探偵・調査 2026-10-18
盗聴器が仕掛けられている気がしたら ― 発見調査で見つかるもの・見つからないもの、費用、見つけたあとの順番
「自分しか知らないはずのことを、相手が知っている」。盗聴器の発見調査の相談は、たいていこの一言から始まります。受信機で見つけられるのは電波を出す型の盗聴器で、録音型やスマートフォンを使ったものは、受信機では見つかりません。盗聴そのものを直接罰する一般的な法律は無く、問題になるのは部屋への侵入や電話線への細工です。探偵業を24年営んできた立場から、調査の中身と限界、別居中の女性の部屋の実際の費用(合計6万500円)、見つけたあとに警察へ持っていくものを書きます。
この記事の位置: [依頼する前に知っておくこと] → 所在を調べる → 証拠を集める
「私が友だちに電話で話したことを、夫が知っていたんです」。40代の女性からの相談でした。夫とは別居して半年、離婚の調停が始まったところです。女性は子どもと二人で賃貸のアパートに住んでいて、夫には住所を知らせていません。ところが、調停の待合室で、夫の側から、女性が友人に話した週末の予定を持ち出された。「部屋に何か仕掛けられているんじゃないかと思うと、家で電話ができません」。
私は2002年から探偵業を営んでいて、今年で24年目です。盗聴器の発見調査は、尾行や張込みの調査とは別に、年に何度か相談を受ける仕事です。最初に伝えるのは、調査で見つけられるものには限りがある、ということです。
盗聴器は、大きく二つに分けられます。一つは、拾った音を電波で飛ばす型です。コンセントに差す電源タップや、延長コード、置き時計の形をしたものが多く、電源から電気をもらうので、何年でも動き続けます。この型は、電波を受信機で拾えるので、部屋を回りながら周波数を探していけば、見つけられることが多い。もう一つは、電波を出さない型です。ICレコーダーのように中に録音しておくもの、携帯電話の回線やインターネットを使って音を送るもの、本人のスマートフォンに入れられたアプリ。こちらは受信機では反応しないことが多く、家具の裏やコンセントの中を目で見て探すしかありません。発見調査の報告書に「反応なし」と書かれていても、それは「電波を出す型は見つからなかった」という意味です。
左は、電源タップや置き時計に仕込まれ、拾った音を電波で飛ばす型の盗聴器。電波を受信機で拾えるので、発見調査で見つかることが多い。右は、ICレコーダーのように録音する型や、携帯電話の回線・スマートフォンのアプリを使う型で、電波を出さないか、ふつうの通信に紛れるため、受信機では見つからないことが多く、目で見て探す。
発見調査の「反応なし」は、電波を出す型が見つからなかったという意味です。誰が仕掛けたかは、調査では分かりません(2026年10月時点)。
法律の話をしておきます。意外に思われるかもしれませんが、盗聴して聞くこと自体を、直接まとめて罰する一般的な法律はありません。電波法は、特定の相手に向けた無線通信を傍受して、その内容を漏らしたり、自分のために使ったり(窃用)することを禁じています(59条)。問題になりやすいのは、むしろ仕掛けるまでの行為です。他人の部屋に無断で入れば住居侵入罪(刑法130条)、電話線に細工して会話を聞けば有線電気通信法の秘密の侵害で、2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(9条・14条。2026年10月時点)。強い電波を出す機器を免許なしに使えば、電波法の無線局の無免許開設になることもあります(4条・110条)。
ここに、別居中の夫婦ならではの難しさがあります。女性のアパートには、夫は入ったことがないはずでした。けれども、引っ越しのとき、実家から運んだ家電の中に、夫が以前に買った電源タップが混じっていた。本人が自分で部屋に運び込んだ物の中に仕掛けがあれば、住居侵入には当たりません。誰が、いつ、どうやって仕掛けたかで、問える罪が変わります。
調査の日、調査員2名で、部屋を一つずつ回りました。受信機で電波を探し、コンセントや電話の差込口、照明、家具の裏を目で確かめます。台所の冷蔵庫の裏の電源タップから、電波の反応がありました。分解すると、中に小さな基板が入っていました。そのタップは、女性が実家から運んだ家電の箱に入っていたものでした。
