や特別寄与料は、離婚後の元妻には及ばない。孫との交流は、2026年4月から家庭裁判所が定められるようになった。
死別のときは、姻族関係終了届を出さない限り姻族関係は続きます(民法728条2項)。
親族でなくなると、何が変わるか。一つは扶養です。義理の親を扶養する義務は、婚姻中でも原則としてありません。家庭裁判所が特別の事情があると認めたときだけ、3親等内の親族に扶養義務を負わせることができる、という例外があるだけです(877条2項)。離婚すれば、その例外の対象からも外れます。介護を続けるかどうかは、法律ではなく、本人が決めることになります。
もう一つは、介護の見返りです。2019年7月から、相続人ではない親族が、亡くなった人を無償で介護して財産の維持に貢献したとき、相続人に「特別寄与料」というお金を請求できるようになりました(1050条)。長男の妻が義父を介護してきた、という場面を想定した制度です。ただし、請求できるのは「亡くなった人の親族」です。義母が亡くなる前に離婚していれば、親族ではないので、この請求はできないと考えられます。何年介護していても同じです。請求には期限もあり、相続の開始と相続人を知ってから6か月、相続開始から1年です。
三つ目は、お墓や仏壇です。結婚で夫の姓になった妻が、夫の家のお墓や仏壇を引き継いでいた(祭祀を承継していた)場合、離婚して旧姓に戻るなら、誰が引き継ぐかを話し合って決め直さなければなりません(769条)。話がまとまらなければ家庭裁判所が決めます。
変わらないものもあります。子どもと祖父母の関係です。両親が離婚しても、子は夫の親の孫のままで、血のつながった親族です。夫が先に亡くなっていれば、子は祖父母の相続で代襲相続人になります。2026年4月からは、家庭裁判所が、子の利益のため特に必要があると認めるときに、祖父母など父母以外の親族と子との交流を定められるようになりました(766条の2)。祖父母が自分で申し立てられるのは、ほかに適当な方法がないときに限られます。
次に、お金です。いちばん揉めやすいのは、家を買うときに夫の親から出してもらった援助です。財産分与は、夫婦が婚姻中に一緒に築いた財産を分けるものです。親からの贈与は、もらった側の固有の財産(特有財産)と扱われやすく、分ける対象から外して計算することがあります。夫に贈与したのか、夫婦に贈与したのか、それとも貸したのかで扱いが変わるので、振込の記録と当時のやり取りを探してください。
この家では、こうでした。8年前に4,000万円で家を買い、頭金1,000万円のうち500万円は夫婦の貯金、500万円は夫の父からの援助(夫の口座への振込)。残り3,000万円は住宅ローンです。いまの家の価値は3,000万円、ローンの残りは1,800万円。援助を考えずに分けると、3,000万円−1,800万円=1,200万円を半分ずつで、600万円ずつです。
援助を夫の特有財産として外すと、計算が変わります。ここでは、買ったときの値段に占める援助の割合(500万円÷4,000万円=8分の1)で外す考え方を使いました。家の価値3,000万円の8分の1、375万円が夫だけの分。残る2,625万円からローン1,800万円を引いた825万円を半分ずつで、412万5,000円ずつ。家を夫が取るなら、夫が女性に払う額は600万円から412万5,000円へ、187万5,000円下がります。外し方は一つではなく、家庭裁判所でも事案ごとに違うので、これは話し合いの出発点としての概算です。
| 援助を考えない | 援助を夫の分として外す | |
|---|---|---|
| 家の価値 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 夫だけの分(8分の1) | 0円 | 375万円 |
| ローンの残り | 1,800万円 | 1,800万円 |
| 夫婦で分ける額 | 1,200万円 | 825万円 |
| 女性が受け取る額(半分) | 600万円 | 412万5,000円 |
夫の親の家に同居していた場合も、離婚で立場が変わります。親の家に家賃を払わずに住んでいるのは、多くは「使用貸借」(ただで借りる約束)で、借りていたのは夫婦です。離婚して親族でなくなった元妻が住み続けることは、親が認めない限り難しくなります。子どもの学校の区切りまで住みたいなら、退去の時期を離婚協議書に書き、義理の親にもその書面を見せて了解をもらっておきます。
祖父母が孫のために積み立ててくれた預金や、お年玉をためた子ども名義の口座は、子ども自身の財産です。夫婦の財産分与の対象にはならず、離婚後は親権者が子どものために管理します。もう一つ、元夫が先に亡くなった場合です。離婚した元妻は元夫の相続人ではありませんが、子どもは元夫の相続人です。子どもが未成年なら、親権者の母親が子どもの代わりに、相続するか放棄するかを決めることになります。元夫に借金があるかもしれないときは、亡くなったことを知った日から3か月の期限に気をつけてください。この家では、義母が孫の名義で毎月1万円ずつ積み立てていた口座が6年分、72万円ありました。通帳と印鑑は女性が預かり、義母には「孫の口座はこのまま孫のために使います」と伝えたそうです。積み立ての名義と通帳の置き場所を、この機会に家族の間ではっきりさせておくと、あとで「誰のお金か」で揉めずに済みます。
最後に、離婚しても終わらないものを一つ。義理の親の借金の保証人になっている場合です。保証は銀行などとの契約なので、離婚しても自動では外れません。外すには、貸した側の同意が要ります。この女性は、夫の実家のリフォームローンの連帯保証人になっていたことが、契約書を探して分かりました。夫の側で銀行と話して保証人を替えてもらうこと、外れなかったときに女性が払った分は夫が負担することを、離婚協議書に書きました。
女性は離婚後も、月に一度だけ、子どもを連れて義母を訪ねることにしたそうです。「義務じゃないと分かったら、少し行けるようになりました」と話していました。法律が終わらせる関係と、続けるかどうかを自分で決めてよい関係。その線を先に知っておくと、離婚の話し合いで迷うことが一つ減ります。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-15
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-15 確認)。
- e-Gov法令検索「民法」 ― 728条(姻族関係は離婚によって終了。死別は意思表示で終了)、766条の2(父母以外の親族と子との交流)、769条(離婚で復氏するときの祭祀の承継者)、877条2項(3親等内の親族の扶養は家庭裁判所が特別の事情で)、1050条(特別寄与料。被相続人の親族が対象、6か月・1年の期限)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」 ― 2026年4月1日施行