探偵・調査 2026-10-21
迷子になった犬や猫を探す ― 警察・保健所・清掃事務所の三か所への届出、マイクロチップの登録情報、ペット探しの業者と探偵業法
犬や猫がいなくなったとき、最初にするのは業者への電話ではなく、見つけた人が連絡する先への届出です。拾われた犬や猫は、警察にいることも、保健所や動物愛護センターにいることもあります。三か所への届出、マイクロチップの登録情報が古いと連絡が来ない理由、チラシの作り方、そしてペット探しの業者が探偵業法の対象外であることを、花火の音で逃げた柴犬を探した夫婦の数字(業者の見積17万6,000円、自分たちで探して3,000円)で書きます。
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「花火の音に驚いて、犬が庭の柵を越えて逃げました」。30代の夫婦が相談に来たのは、犬がいなくなった翌朝でした。7歳の柴犬で、首輪はしていたものの迷子札は付けていません。体にはマイクロチップが入っています。夜通し近所を探しても見つからず、朝になってネットで見つけたペット探しの業者に電話をしたら、「3日間のプランで16万5,000円です」と言われた。頼んだほうがいいのか、という相談でした。
私は2002年から探偵業を営んでいて、今年で24年目になります。人を探す相談の中に、ときどき犬や猫の相談が混じります。そのとき最初に伝えるのは、業者に頼む前に、届出を三か所にしておくことです。理由は、見つけた人がどこに届けるかを考えると分かります。
迷子の犬や猫は、法律の上では落とし物と同じ「遺失物」として扱われます。拾った人は、飼い主に返すか、警察署長に届け出ることになっています(遺失物法4条1項)。ただし犬と猫については、拾った人が保健所や動物愛護センター(都道府県や市の窓口)に引き取りを求めることもでき、その場合は警察に届けなくてよいことになっています(同条3項)。つまり、見つかった犬や猫は、警察にいることも、保健所や動物愛護センターにいることもあります。
だから届出は三か所に出します。一つ目は最寄りの警察署(遺失届)。二つ目は保健所や動物愛護センターで、地域によって名前が違い、県と市の両方に窓口があることもあります。三つ目は、道路で亡くなった動物を引き取る市区町村の窓口(清掃事務所など)です。三つ目は気の重い問い合わせですが、事故に遭っていた場合に知る方法は、ほかにありません。保護した犬や猫を預かる期間は自治体ごとに決まっていて、長くないところもあります。届出は一度で終わらせず、数日おきに電話で確かめ、できれば写真を持って見に行きます。市の境に近い家は、隣の市の窓口にも届けます。
迷子の犬を見つけた人は、警察署に届けるか、保健所・動物愛護センターに引き取りを求める。飼い主は、警察署(遺失届)、保健所・動物愛護センター、道路で亡くなった動物を引き取る市区町村の窓口の三か所に届け出る。マイクロチップの番号を読み取ると、登録された飼い主に連絡が来るので、登録情報を最新にしておく。
遺失物法4条(2026年10月時点)。犬と猫は、拾った人が保健所や動物愛護センターに引き取りを求めた場合、警察への届出は要りません。窓口の名前と預かる期間は自治体ごとに違います。
次に確かめるのが、マイクロチップの登録情報です。2022年6月から、ペットショップなどの販売業者には、犬や猫にマイクロチップを入れて登録することが義務になりました。販売業者から買った人や、登録証明書と一緒に譲り受けた人は、自分の名前に変える「変更登録」が必要です。保護した窓口がチップの番号を読み取ると、登録された飼い主に連絡が来る仕組みです。
困るのは、登録の情報が古いままのときです。販売業者の名前のまま、引っ越す前の住所のまま、使っていない電話番号のまま、では連絡が届きません。この夫婦の犬も、登録はされていたものの、電話番号が2年前に解約した番号のままでした。逃げた日のうちに、環境省の「犬と猫のマイクロチップ情報登録」のサイトで電話番号を直しました。変更には、登録のときに受け取った書類の情報が要るので、書類の保管場所も確かめておきます。
三つ目がチラシです。写真、犬種と毛の色、首輪の色、逃げた日時と場所、連絡先を一枚にまとめます。謝礼を書くなら、額を決めて書きます。電柱や塀、お店に貼るときは、その持ち主や管理者の許可を取ります。置いてもらうなら、近所の動物病院、トリミングの店、交番、散歩の人が集まる公園の掲示板。SNSでの呼びかけは広く届く反面、自宅の住所や個人の電話番号まで載せると、いたずらやお金を求める連絡も来るので、連絡先は捜索用のメールなどにします。
