離婚・家族 2026-10-17

離婚後に親権者を変えたいとき ― 父母が合意していても家庭裁判所の調停が要る。2026年4月からは共同親権への変更も

離婚のときは父母の話し合いで決められた親権者も、あとから変えるには、父母が合意していても家庭裁判所の調停か審判が要ります。2026年4月の民法改正で、子ども自身も申し立てられるようになり、単独親権から共同親権への変更もできるようになりました。家庭裁判所が見ること、申立ての費用と書類、10日以内の届、養育費と児童手当の切り替えを、母の海外赴任で長男が父と暮らすことになった家の数字で書きます。

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この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → [離婚が成立したら] → 離婚後の生活 → 状況別(当てはまる方だけ)

「二人とも納得しているんです。役所に届を出せば、それで変わりますよね」。40代の男性は、3年前に協議離婚をしていて、中学2年の長男の親権者は元妻です。その元妻に、来年の春から海外赴任の話が出ました。長男は日本の学校に残りたいと言い、父のところで暮らすことになった。元妻も、親権を男性に移すことに賛成しています。私は「届だけでは変えられません。家庭裁判所の調停が要ります」と答えました。

離婚のときは、父母の話し合いで親権者を決め、離婚届に書けば足ります。ところが、一度決めた親権者を変えるのは、父母が合意していても、家庭裁判所の調停か審判でしかできません。民法819条6項は、子の利益のため必要があると認めるときに、家庭裁判所が親権者を変更できる、と定めています。変えるかどうかを決めるのは父母ではなく、子の利益を見る家庭裁判所です。

2026年4月の改正で、ここが二つ変わりました。一つは、申し立てられる人です。これまでは「子の親族」でしたが、改正後は「子又はその親族」になり、子ども自身も申し立てられるようになりました(実際に申し立てるのは、父か母がほとんどです)。もう一つは、変更の行き先です。改正前は、単独の親権者を「他の一方」に移すだけでしたが、改正後は共同親権も選べるので、単独から共同へ、共同から単独へ、という変更もあります。改正前に単独親権で離婚した父母も、共同親権への変更を申し立てられます。

家庭裁判所が何を見るかも、条文に書かれました(819条8項)。父母の話し合いで決めた親権者を変えるかどうかは、そのときの話し合いの経過と、その後の事情の変化などで判断します。話し合いの経過では、暴力などがなかったか、調停や裁判所の外の話し合いの手続き(ADR)を使ったか、取り決めを公正証書にしたか、といった事情も考えます。父母の一方が子や相手を傷つけるおそれがあるときなどは、共同親権にはできず、一方を親権者にします(819条7項)。

手続きの流れです。申し立てる先は、相手の住所地の家庭裁判所か、父母が合意で決めた家庭裁判所。費用は、子ども1人につき収入印紙1,200円と、連絡用の郵便切手(金額は裁判所ごとに違います)。出す書類は、申立書とその写し、申立人・相手・子の戸籍謄本(全部事項証明書)、事情説明書、進行に関する照会回答書です。調停で話がまとまれば成立、まとまらなければ審判に移り、裁判官が決めます。子が15歳以上なら、審判の前に子の意見(陳述)を聴くことが法律で決まっていて(家事事件手続法169条2項)、15歳未満でも、家庭裁判所調査官が子の気持ちを聞き取ることがあります。

親権者を変える手続きの流れ(父母が合意していても調停から)
親権者を変える手続きの流れ(父母が合意していても調停から)家庭裁判所に調停を申し立てる(子1人につき収入印紙1,200円と郵便切手)。調停では家庭裁判所調査官が子の気持ちを聞くことがある。まとまれば調停成立、まとまらなければ審判になり、子が15歳以上なら子の陳述を聴く。調停成立または審判確定から10日以内に、市区町村へ親権者変更の届を出す。家庭裁判所に調停を申し立てる家庭裁判所に調停を申し立てる 子1人につき収入印紙1,200円+郵便切手子1人につき収入印紙1,200円+郵便切手 調停(調査官が子の気持ちを聞くことも)調停(調査官が子の気持ちを聞くことも) まとまったまとまった まとまらないまとまらない 調停成立調停成立 審判(15歳以上は子の陳述)審判(15歳以上は子の陳述) 確定確定 10日以内に親権者変更の届10日以内に親権者変更の届

