離婚・家族 2026-10-18
別居・離婚で子どもの学校をどうするか ― すぐ転校、学年末まで元の学校(区域外就学)、共同親権で「二人で決めること」
別居や離婚で引っ越すとき、子どもの学校には、すぐに転校する道のほかに、住所を移したまま元の学校に通い続ける「区域外就学」や、同じ市の中で学校を変える「就学校の変更」があります。2026年4月からは、父母がともに親権者なら、転居や転校は原則として二人で決めることになりました。必要な書類、教育委員会への届け出の順番、中学1年の子の母の実際の数字(すぐ転校5万9,400円、学年末まで通ってから転校7万9,200円)を書きます。
この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → 離婚が成立したら → [離婚後の生活] → 状況別(当てはまる方だけ)
「12月に実家のある市に引っ越します。娘の中学はどうなりますか」。30代の女性は、別居の準備を進めているところでした。娘は中学1年生で、入学して半年。仲のよい友だちができて、部活にも慣れてきたところです。実家は隣の市で、電車で30分ほど。「途中で転校させるのはかわいそうで。でも、住所を移したら、元の学校には通えないんですよね」。
公立の小中学校は、住所のある市町村の教育委員会が、通う学校を指定します。住所が変われば、新しい市町村の学校に転校するのが原則です。ただ、原則どおりにしか動けないわけではありません。学校教育法施行令には、二つの例外が書かれています。
一つは「区域外就学」です。住所のある市町村とは別の市町村の学校に通うことで、通いたい学校のある市町村の教育委員会の承諾を得て、その承諾書を付けて、住所のある市町村の教育委員会に届け出ます(施行令9条)。女性の場合なら、住所は実家のある市に移し、学校は今の市の中学校に通い続ける形です。もう一つは「就学校の変更」で、同じ市町村の中で、指定された学校とは別の学校に通うことです(8条)。どちらも、教育委員会が相当と認めたときにできるもので、どんな場合に認めるかの基準は市町村ごとに決めて公表しています。引っ越しのあと、学期や学年の終わりまで元の学校に通うことは、基準に挙がっていることが多い理由の一つです。
もう一つ、2026年4月から考えなければならないことがあります。民法の改正で、離婚のあとも父母がともに親権者でいられるようになり、父母がともに親権者のときは、親権は二人で行うのが原則になりました(824条の2)。そして、法務省の解説では、子の転居や、転校・入学などの手続き、就学校の変更や区域外就学の手続きは、片方だけで決められる「日常の行為」には当たらない、とされています。大事なのは、まだ離婚していない別居中の夫婦も、二人とも親権者だという点です。別居のときの引っ越しと転校も、原則として夫と相談して決めることになります。
今の市に中学校があり、隣の市に実家がある。転校は、住所も学校も隣の市に移す形。区域外就学は、住所は隣の市に移し、学校は今の市の中学校に通い続ける形で、今の市の教育委員会の承諾書を付けて、隣の市の教育委員会に届け出る。就学校の変更は、同じ市の中で、指定された学校とは別の学校に通う形。
どれも教育委員会が相当と認めたときにでき、基準は市町村ごとに公表されています。父母がともに親権者なら、原則として二人で決めます(2026年10月時点)。
例外もあります。DVや虐待から逃れる必要があるときは「急迫の事情」として、片方だけで決められる場合があります。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に、その事項についてどちらが決めるかを定めてもらう手続きもあります(824条の2第3項)。女性の場合、DVはなく、夫も「学校のことは娘に合わせたい」と話していたので、メールで考えを伝え合い、二人で決めた内容を書面に残しました。手続きの窓口で、もう一方の親の考えをどう確かめるかは、市町村によって違います。
三つの道を比べました。一つ目は、12月の引っ越しと同時に転校する道。新しい中学校の制服が税込3万8,500円、体操服などが税込1万2,100円、指定の通学かばんが税込8,800円で、5万9,400円かかります。二つ目は、区域外就学で3月まで今の中学校に通い、4月の2年生から実家の市の中学校に移る道。1月から3月までの3か月の通学定期が税込1万9,800円で、4月にはやはり制服などの5万9,400円がかかり、合計7万9,200円です。三つ目は、卒業まで区域外就学で通い続ける道ですが、これは、2年以上の長い期間を認めてもらえるかどうかが市町村の基準しだいでした。今の市の基準では、引っ越したあとに通い続けられるのは、その学年の終わりまでとされていました。