見つけたあとの順番を書きます。一つ目、すぐに抜いたり捨てたりせず、差してあった場所と状態を写真に撮る。二つ目、素手で触る回数をなるべく減らし、外したら袋に入れて保管する。三つ目、調査の報告書(日時、場所、写真、受信した周波数)を受け取る。四つ目、それらを持って、住んでいる地域の警察署の生活安全課に相談する。報告書で分かるのは「この場所に、この機器があった」ということで、誰が仕掛けたかまでは分かりません。仕掛けた人を突き止めるのは、警察の捜査の領分です。見つけた機器を自分で分解したり、相手に「見つけた」と連絡したりするのは、証拠を損ねるもとになるので控えます。
相手が、盗聴で知ったことをわざわざ本人に告げて、「見ているぞ」と思わせるような行為は、動機が好意やその恨みであれば、ストーカー規制法の「つきまとい等」(2条1項2号)に当たることがあります。女性の場合、夫が調停の席で予定を持ち出したことは、弁護士を通じて調停委員に伝えました。DVや付きまといの心配がある人は、保護命令の記事も読んでください。
費用です。この部屋の発見調査は、2LDKまでの基本料金が税込3万3,000円、出張費が税込5,500円でした。そのほかに、女性は念のため、玄関の鍵を交換しました(税込2万2,000円)。合計で6万500円です。安い発見器は家電量販店でも売っていますが、受信できる周波数が限られるものもあり、反応が無くても安心はできません。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 発見調査(2LDKまでの基本料金) | 33,000円 |
| 出張費 | 5,500円 |
| 玄関の鍵の交換 | 22,000円 |
| 合計 | 60,500円 |
業者を選ぶときの注意も書きます。探偵業法で届出が要るのは、特定の人の所在や行動を、聞込みや尾行、張込みで調べる「探偵業務」です(2条)。盗聴器の発見だけなら、この定義に当たらないので、届出の無い業者も発見調査をしています。料金は、部屋の広さと、出張の距離、電話回線まで調べるかどうかで変わります。見積の段階で、何を、どの範囲で調べるのか、見つからなかったときの料金はどうなるかを、書面で確かめてください。探偵に頼む前に自分でできることの記事にも、見積の読み方を書いています。
業者に頼む前に、自分で確かめられることもあります。一つ目は、引っ越しのときに持ち込んだ物と、もらい物の点検です。電源タップや延長コード、置き時計、ぬいぐるみなど、いつ、誰から来たか分からない物を書き出してみます。メーカー名や型番が書かれていない電源タップは、特に疑ってよい物です。二つ目は、スマートフォンです。見覚えのないアプリが入っていないか、画面ロックの暗証番号を相手が知っていないか、家族で共有しているアカウントで位置情報や写真が共有されたままになっていないかを確かめます。別居の前に夫婦で同じアカウントを使っていた人は、ここから情報が漏れていることが少なくありません。三つ目は、相手が知っていた情報を書き出すことです。いつ、どこで話した、何を知っていたのかを並べると、部屋の中の会話なのか、電話なのか、メッセージなのかで、疑う場所が絞れます。この書き出しは、発見調査を頼むときにも、範囲を決める材料になります。
女性は、タップを外した夜、久しぶりに部屋で友人に電話をかけたそうです。発見調査で手に入るのは、「この部屋のこの場所に、これがあった」という一枚の記録と、少しの安心です。そのどちらも、調停や警察への相談で、自分の言葉を裏づける材料になります。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-18
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-18 確認)。
- e-Gov法令検索「電波法」 ― 4条(無線局の開設には免許が要る。著しく微弱な電波のものなどは除く)、59条(特定の相手に向けた無線通信を傍受して、その存在や内容を漏らし、または窃用することの禁止)、110条(免許なしの無線局の開設は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)
- e-Gov法令検索「有線電気通信法」 ― 9条(有線電気通信の秘密の保護)、14条(秘密を侵した者は2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。未遂も罰する)
- e-Gov法令検索「探偵業の業務の適正化に関する法律」 ― 2条(探偵業務の定義。特定人の所在や行動の情報を、聞込み・尾行・張込みなどの実地の調査で集める業務)