家庭裁判所に調停を申し立てる(子1人につき収入印紙1,200円と郵便切手)。調停では家庭裁判所調査官が子の気持ちを聞くことがある。まとまれば調停成立、まとまらなければ審判になり、子が15歳以上なら子の陳述を聴く。調停成立または審判確定から10日以内に、市区町村へ親権者変更の届を出す。

2026年4月からは、単独親権から共同親権へ、共同親権から単独親権へ、の変更も申し立てられます(民法819条6項、2026年10月時点)。

調停が成立したら、または審判が確定したら、10日以内に市区町村の役場へ親権者変更の届を出します(戸籍法79条・63条)。調停なら調停調書の謄本、審判なら審判書の謄本と確定証明書を付けます。ここで終わりではなく、子の暮らしに付いている手続きも、親権者や一緒に暮らす親に合わせて変えます。児童手当を受け取る人、健康保険の扶養、学校の書類、そして養育費です。

お金の話を、この家の数字で書きます。離婚のときの取り決めは、男性が元妻に養育費を月6万円。長男が男性と暮らすようになれば、払う側と受け取る側が逆になります。二人は調停の中で、元妻が男性に月4万円を払うことを決めました。赴任中は元妻の手取りが下がる見込みで、算定表に当てはめた目安の幅の中で話し合った金額です。養育費の取り決めは調停調書に書かれるので、払われないときは、それを使って強制執行の手続きができます。児童手当(中学生は第1子で月1万円。2026年10月時点)は、子と暮らす男性が受け取るように切り替えます。男性から見ると、年に72万円払っていたのが、年に60万円受け取る側に変わります。

親権者の変更で、父の年間のお金がどう変わるか(この家の例)
変更前(親権者は母)変更後(親権者は父)
養育費父が払う 年72万円(月6万円)父が受け取る 年48万円(月4万円)
児童手当(中学生・第1子)母が受け取る 年12万円父が受け取る 年12万円
父の年間の差し引きマイナス72万円プラス60万円

申立ての実費は、収入印紙1,200円と、戸籍謄本2通(男性の戸籍と、元妻と長男が入っている戸籍)で900円、合わせて2,100円に郵便切手でした。弁護士には頼まず、二人で申立書を書きました。

もう一つ、この家で迷ったのが「共同親権にするか」でした。元妻は「海外にいても、進学のことは一緒に決めたい」と言い、共同親権への変更も考えました。共同親権でも、毎日の世話や急ぐことは一方で決められますが、進学先や大きな手術のような大事なことは、二人で決めるのが原則です。時差のある国から、毎回すぐに返事ができるか。二人は話し合って、男性の単独親権にし、進学のような大事なことは元妻にも相談すると、調停の取り決めに書くことにしました。どちらがよいかは家によって違います。決め方の違いは共同親権の記事に書いています。

気をつけたいのは、申し立てたからといって、すぐに子の住む場所を変えてよいわけではないことです。この家は父母の合意があり、元妻の出国前に調停が成立するよう日程を組みました。合意がないまま子を連れて行くと、子の引渡しや監護者(子と暮らして世話をする人)を決める争いに発展することがあります。

よく聞かれることを三つ書きます。一つ目、子が15歳になれば自分で決められるか。15歳以上の子の意見は、審判の前に聴かなければならない大きな材料ですが、決めるのは家庭裁判所です。二つ目、単独の親権者が亡くなったら、もう一方の親が自動的に親権者になるか。なりません。家庭裁判所で、未成年後見人を選ぶか、親権者の変更を申し立てるか、という手続きが要ります。三つ目、変更の申立てが認められないことはあるか。あります。今の暮らしが落ち着いているのに、親の側の事情だけで子の住まいや学校を変えることになる場合は、子の利益にならないと判断されることがあります。だから申立書の事情説明書には、親の事情より先に、子の今の暮らしと、変えたあとの暮らしを具体的に書きます。この家では、長男の学校、通学の時間、父の勤務時間と、帰りが遅い日に祖母が来ることを書きました。

調停は2回で成立しました。期日の間に家庭裁判所調査官が長男と面談し、長男は「父と暮らして、母とはオンラインで話したい」と話したそうです。男性は成立した日に役場へ届を出し、その足で児童手当の窓口に回りました。「離婚のときより、手続きが多いですね」と男性は言いました。離婚のときは二人で決めればよかったことが、一度決めたあとは家庭裁判所を通す。その差は、子の暮らしを大人の都合だけで何度も動かさないための仕組みです。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-17

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-17 確認)。

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