見つかったという連絡の中には、気をつけたいものもあります。「犬を保護しているが、遠方なので送る費用を先に振り込んでほしい」「謝礼を先に払えば場所を教える」といった連絡です。犬や猫を自分の目で確かめる前にお金を払うのはやめ、会って確かめるときは、人の多い場所か、交番の近くを選びます。チラシに謝礼の額を書くなら、「見つかって引き渡されたときに」と、払う時を一緒に書いておくと、こうした話を断りやすくなります。猫の場合は、外に慣れていない室内飼いの猫ほど、家のすぐ近くの物陰や床下にじっと隠れていることが多いと言われます。夜、静かになってから、懐中電灯で近所の物陰を一つずつ照らし、名前を小さな声で呼んで探します。
ここで、ペット探しの業者と法律の関係を書いておきます。探偵業法の「探偵業務」は、依頼を受けて「特定人の所在又は行動」についての情報を集める業務です(2条1項)。動物を探すことは、これに当たりません。そのため、ペット探しだけをする業者には、公安委員会への届出も、契約の前に重要事項の書面を渡す義務も、探偵業法の上ではありません。届出番号の有無では、業者を見分けられないということです。見積では、1日の人数と時間、チラシの枚数、捕獲器や車の費用、見つからなかったときの料金、見つかったときの成功報酬、途中でやめたときの精算を、書面で確かめます。
この家では、業者の見積は、調査員2名・1日8時間の3日間で16万5,000円、チラシ1,000枚の印刷と配布で1万1,000円、合計17万6,000円(税込)でした。見つからなくても返金は無く、見つかったときは成功報酬5万5,000円が加わる、という内容です。夫婦は、まず二日、自分たちで動くことにしました。
チラシはコンビニで300枚刷って3,000円。警察署、県の動物愛護センター、市の保健所、市の清掃事務所に届け、近所の動物病院6軒と交番にチラシを置かせてもらいました。三日目の朝、チラシを見た人から「2キロ先の団地の植え込みに柴犬がいる」と電話があり、夫が迎えに行きました。かかったのは、印刷代と、窓口を回った交通費だけでした。
| 項目 | 業者の3日間プラン | 自分たちで探した場合 |
|---|---|---|
| 捜索(調査員2名・1日8時間×3日) | 16万5,000円 | ― |
| チラシ | 1万1,000円(1,000枚の印刷と配布) | 3,000円(300枚の印刷) |
| 合計 | 17万6,000円 | 3,000円 |
| 見つかったときの成功報酬 | 5万5,000円が加わる | ― |
業者に頼むことを考えるのは、二〜三日、自分たちで動いても手がかりが無いとき、目撃の連絡はあるのに人手が足りないとき、怖がって近寄らない猫に捕獲器を使う必要があるとき、などです。頼むときも、届出とチラシは自分で続けたまま、足りない部分だけを日数を決めて頼みます。
逃げた日にすることは三つです。三か所への届出、マイクロチップの登録情報の確認、チラシ。家族が行方不明になったらの記事でも書いた順番と同じで、まず公の窓口、次に自分でできること、最後に業者です。マイクロチップの情報は、引っ越しや電話番号を変えたその日に直しておくのが、いちばんの備えになります。
もう一つの備えが、首輪の迷子札です。マイクロチップは読み取りの機械が無いと番号が分からず、見つけた人がその場で飼い主に電話することはできません。迷子札に電話番号が書いてあれば、見つけた人から直接連絡が来ます。犬には、市区町村が出す鑑札と注射済票を着けておく決まりもあります(狂犬病予防法。マイクロチップが鑑札の代わりになる市区町村もあります)。鑑札の番号からも、市区町村を通じて飼い主にたどり着けます。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-21
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-21 確認)。
- e-Gov法令検索「遺失物法」 ― 4条1項(拾得者は遺失者に返還するか警察署長に提出する)、3項(犬・猫について動物愛護管理法35条3項の引取りを求めた拾得者には1項・2項を適用しない)
- 環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」 ― 2022年6月1日開始。販売業者は装着・登録が義務、販売業者から取得した人は変更登録が必要。登録情報の変更の手続き
- e-Gov法令検索「探偵業の業務の適正化に関する法律」 ― 2条1項(探偵業務は、他人の依頼を受けて特定人の所在又は行動についての情報を集める業務)