| 項目 | 12月にすぐ転校 | 3月まで区域外就学→4月に転校 |
|---|---|---|
| 通学定期(1〜3月の3か月) | ― | 19,800円 |
| 新しい中学校の制服 | 38,500円 | 38,500円 |
| 体操服など | 12,100円 | 12,100円 |
| 指定の通学かばん | 8,800円 | 8,800円 |
| 合計 | 59,400円 | 79,200円 |
女性と娘が選んだのは、二つ目でした。差は1万9,800円で、そのかわりに、娘は1年生の終わりまで今のクラスで過ごせます。学年の切り替わりで転校すれば、新しい学校でもクラス替えと同時に入れる、という娘自身の考えもありました。
手続きの順番を書きます。一つ目、今の市の教育委員会に、区域外就学で通い続けたいと相談し、承諾がもらえるか確かめる。二つ目、実家の市に転入届を出し、その市の教育委員会に、承諾書を付けて区域外就学を届け出る。三つ目、学年末が近づいたら、今の中学校から「在学証明書」と「教科書給与証明書」を受け取る。四つ目、それを実家の市の教育委員会に出して、転校先の中学校が決まる。承諾までに2〜3週間かかる市もあるので、引っ越しの1か月前には相談を始めます。教科書は、転校先で違う教科書を使っていれば、新しく無償で受け取れるのがふつうで、教科書給与証明書はそのための書類です。
お金のことでは、もう一つ確かめておきたい制度があります。小中学校の学用品や給食費を補助する「就学援助」は、市町村が実施する制度です。区域外就学のあいだ、住所のある市と学校のある市のどちらに申請するかは扱いが分かれるので、両方の窓口で確かめます。基準や申請の時期も市町村ごとに違います。ひとり親家庭が使える支援は、別の記事にまとめています。
通学の安全も、決める前に確かめてください。区域外就学で遠くから通う場合は、通学の経路と方法を学校に伝え、通学の途中で何かあったときの連絡先をそろえておきます。定期券の区間や、雨の日の送り迎えを誰がするかも、夫婦で話しておくとよい点です。
学校に何をどこまで伝えるかも、決めておきたいことです。女性は、引っ越しの前に担任の先生と面談し、別居したこと、住所が変わること、学校からの連絡は自分の携帯電話にほしいことを伝えました。夫にも学校の行事の予定を知らせたいかどうかは、夫婦で話して、通知表と行事の案内は女性から写真で送ることにしました。DVなどの事情で、相手に新しい住所を知られたくない人は、そのことを学校と教育委員会にはっきり伝え、書類の扱いを相談してください。転校の費用は、別居中なら婚姻費用、離婚のあとなら養育費の中で考えるのが基本ですが、制服代のようにまとまって出る費用は、算定表の額とは別に、どちらがどれだけ持つかを話し合っておくと、あとでもめにくくなります。女性の場合は、4月の制服などの5万9,400円を、夫と半分ずつ持つことにして、別居のときの合意書に書き加えました。
3月の終業式の日、娘は友だちと写真を撮って、4月から新しい中学校に移りました。転校の時期は、法律では決まっていません。いつ、どの学校に移るかは、子どもの毎日にいちばん近い大人が、子どもの声を聞いて決めることです。2026年4月からは、その「大人」が二人になることが増えます。決めた理由を書面に残しておくと、あとで話がこじれたときの支えになります。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-18
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-18 確認)。
- e-Gov法令検索「学校教育法施行令」 ― 8条(同じ市町村の中で、保護者の申立てにより就学する学校を変更できる)、9条(住所のある市町村以外の学校に通う区域外就学。受け入れ先の承諾書を添えて住所地の教育委員会に届け出る)
- 文部科学省「就学すべき学校の指定の変更や区域外就学について」 ― 就学校の変更は学年の途中でも対象になりうること、区域外就学の手続きの流れ、市町村教育委員会が要件と手続きを公表すること
- 法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」 ― 父母がともに親権者のとき、子の転居や、入学・転学などの手続き、就学校の変更や区域外就学の手続きは「日常の行為」に当たらないこと。DVや虐待からの避難は「急迫の事情」に当たりうること