土地・不動産 2026-09-07
地価公示と基準地価の違い ― 3月と9月に出る「土地の値段」をどう読むか
毎年3月に国が出す地価公示と、9月に都道府県が出す基準地価。調べる時点、地点、根拠になる法律が違います。二つの関係、ニュースの上昇率の読み方、自分の土地の近くの地点を探す方法を、宅建士の立場から整理します。
この記事の位置: [まず読む:値段と書類の読み方] → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利
9月の中旬、「地価が全国平均で1.5%上がった」というニュースを見た男性が、相談に来ました。「うちの土地も上がっていますよね。売り時ですか」。土地は地方の住宅地で、駅から徒歩25分。私は、その市の基準地価の地点を一緒に調べました。一番近い住宅地の地点は、前年比マイナス0.8%。全国平均は上がり、この土地の近くは下がっている。この記事は、「全国平均」と「自分の土地」の間にある距離の話です。
毎年3月の下旬と9月の中旬、「地価が上がった」「下がった」というニュースが流れます。3月のほうが「地価公示」、9月のほうが「基準地価(都道府県地価調査)」です。同じ土地の値段を表す指標が、半年ずらして年に二回出ている、と考えると分かりやすいです。
地価公示は、地価公示法に基づいて国土交通省の土地鑑定委員会が行います。毎年1月1日時点の価格を、全国に置かれた「標準地」ごとに、二人以上の不動産鑑定士が評価し、3月に公表します。標準地はおよそ二万六千地点(2026年9月時点)。都市計画区域内が中心です。目的は、一般の土地取引の指標になること、公共事業で土地を取得するときの補償額の基準になること、そして相続税路線価(公示価格のおよそ8割)や固定資産税評価額(およそ7割)の基準になることです。
基準地価は、国土利用計画法施行令に基づいて都道府県が行います。毎年7月1日時点の価格を「基準地」ごとに評価し、9月に公表します。基準地はおよそ二万一千地点(同時点)。地価公示と違って、都市計画区域外の林地や農地も対象に含みます。位置づけは地価公示の補完で、半年後の動きを追い、公示の対象外の地域も押さえる役割です。
| 地価公示 | 基準地価(都道府県地価調査) | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 地価公示法 | 国土利用計画法施行令 |
| 実施主体 | 国土交通省 土地鑑定委員会 | 都道府県 |
| 価格時点 | 毎年1月1日 | 毎年7月1日 |
| 公表 | 3月下旬 | 9月中旬 |
| 地点数 | およそ2万6千 | およそ2万1千 |
| 対象区域 | 主に都市計画区域内 | 都市計画区域外(林地など)も含む |
| 主な用途 | 取引の指標、公共事業の補償、路線価・固定資産税評価の基準 | 地価公示の補完(半年後の動向、対象外区域) |
この二つは制度としては別ですが、実務ではひとつながりの時系列として読みます。1月1日時点(公示)、7月1日時点(基準地価)、翌年1月1日時点(公示)と半年刻みで並べると、上昇や下落が加速しているのか、落ち着いてきたのかが見えます。同じ地点が公示と基準地価の両方に選ばれている「共通地点」もあり、そこでは半年ごとの変動率をそのまま比べられます。
ニュースの「全国平均で〇%上昇」は、そのまま自分の土地に当てはめないでください。平均は都市部の商業地に引っ張られます。住宅地か商業地か、三大都市圏か地方か、駅からの距離で、同じ年でも上昇と下落が混在します。見るべきは全国平均ではなく、自分の土地に近い地点の数字です。
近くの地点を探すには、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」(地価公示・地価調査の検索)で地図から探すのが早いです。選ぶときの目安は三つ。一つ、距離が近いこと。二つ、用途地域が同じこと(住宅地の土地を商業地の地点と比べない)。三つ、道路の状況が似ていること(幅員、接道の向き)。この三つが揃った地点の平米単価に、自分の土地の面積を掛けると、公示価格ベースの桁が出ます。
ただし、これは「あなたの土地の値段」ではありません。地価公示も基準地価も、その地点を「標準的な画地」として評価した数字で、形の悪さ、接道の不利、建物の有無、権利関係は反映していません。売却を考えるなら、ここから実勢価格へ読み替える工程が必要で、それには近隣の取引事例や不動産業者の査定が要ります。
その日に見た数字を書きます。男性の土地は約200平米。近い基準地の地点は三つあり、一つ目は900メートル離れた住宅地で平米単価6万2,000円、前年比マイナス0.8%。二つ目は1.5キロ先の駅前商業地で18万円、プラス2.1%。三つ目は2キロ先の住宅地で5万8,000円、マイナス1.2%。用途地域と道路の状況が似ているのは一つ目で、これを使うと、200平米で約1,240万円が公示価格ベースの桁です。二つ目の駅前の数字を使うと3,600万円になり、桁が違います。「全国平均で上がった」の中身は、この駅前のような地点が引き上げた数字で、男性の土地の近くは、二年続けて下がっていました。
半年刻みで並べる読み方も、その場でやりました。一つ目の地点が、地価公示にも選ばれている共通地点だったので、1月1日と7月1日の数字を二年分並べると、マイナス1.5%、マイナス1.2%、マイナス1.0%、マイナス0.9%、マイナス0.8%、と下げ幅が縮んでいる。下がっているが、下げ止まりに向かっている、という読みになります。男性は「売り時ではない、でも急いで売る理由もない」と整理して、二年後に、隣地の人に1,300万円で売りました。公示ベースの桁1,240万円に対して、隣地という買主だったので、少し上でした。
逆の例も一つ。別の相談で、都市部の住宅地の土地を持つ人が、「地価が下がったと聞いたので、売るのをやめた」と言っていました。調べると、全国平均は下がった年でしたが、その土地の近くの地点は三大都市圏の住宅地で、プラス3.4%。この人は、上がっている土地を、「下がった」というニュースで手放すのをやめていました。平均を自分の土地に当てはめない、と本文に書いたのは、上がっている土地でも下がっている土地でも、同じことです。
当サイトの「土地価格スキャン」は、地図上で囲んだ土地の面積に、近くの標準地(同じ用途区分で5km以内に2地点以上あるとき)の中央値、なければ市区町村内の地価公示の中央値を掛けて参考価格を出すツールです。地点を一つずつ選ぶ前に、まず桁を掴むための入口として使ってください。四つの地価の関係は、解説記事「土地の値段は四つある」にまとめています。
「うちも上がっていますよね」と聞いた男性の土地は、下がっていました。ただ、下げ幅は縮んでいて、二年後に、桁どおりの値段で売れました。この記事の表に二つの制度の違いを並べましたが、実務で使うのは、違いより「近い地点を三つの目安で選ぶ」ことです。距離、用途地域、道路。この三つで選んだ一地点の数字が、全国平均より、あなたの土地に近い数字です。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-06
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。